あ
(ネガをアプリで反転)
温泉に入って旅の疲れを癒す。贅沢な旅だ。
だけど、旅ではちょっとした不注意で怪我をすることがある。
とときどき注意力が散漫になるからだ。
また、雨に濡れた体が冷えたり、逆に体の熱がこもってしまったりと意志の力ではどうにもならないこともある。
そんな時は特に気をつけた方がいい。
怪我は楽しい旅を台無しにする。
その怪我がたった1本の指であってもだ。
北海道5日目
北海道5日目の朝、雨が降っている。台風は昨夜函館に上陸し、知床方面に去ったというのに。
9時10分にお世話になった東大雪荘を出発する。
新得までは昨日走ったダートの林道を引き返すことになる。ほかに道はない。
そうして走っていたら一台のオフロードバイクが前を走っている。昨夜宿ではバイクを見なかったがどこに停めていたのだろう。まさか今朝走って来て引き返しているなんてことはないだろう。
そんなことを考えていたら追いついてしまった。会釈をして追い抜く。ちょっと誇らしい気持ちになる。
それにしても今朝は寒い。震えながら走る。新得駅でしばらく休憩し、濡れたものを乾かす。すると雨が小降りになった。さあ、出掛けるかと思ってバイクを見るとチェーンの油が切れているようだ。そこでオイルを差すことにした。
ところが、左の指をタイヤとのすき間に挟んでしまった。「痛っ」。だが、ぐっとこらえて指を見る。すると次第に紫色に腫れ上がってきた。「やっちまった。走れるだろうか」。きっとバイク整備に慣れて慢心していたのだろうと振り返る。
痛みはなかなか引かなかったが、どうにかその先の狩勝峠まで走ることができた。ここで昼休憩とした。12時頃だったと思う。
痛みの引かない指をここで少し冷やす。逆に体は冷えて寒いので体の中から温めようとラーメンを食べる。違う店でコーヒーを飲みながらなおも冷やし続ける。
痛めたのは左のくすり指だ。動かすと痛いのでマッチ棒を添え木にしてバンドエイドで固定した。するとすこし痛みが和らいだ。左手のためクラッチレバーを握るのが辛いので、人差し指と中指の2本でクラッチ操作をする。
午後1時に狩勝峠を出発。20分で金山湖に着く。3時に日高町に入る。
3時50分、荷負というところを左折してダートを行く。このダートはスピードが出せた。あたりを見れば牧場が多い。
山道を抜けて行くと静内だ。海にでる。止んでいた雨がまた降り出した。
雨なのでテントを張りたくない。それに明日は帰る日なのでテントを乾かすことができない。そこで今夜はバイク仲間から聞いていたステーションホテルに挑戦して見ることにした。
新冠駅で
(ネガをアプリで反転)
ステーションホテルというとなんだかいいホテルに泊まるみたいだが、ようは鉄道の駅で寝てしまおうというわけだ。
いまはどこの駅も鍵をかけてしまっていることと思うが、当時の駅は夜中でも中にいることができた。
向かったのは静内の隣の駅、新冠駅だ。初めての経験で遠慮がちにベンチに座る。
様子を見て駅の軒先にガスコンロを持ち出して夕食を作る。食料は駅前のスーパーで買い出しをした。
そのとき、麦わら帽子を被った半袖姿の若い男性が話しかけて来たような気がした。年が読めない。格好を見ると10代のようだがもう少し歳はいっているように思える。
「ベンチで寝られる」
なんだかそう言っているようだ。けれど独り言のようにも聞こえる。何も答えずにいると彼はまたベンチに戻って行った。
電車がなくなると駅には人がいなくなった。麦わら帽の彼は、特に寝袋にくるまるわけでもなく薄着のまま座っていて横にもならない。
自分はベンチの上より床にマットを敷いた方がゆっくり眠れると思い、マットの上で寝袋にくるまった。
ここにはもう一人、歩き旅の人がいた。会話は交わさなかったが、彼はベンチの上で寝袋にくるまって寝ていた。こうしてこの小さな駅に3人の宿泊客が眠りについた。
この日の記録
8月23日(木)、この日の走行距離は267.3キロ。給油2回。
昼のラーメン450円、コーヒー300円。夕食等941円。夕食は結構金がかかっている。一体何を食べたのだろう。
トムラウシ温泉の東大雪荘を出発して新得駅でチェーンに注油。このときに左くすり指を負傷。そのさきの狩勝峠で休憩し、マッチ棒で添え木をしてなんとか走る。
荷負から左に折れて牧場の多いダートコースを走り、静内の海岸に出る。
雨が降り出したためテントを張らずに新冠駅に泊まる。
さて、とうとう明日は最終日。来た時と同じ苫小牧からフェリーに乗る。
*上のグーグルマップにうまく表示できなかったが、狩勝峠から南富良野町の金山湖に行き、そこからすぐに南下している。
今回のまとめ
(日高本線、ネガをアプリで反転)
この日の旅を振り返って思うのは、自分はすぐに調子に乗るタイプなのだなということ。
ダートなんて北海道へ来て初めて走ったのに、たった3日走っただけで、さも上手くなったように感じてしまうのだから困ったものだ。
バイクの整備も慎重にやらなければならないのに気取ってやったがために負傷した。
考えて見ればこのような失敗をこれまで何度も繰り返している。まったく豚もおだてりゃ木に登る人生を生きてきた。
他の人がおだててくれないならと、自分で自分をおだててきたのだから効率は良い。
こうしておだてているだけならよいのだが、残念ながらけなすこともたくさんやって来た。だからプラスマイナスゼロ。まあ、バランスが取れた人生だったかも?
では、このへんで(次回に続く)
過去の記事はこちらから。
バイク免許をとって旅に出よう 【北海道バイクツーリングの思い出1】 - Hakuto-日記
初めての北海道ツーリング 【北海道バイクツーリングの思い出2】 - Hakuto-日記
ダート走行に挑む 【北海道バイクツーリングの思い出3】 - Hakuto-日記
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