Hakuto-日記

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標高差1400メートルを登り下り 【甲武信岳】その2

甲武信岳

槍ヶ岳のときの槍沢も長かったが、こちらも長い登りだ。

急坂になったりなだらかな登りになったり緩急をつけながら道が続く。

そして広葉樹主体の森から針葉樹主体の森に変わり、さまざまな姿を見せてくれる。

この奥深い秩父の森の中、甲武信岳はまだその姿をあらわさない。

そうやって焦らしに焦らしてやがてひょいとその姿を見せた。

 

challe.info

 

木賊山

コメツガの森の中は道幅が広くなっていろんな踏み跡がある。さて、どこを通ろうか、一番楽そうなルートを目で確認して登っていく。

 

ここでも可愛い絵の描かれた標識が道案内をしてくれる。緩急をつけながら登り続けていくと、2000メートルを超えたあたりだろうか、突然大きな岩が積み重なっている場所に出た。

 

そこまで行ってみると、西側から南側が一望できる。南には富士山がひときわ高く優美な姿を見せてくれていた。手前右手には黒金山が三角に尖り、左手下には今朝登山を開始した道の駅のある広瀬湖が見えている。

 

 

しばしこの景色を堪能した後ふたたび森に入っていく。

 

ここからまた急登になってぐんぐんと高度を稼ぐ。そのうちになだらかな道になり、しばらく行くと木賊山(とくさやま)と破風山とを結ぶ登山道に突き当たる。

 

ここで先行する人が休憩していた。

 

「こんにちは」と挨拶をして、タイムを記録するために分岐の案内標識の写真を撮り、地図を取り出して位置を確認する。

 

するとこちらの30Lのザックを見て「小屋泊まりですか」と声をかけられた。

「テント泊です」と答え、こちらもその方の大きなザックを目で追って「そちらもですか」と問う。

 

「ええ、なんだかんだ持っていこうとすると大きくなってしまって」そして「一人用のテントですか」と訊かれたので

 

「ええ、一人用で十分なんですよ。重さも1キロくらいなので。わたしは重たい荷物はだめで」と答えた。

 

それから「もうすぐですか」と訊かれたので、地図を見せながら「いまここなので、もうあとちょっとです」と言った。

 

そこから木賊山への道はなだらかで、ピークも標識がなければ通り過ぎてしまいそうな山だった。山頂には40代くらいの女性3人が姦しくおしゃべりをしていたので写真だけ撮って通り過ぎた。

 

木賊山からは下り坂になる。この甲武信側の斜面は反対側に比べてかなり急である。そこにちょうど荒れてボロボロになったコンクリートのような斜面が現れた。視線を上げると目の前に三角の甲武信岳が空に突き出していた。向こうのなだらかな山は三宝山だろう。

 

甲武信岳が見えた

 

木賊山を振り返る

 

ここを慎重に下るが思ったより滑らないので助かった。

 

すると地図にはないが、道が二つに分かれている。一方はなだらかな登り、もう一方はなだらかな下り。特に標識はない。

 

ここは楽そうな方を選ぶ。翌日わかったのだが、どちらも甲武信小屋に通じる道で、ここで選んだのは巻道であった。

 

目の前に小屋が見えて来た。近づいていくと小屋の下のテント場が見えた。

 

甲武信小屋に着いた

 

 

テントを設営後甲武信岳へ

 

14時44分。甲武信小屋の前に立つ。テントの受付をしようと、中に入ると先客が受付をしていた。

 

<今日は混んでいるのでテントを張る場所をこちらで指定させていただきます>という説明が聞こえた。<それでは張る場所をご案内します>と言って立ち上がる。

 

そのときこちらに向かって「ご予約の方ですか」「ではそこに座って少しお待ちください」そう言って小屋の人が先導してテント客と一緒に出て行った。開いたドアから見ていると、テラスの上からテントを張る場所を指示している。

 

