この春は体調が芳しくなく、
さらに夏はコロナに感染した。
そのためまだ今年は百名山を3座しか登れていない。
新年の絵馬に「たくさん山にのぼるぞ!」と書いた。
残りの人生を考えるとちょっと焦る。
せめてこれから雪が降る前に登れる山を登っておきたい。
そこで10月最後の週末に、群馬県の四阿山を登ることにした。
菅平高原ファミリーオートキャンプ場
四阿山に登る一般的なルートは、菅平牧場からスタートしゴールするものだ。
そこで、牧場に近いキャンプ場を利用して登ることにした。
10月28日土曜日、朝7時50分に自宅を出発する。11時20分、「ミルトン」という寄居町のレストランで昼食。チキンのガーリックソルト焼きでエネルギーを補給した。そこからGoogle マップをみると、目的地の菅平高原ファミリーオートキャンプ場まではあと134キロ3時間23分となっていた。
それが曲がるところを見逃したらしく、予定していたコースと違う道を進んでいることにだいぶたってから気がついた。国道254号線で北上し、県道131号を経由して国道17号、そこから18号に入り損ねて、県道29号へと進んでいた。Googleマップは、間違えてもどんどんその先のコースを案内してくれるのだ。
帰りに国道18号の予定していたルートを通ったが、スーパーカブではあの長い登り(碓氷峠のこと)ではスピードが出ないので、かえって間違えてよかったなあと思った。
その間違ったルート上で「道の駅くらぶちおぐりの里」というところに立ち寄った。道は29号からいつの間にか国道406号に変わっていた。この道の駅で、ここが小栗上野介の生地であることを知った。
売店に行って夕食と朝食用に山菜おこわと味噌パン、あんぱんを買う。これでコンビニを気にしないで先へ進める。バイクのところへ戻ると雨が降ったらしくシートがぽつぽつと濡れていた。
さらに先へ進んで406号から県道377号線に入り、長いトンネルを抜けて左折すると、紅葉の綺麗な橋の袂にでた。思わずバイクを停めて歩いて景色を見に行く。そこは不動大橋と書かれていて、橋の袂から不動の滝という落差の大きい滝が紅葉の間を落ちていく様子が眺められた。橋の反対側には以前民主党が大騒ぎをした八ッ場ダムが小さく見えた(冒頭の写真)。
午後4時半、菅平高原ファミリーオートキャンプ場に到着。予約したフリーサイトはなだらかな芝生の斜面だった。斜面でどうやって寝ようか。考えた末、斜面に対して横になるようにテント張った。これなら頭と足の高さは変わらない。
テントを張り終え、水を汲んできてフリーズドライの味噌汁を作るためにお湯を沸かす。その間に山菜おこわを食べる。そして7時には寝袋に入った。
ところがやはりファミリーキャンプ場、話し声が聞こえてくる。仕方なく、毎日配信される参政党の音声メルマガを聞いているうちに少しうとうとする。
話し声はまだ続いていた。耳栓を取り出して装着する。ただし、耳栓をしても音が聞こえなくなるわけではない。少し小さくなるだけだ。あくまで気休めである。
なかなか寝付けない。昨夜は睡眠時間が少なくて眠いはずなのに、なかなか眠れない。それでも耳栓をつけたら少し眠れた。ふたたび眼が覚めるとまだ話し声がしている。スマホを見ると22時30分を過ぎていた。
こんな時間まで話をしているなんて。
話はさらに盛り上がって笑い声まで聞こえてくる。何度か咳払いを試みたが気づいてもらえない。おそらく、あれだけ盛り上がっている様子では気づいてもらえないだろう。
そこで仕方なく「すみません。お静かに願います」と声をかけてやっと静かになった。
次に目が覚めたのは午前3時ごろである。起きるにはまだ早い。少し寝袋の中で静かにしていた。午前4時になって寝袋から這い出す。まずはトイレに行き、ともかくお湯を沸かす。その間に道の駅で買って来た味噌パンを食べ始める。続いてあんぱん。お湯が沸き味噌汁を作る。
うまい! あんぱんがうまい。150円の大きなあんぱん。餡がたっぷり入っている。この餡が絶妙。甘さが抑えられており、ちょっと塩味を感じる。また食べたいと思うくらい気に入った。
さて、寝袋などを片付け。次に昼食用のお湯を沸かす。そうして荷物を片付けていたらいつの間にか5時40分になっていた。6時には出発しようと思っていたのに遅れそうだ。急いでテントを撤収する。降っていた雨はいつの間にか止んでいた。
雪の根子岳にて
6時10分にテントの撤収が終わり、バイクの停めてあるところまで歩いて持っていく。バイクの荷台に荷物をくくりつけ終わると6時20分になっていた。
キャンプ場から菅平牧場までは地図を見て一応記憶していていたつもりだったが、途中でわからなくなり、Google マップに助けられて6時40分に菅平牧場駐車場に到着する。
また雨が降り出してかなり冷え込んでいる。トイレに寄って靴ひもをしっかりと締める。
6時50分、根子岳へ向けて出発する。そういえばクマに注意しなければと思いつつ熊鈴を忘れてきてしまった。周りに誰もいないので、鈴の代わりにスマホで寺尾紗穂の歌を聴きながら登る。
少し登ったところに東屋があり、ここで中に来ていたダウンジャケットを脱ぐ。雨は横殴りで東家の中にも吹き込んできた。それはなんとみぞれに変わっていた。
レインウェアのフードを被って歩き出す。少し進むとシラカンバとダケカンバの林に入っていく。笹の葉はだんだん白くなっている。みぞれは雪に変わっていた。
