甲武信岳から降りてきたら、まだ10時半なのに腹ペコ。
幸い食堂が開いていたのでここで早い昼食。
元気が出たところで大菩薩嶺に向かう準備をする。
しかし、かなり疲れていたので次に向かうかどうかちょっと躊躇う。
それでも再び登りに来ることを考えるとここで少し頑張ればと思い、次の目的地に向かった。
頑張れスーパーカブ
道の駅みとみから大菩薩嶺に登るために上日川峠に向かう。
下り坂なので来た時のようにスピードが落ちることがない。
逆に前をいく車が安全運転のうえブレーキをよく使うのでとても走りにくい。
けれど微妙な速度のためなかなか追い越せない。
かなり下まで降りて来たときにスピードを緩めてくれたので、ようやく追い越すことができた。
ずっと行きに通った国道140号線を引き返し、隣の国道411号線(大菩薩ライン)に乗り換える。ここからはほぼ真っ直ぐな上り坂になる。
ツーリングをしているバイクにも多く出会うようになった。後ろからバイクが来ていないかを気にしながら走る。もちろんスーパーカブの走りがマイルドなためである。
しばらく安全速度で坂道を登っていく。なかなか快適な道だ。だんだん元気も出て来た。
「大菩薩の湯」のところがU字のカーブになっていてそれが2つ続く。少しして大菩薩峠の案内標識に従って右折すると峠に向かって葛折の道が始まる。
以前、といっても40年くらい前のことだが、大菩薩峠まで来たことがある。残念ながら写真などの記録が見つからないので百名山の登頂記録には入れていないのだけれど、記憶の方も曖昧なのである。
覚えているのは、あの時もバイク(ヤマハXT250Tというオフロードバイク)で来たこと、どこかお寺の駐車場に停めたこと、曇りの天気で景色が見れなかったことくらいなのである。
ふたたび来てみたら何か思い出すと思ったけれど、逆に今走っている峠道は走っていないことを確信したくらいなのだ。
つまり、あのときは下のお寺(おそらく雲峰寺だろう)にバイクを停めて、下から登ったのだと思われる。
たしかに大菩薩峠には登ったはず。けれど大菩薩嶺にまで脚を伸ばしたのだろうか。そこがはっきりしない。
そんなことを考えながら葛折を登っていく。ただ、登ると言ってもヨタヨタ状態で、カーブを曲がり加速しなくてはならないときにほぼ加速できていない。「がんばれ、がんばれ」そう心の中で声を掛ける。
スーパーカブのすごいところはそれでも負けずに登っていくことと、決してエンストしないことだ。
この、エンストしないというのはなんとも心強い。通常のバイクは、クラッチ操作を誤るとすぐエンストしてしまう。カーブの途中でエンストしてしまったら悲惨だ。ただ、トルクがあればギアチェンジをすることがないかもしれない。
そうやってヨタヨタと登っているのになぜか先行の車に追いついた。理由は簡単、道が狭くてすれ違えないためだ。しばらく車の後をついて走る。
だいぶ上がって来たとき、左手のスペースに観光バスが停まっていた。すこし小型ではあったが、こんな狭い道を走ってくるなんて信じられない。なお、このバスは登山ツアー客が降りてくるのを待っていたことが後でわかる。
そして斜度がゆるくなってきたところで目的地の上日川峠駐車場に到着した。
大菩薩峠
2022年10月23日の秋の日の午後、今日も日が暮れる前に下山するために時間との戦いである。
午後12時半、バイクを駐車場の隅っこの邪魔にならない場所に停めて、急いで登山支度を整える。駐車場の道を挟んだ反対側にはロッジ長兵衛というなんともモダンでレトロな名前とそこそこ綺麗な山小屋があった。小屋の前のテーブルは登山客で一杯である。
山小屋のすぐ向こう側が登山口だった。この時間、下山する人の波がつぎつぎと押し寄せてくる。川の流れに逆らうように登り始める。
舗装された林道と並行して登山道がつけられており、どちらからも人が流れてくる。登山道を歩きはじめたが、すぐにすれ違いやすい舗装道に移って登っていった。
この並行する道は福ちゃん荘で一つになる。というか、そこから舗装されていない林道だけになる。
下山してくるのはほとんどが家族連れで、小さな子どもを連れたハイキングといった感じだった。それでも多くの人が挨拶をしてくれた。
そうやってたくさんの人に挨拶しながら砂利道の林道を登っていくと、やがて大菩薩峠についた。
ここには山荘があり、トイレも売店もある。山荘と売店の間を抜けるとそこに大菩薩峠と書かれた大きな柱が立っている。
峠は広場のようになっていて、そこに岩が埋まって凸凹している。
今日は本当にいい天気だ。秋の日差しが降り注ぎ、遠く西は南アルプス、東は奥多摩の山並みが見渡せた。
小高い丘を一山越えてると賽の河原。そこからはなだらかな尾根を大菩薩嶺に向かって進んでいく。
西の斜面は草が秋色に染まり、西日でさらに色を増していた。西側の下には大菩薩湖が見え、よく見ると雲の上に富士の高嶺がのぞいていた。
大菩薩嶺に向かって稜線を進む
このルートは本当に眺めが良くて気持ちがいい。
途中、ツアーの団体とすれ違う。ぼくも日本百名山に挑戦しようと思った頃は、不安があってツアーに参加することも考えたが、自由に写真を撮るために立ち止まったり、自分のペースで歩けないことがいやで単独登山を行っている。まあ、若い頃もほとんどが単独行ではあったのだけれど。
大菩薩峠から雷岩という大菩薩嶺と上日川峠との分岐まではずっと岩場だが、広い稜線上なので快適だ。しかし、もし霧が深かったときは道を見失いそうに思えた。
雷岩には特に標識が見当たらなかったが、それとわかるような形をしている。それはちょうど良い展望台になっている。
ここから大菩薩嶺に向かっていくと樹林帯の中に入って景色は見られなくなる。10分弱で山頂に到達するが、ここからの景色も望めない。
唐松尾根
分岐から下山を始めるとわりと急な坂である。ゴロゴロした岩場地帯を抜けると笹が群生している。唐松尾根というのだが、笹ばかりでカラマツは見当たらない。笹ばかりだと大きな木が生えてくる余地がない。どうしてこんな名前が付いたのだろうと思いながら下っていると、傾斜がだんだん緩やかになりカラマツが左右に現れ始めた。
後半は傾斜もゆるく歩きやすい登山道で、それがますます平らになって来た頃に福ちゃん荘に到着。こんどは登山道を下っていく。すぐ脇には舗装路が見え隠れするがやはり林道よりも登山道の方が気持ちが良い。
15時50分、日暮れ前にロッジ長兵衛に到着。あれだけ混んでいた店の前のテーブルには誰もいない。腹が減ったのでおでんを注文してテーブルで一休みし、帰り支度をする。
最後に
一泊二日で百名山を2座。ちょっと欲張ったせいでかなり疲れた。
けれど、2座目はあまり危険なところがない山を選んだのは正解だった。
計画を立てるときは休憩時間を入れて余裕を持たせているので、時間を短縮したいときは休憩時間を短くする。
急足にすると体に無理がかかり、故障の原因となるためだ。
高齢者の登山はこうしたやり方で登るのがよいのではないかと思う。とくに筋力のない人におすすめできる登り方である。
できるだけ筋力に頼らずに体重と骨を利用するようにするとなんとか体力を持たせることができる。
このあとスーパーカブで夜の道を走って帰ったが、できるだけ夜は走りたくない。単なる移動では面白くないからだ。
それにしても秋を満喫した今回の登山であった。
では、このへんで
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