テラスは宿泊客だけが使用できるとの説明があとからあったが、この時テーブルはいっぱいで、大勢で酒盛りしていた。

 

宿泊者カードのようなものに記入して先行者と同じ説明を受け、宿泊代1000円を支払う。それから指定された場所にテントを急いで張る。15時20分、防寒着と非常食、そして水を持って甲武信岳に向かって歩き始めた。

 

少し登ってから、トイレの先にあった十文字峠と書かれた方へ行く道はたしか甲武信岳の巻道で、向こう側からも登ることができたことを思い出した。そこで一旦下って巻道の方から登ることにした。

 

巻道に入るには鹿避けだろうか、網の扉が設置されている。その扉を開けて向こう側へ行く。するとそこはほぼ平坦な道がまっすぐ伸びていた。こっちの道を通ることを想定しておらず、どのくらいのタイムなのかがわからない。おそらくさっきの直接登る道を行った場合とそれほど変わらないだろうと予測する。しかし、それでもやっぱり急足になる。

 

そうしたら8分ほどであっという間に甲武信岳と三宝山を結ぶ稜線に出てしまった。

 

そこの標識に三宝山まで30分と書いてある。ここで、ちょっと考える。予定にはないが、三宝山まで行ってこようか。現在15時35分、大丈夫、明るいうちに戻って来られる。

 

三宝山までの道はなだらかなところが多く、そういった場所では少し早歩きをしたところ、20分で三宝山に到着。記念写真を撮るが、残念ながら木々に囲まれて眺望が効かなかった。

 

戻る時は周りを眺める余裕ができた。すると森の木が間引きされていて、こんなところにまでちゃんと手が入れられているのだなあと感心した。

 

ふたたび巻道の終わりの分岐地点に戻ってくるのもやはり20分だった。

 

そして、いよいよ甲武信岳の山頂を目指す。ここからは急な斜面のガレ場でジグザクに道がつけられていた。すでにかなり疲れていたのでゆっくりゆっくり足を前に出していく。標識では文字がはっきりと読めなかったが、7分で山頂に到着した。標識の文字が5分だとするとだいぶゆっくりだ。

 

山頂直下の道

 

甲武信岳山頂。周りには誰もいない。ちょっと風があって肌寒かった。そして夕暮れ時の赤みを帯びた太陽がもうじき山の向こうに沈見始めることだった。空はなんとも言えず美しく、とても静かな時間が流れていく。少しだけ虹のようなものも見える。

太陽の沈む方向を眺め、AR山ナビで調べても山が多すぎてどれがどの山なのかがはっきりしない。しかし、右手には八ヶ岳、左手には南アルプスが見えている。

南に目をやると、ぎりぎり森に隠れる前に富士山が優美な姿を見せてくれていた。

そして登って来た北側には先ほど登ったどっしりとした三宝山がゆるやかな曲線を描いていた。山頂でゆっくり周りの山々を眺め、記念写真も撮って一人だけの山頂を満喫した。

八ヶ岳から南アルプスまでが

 

風が出て来た

 

富士の美しい姿

 

三宝山

山頂には12、3分ほどいて、テント場を目指して反対側に降り始めると岩稜地帯を慎重に進むと、その向こうに美しい富士山が再び姿をあらわした。手前の黒金山も富士山と同じような形をしている。ちょうど、こちら側から黒金山に光を当て、向こうのスクリーンに山の影が写っているようにも見えた。

 

ふたたび富士

こちら側の下りも急斜面で気をつけながら下る。すると下からひとりで登ってくる女の人がいた。まったくの空身だ。夕日を見に来たのだろう。そしてもう一人、ほぼ下ったところで若い男性とすれ違った。

 

 

テント場

テント場に着くと、テントに荷物を下ろしてダウンを着る。それから小屋に向かった。

 

目的は受け時に見た「地酒一杯500円」という一升瓶に貼られた紙の文字に釣られてのこと。テント場のテーブルではすでに夕食を作りながら食べている人たちがいた。

 