さらに高度を上げていくと、高い樹木が消えて森林限界になる。
まっすぐにつけられた真っ白な道をすべらないように、慎重に下を見ながら歩いていくと、そこに車のキーが落ちていた。大変だ。これは困るだろう。
今歩いている道には、おそらく少し前に歩いたと思われる靴跡がついていた。その主が落としたのではないだろうか。靴のサイズからすると小柄な男性だ。
根子岳山頂へ着くと、そこに小柄な男性がいるのを見つけた。
「こんにちは、車でおいでですか」
「ええ、そうです。車のキーを無くしてしまって戻ってきたところなんです」
「車はダイハツですか」
「ええ、ダイハツの軽です」
「さっきそこで車のキーを拾いました。これじゃないですか」
そう言ってキーを差し出す。
「四阿山に向かう途中でキーをなくしているのに気がついて、探しながらここまで戻ってきたところです。もう諦めて下山しようと思っていたのです。いやー、大変助かりました」
そう言ってその方は財布から千円札を取り出してぼくに渡してきた。そんなつもりで拾ったのではないので「結構です」と何度も断った。しかし、それでもどうしても手を引っ込めないのでありがたく頂戴することにした。
その方は50代くらいの地元の方で、近くの低い山には登っているが、本格的に登り始めたのは最近なのだそうだ。あまり地元の山には登っていないということで、四阿山に登るのは今回で3回目ということだった。
「雪になっちゃいましたね」と言うと、「上田市内は晴れていたのですよ。それがこんなになるとは思いませんでした」ということだった。
「まだ時間が早いので、諦めずに四阿山まで行ってこられたらいかがですか」
と言うと、しばらく考えてから「そうですね」と言ってまた戻っていった。
ぼくは山頂で写真を撮ったりしてから四阿山へ向かった。
四阿山直下の登りは息が切れた
根子岳から少し下ると痩せた尾根に大きな岩がどっかと腰を据えていた。岩を巻いていくが、足を滑らせたら崖の下だ。注意しながら進む。こうした痩せた尾根はすぐに終わり、こんどはなだらかな斜面の横腹を横切るようになっていく。
右側のそうしたなだらかな道をいくと笹が道を覆っていて薮こぎを強いられる。
その先から急登がはじまる。雪の急坂を慎重に登っていく。さっき向こう側から来る人と3人ほどすれ違った。みなここを下って来たのだろう。この坂を下るのは大変だったろう。登りでよかったと思ったのだが、この急な登りがしばらく続き、息が切れて何度も立ち止まって休んだ。
地図を見れば、急坂からなだらかな道になり、そして中四阿につづく道との分岐に出るようになっている。時間的に見てももうすぐのはずだ。そう思っていると、やはり急坂は終わり、平原のような道に変わった。
なだらかになって足取り軽く進んでいくと広い場所に出た。その中心に案内板が立っている。ここが分岐のはずだが分岐の文字は見つからなかった。
その案内標識には四阿山と根子岳の文字だけしか書かれていないようだった。地図によればここが分岐のはずだが、そのまま四阿山へ向かう。
そこから続く平らな道を笹を掻き分けるようにして進んでいくと、再び道が開けてそこに階段がつけられていた。植生を守るための階段である。そこに積もった雪の柔らかな感触を楽しみながら上っていくと、山の上にしては立派な祠が建てられていた。ここが四阿山山頂? しかし、どこにも標識がない。さらに、先へ進んでみる。
するとそこに根子岳で出会った男性がいて、近くに四阿山の標柱が立っていた。男性はちょうど出発するところだったため、お互いに「気をつけて」と挨拶をして別れた。
こうして10時30分四阿山に登頂。山頂で記念写真を撮り、昼食にする。その間に登って来た登山者は3組だった。
11時少し過ぎに下山を開始する。
さっきの階段の下から鳥居峠向かう道が分かれている。念のため地図を見る。やはりここではない。さっきの開けた場所から行けるはずだと思って歩いていく。やはりいくら探しても案内標識には分岐については何も書かれていなかったが、足跡が左側に伸びているので間違いない。
こちら側の道は根子岳からの道よりも雪が少ない。その分多少歩きやすかった。ここを下っていると、わりとたくさんの登山者と出会うことになった。
登山道としてはこちらのコースの方が歩きやすい。途中に転がっている、割れてできたような岩がごろごろしていて、それはちょっと歩きづらかった。
最後に
再び菅平牧場の登山口に戻って来たのは午後1時10分。
30分後、駐車場を後にする。
牧場入口の料金所で登山協力金200円を支払う。管理人が言っていた。
「寒かったでしょ。いつも10月20日頃になると雪が降ってそれが根雪になるんだよ」
寒いといえば、バイクで長時間走るとだんだんと冷えてくる。埼玉県に入ったところで疲れて眠くもなって来た。
道の駅のようなところの休憩所でうとうとする。
するとそこへ30代くらいの男性が入って来て、
「そこで暴漢に女性が襲われたので助けてください」
そばにいた女性が「警察を呼ばなきゃ」
するとすでに警察は呼んでいて、連れの男性がその暴漢を取り押さえていた。
それがぼくのスーパーカブのすぐとなり。
警察がやって来て、良いと言うまで動けなかった。
しかしそのおかげで眠気は覚めた。
では、このへんで
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