地酒を注文すると、100均で売っているアルミのシェラカップに一杯いれてくれた。なんと一合以上もある。それをこぼさないようにぼくのテント横まで運ぶ。隣のテントの向こう側に小さなテーブルがあり、そこで非常食のナッツをつまみに一杯やった。

 

じつに至福のひととき。

 

夕食は残っていたおにぎりを水を入れた鍋に入れた。玄米、塩昆布、海苔の入った雑炊だ。かなり冷えて来たので寝る準備。トイレに行き歯を磨いて7時頃シュラフに潜り込む。

 

しかし、なんとなく寒い。ダウンは膝にかけている。がたがた震えるほどではないのだがどうも眠れない。数時間我慢したがやはり眠れないので、枕にしていた着替え等を入れた袋の中からパーカーを取り出して体にかけたら寒くなくなった。やがてすうーっと眠っていた。

 

翌朝は4時半に起床。十穀米のおかゆで朝食を済ます。それから急いでテントを片付ける。まずはテント内を片付けて表に出てみたら、お隣はすでに撤収済みだった。

 

 

下山開始

6時50分、小屋を後にする。木賊山へは昨日とは違う道を通っていく。

霜が降りていて寒さを実感する。ダウンは着ていないが、下はライトシェルパンツを履いて出発した。

 

木賊山で振り返り、甲武信岳に別れを告げる。

 

朝の甲武信岳

破風山の分岐からしばらく行って樹林帯になるとピンクのテープをたよりに下る。下りでは特にこのテープがありがたい。

 

近丸新道と徳ちゃん新道との合流点には8時半少し前に着いた。ここでライトシェルパンツを脱ぐ。

 

合流地点

 

コースタイムを見ると1時間20分のところを20分も余計にかかっていた。この前下りでの体の使い方がわかったと思ったが、速度は早くはならないようだ。

 

ここからは徳ちゃん新道を下る。始めは急坂を一気に下る。その後はなだらかな道が続き、再び急斜面を下ると西沢渓谷に至ると地図では読める。

 

急な岩場では前につんのめるのが一番怖い。だから、慎重にゆっくりと下った。

 

その後なだらかな尾根道がしばらく続くのは地図の通りだが、思った以上に広い場所があったりする。

 

大学生らしき団体とすれ違う。登り優先で道を開けると、爽やかな挨拶が帰って来た。正確な人数はわからないがおそらく8人くらいのパーティで女性は3人。みな元気に登っていく。

 

しばらくして5人のパーティとすれ違う。やはり大学生か。このパーティは女性3人に男性2人。

 

それをみて、あの男子らは楽しくて仕方がないだろうな、などと考えてしまった。そういえばあの女子たちは3人ともかわいかったな、もし自分があの大学生ならもう喜び勇んで参加しただろうな。しかし、女性がひとりあぶれちゃうな、などと余計なことを考えながら下って行った。

 

だいぶ下ってくると紅葉したもみじの中に入る。どんぐりもたくさん落ちている。栗もある。

 

秋真っ盛り

 

カラマツ林

 

見上げると大きな栗の木

もう少し下ると今度はカラマツの林になった。早くも落葉している。

 

尾根道が左に折れるとそこからは急坂となり、下り切ると休業中の西沢荘の前に出る。

そこから道の駅に向かって少し歩くと例の外国人に道を尋ねられた近丸新道登山口になった。

 

 

最後に

道の駅駐車場には10時半到着。合流地点から2時間20分のところを2時間で歩いたことになる。

 

結局トータルではコースタイム通りとなった。おそらく急斜面の下りは相当遅く、平坦な道では少し早く歩くのだろう。

 

道の駅では早めの昼食。何しろ腹が減った。ついでに地元のさつまいもとチンゲン菜を買って次の目的地、大菩薩に向かった。

 

それにしても標高差1400メートルもある甲武信岳登山、さすがに疲れた。

 

では、このへんで

 

 

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