Hakuto-日記

定年後を楽しく、生きたい人生を生きる!

道東三山、二日目。涼しい、沢登り 【斜里岳】

北海道の登山二日目は知床半島の付け根にある斜里岳。

自転車日本一周の時、この斜里岳を目指して自転車を漕いだ記憶が残っている。

あの日、走行距離は100キロを超えた。夕方、ようやくキャンプ場に到着し、翌朝は頑張って標高487メートルの根北峠を越え、標津町に抜けた。

その間、斜里岳はずっとぼくを見守ってくれていた。

その斜里岳に登る。感慨深い。

challe.info

 

知床から斜里へ

登山口の宿でくつろぐ

道の駅うとろ・シリエトクから斜里登山道入口にある清岳荘までは1時間ちょっとで着く。清岳荘は清里町が運営している山小屋だ。山小屋といってもとても綺麗な建物である。

 

途中、斜里の街で1軒だけコンビニを見かけたが、右側にあったため寄らずに来た。食料は持っていたので足りないのはアルコール。その後だんだん家が少なくなっていき、アルコールを仕入れるのは絶望的だった。失敗したな、と思いつつ車を走らせる。しかし、ひょっとして宿にビールくらいは置いてあるのではないかという淡い期待もあった。

 

道は舗装路から砂利道に変わる。砂埃がすごい。すると向こうからスピードを出した車が次から次へとやって来る。砂埃の煙幕ができた。中にはカーブを大きく回ってくる車もあった。それを予想してこちらはスピードを落とす。

 

こうしてどんどんと山の中に入っていくのだが、道幅は依然と広い。とうとう最後まで道幅は狭くならなかった。これが四国だったらすれ違うのが大変である。

 

そして登山口の駐車場手前の道路脇にはまだ沢山の車が路上駐車していた。今日は山開きだったのである。宿の管理人の話では、200人近くが登ったのではないかということだった。

 

宿に到着したのは午後4時頃。駐車場に車を停めて外に出てみると、黒い塗装に茶色の模様ができていて違う車のように見えた。

 

受付にいくと、男性と女性の二人の管理人が親切に対応してくれた。とても感じがよかった。玄関で受付をしながらめざとく冷蔵ケースを見つけた。中にはサッポロクラシックが入っていた。思わずにんまりする。

 

2階に荷物を上げ、寝床を作ると早速階下に降りてビールを買った。嬉しいことに料金なんと250円。安い。ビールを持って2階にあがり、窓からベランダにでた。そこからは斜里の街が見下ろせ、その先はオホーツクの海が見える。ベランダのテーブルでビールを飲む。そこは山小屋というよりもリゾートホテルにいる気分であった。

 

 

北海道仕様のクッカーセット

前回も少し触れたが、航空機の機内に燃料が持ち込めないため、今回の旅では100均の固形燃料を使うことにした。それは、女満別空港から知床に向かう途中の網走にダイソーがあることが分かったからだ。

 

家で事前に試した所、アルミケースに入れて蓋をすれば3回くらいはお湯が沸かせることがわかった。2回目以降は燃えかすにより着火しずらくなるため、ライターの底で少し燃料を押し込んでやるとすぐに着火する。

 

アルミケースはダイソーのアルコールストーブを使用。火消し蓋はプルトップの缶詰のふた。これが固形燃料の大きさにちょうど良い。

 

これに合わせてセリアの五徳をつかうと高さがちょうど良い。ただ、セリアのは少し思い。このため、これを真似て自作した。前回バーベキューの串と書いたが、じつは魚焼きの串でこれをペンチで曲げ、針金を巻いて繋げた。

北海道仕様のクッカーセット

固形燃料は3個入りで、3日間の登山でちょうど良く使い切った。

 

 

斜里岳は沢登り

早朝の雨が止む

明日はあいにくの雨、風も強まるとの予報がでている。さて、登頂できるか。だが予報は刻々と変化し、朝方から昼頃まで曇りの予報に変わる。

 

翌朝4時頃目が覚めると激しい雨の音。昨日の羅臼岳の疲れもあって再び眠りの中に。

 

1時間後モゾモゾと起き出す。窓から外を見ると雨は止んでいた。すぐに出発の準備に取り掛かる。6時、宿のレンタルヘルメットを借りて外に出る。ちょうどそこに昨日羅臼岳を一緒に下った若者がやってきた。いいタイミングだ。車に不要なものを残し、6時半、二人で登山を開始する。車を運転してきた連れの人は足に怪我をしたというので、ここから引き返していった。

 

若者に先に行っても良いと声を掛けたが、二人連れの方が心強いということでぼくの後ろをついてきた。じつはぼくも心強い。

登山道入口

宿のすぐ横が登山道入口で、森の中を少し歩くと林道に出る。その林道を少し歩いていくとその先から登山道になる。そこが昔の登山口だったようだ。そこから下二俣に着くまでにすでに何度も渡渉することになる。幸い水嵩はそれほど増しているようには見えなかった。

林道 青空ものぞく

気を引き締めて沢に入る

今回は沢登りを考えてジョギングシューズタイプのスニーカーを持ってきた。これで沢の中をズブズブと歩いて渡るつもりである。ただし、最近あまり履いていなかったのでソール剥がれのおそれがある。自宅でチェックしてみると僅かに右足の方に小さな亀裂が見つかった。手で引っ張ったがそれ以上は裂けてこなかったので大丈夫だろう。

 

後ろの青年はミドルカットシューズ。岩の上を器用に渡っている。

 

もうすでに完全な沢登りである。20代で経験した丹沢登山訓練所(すでに閉鎖されている)での沢登り講習を思い出し、そのときの様子を歩きながら後ろに向かって話した。

傘になりそうな蕗

下二股

7時15分、下二股に着くとそこには注連(しめ)縄が張られていた。ここからは神聖な領域となる。さらに気を引き締めて沢(一の沢川)を遡上していく。

 

この沢を遡上していくルートが旧道と呼ばれるもので、沢を避ける新道ルートがこの下二股で分岐している。

 

ちなみに国土地理院の地図には下二股の少し上までしか沢を示す水色の線は描かれていない。実際は上二股まで続いていて、その少し上あたりが源流となっている。

 

沢から少し離れていく急な登山道は高巻きという滝を避ける道であることが多い。そこを通過して下を覗き込むとやはり滝があった。次に現れた滝は滑滝で滝の隅を登っていく。まるで昔登ったカムイワッカの滝のようだと思った。間近でみる滝は迫力があって見事だった。

万丈の滝

滝を真横から


この辺りから山頂にかけて高山植物の花々が咲き乱れていた。

オオカサモチ?

チシマフウロ

チシマノキンバイソウ

ウコンウツギ

 

そして上二股に到着。時間は8時半。

上二股にも注連縄

ここからは原流域で水が流れているのが見えたり見えなかったり。木々も高い木がなくなって明るくなる。しばらく草の間の細い道を登っていくとガレ場に出た。

とうぜん木々はなく風に吹きさらされる。しっかりと歩かないとバランスを崩しそうだ。このガレ場は壁のように聳えていて、見上げる先は雲の中である。

 

すると上から一人の登山者が下ってきた。今日初めて出会う登山者である。

「こんにちは。上の方は風はどうですか?」と尋ねる。

風で聞こえなかったのか、もう一度同じことを聞いた。すると

「このあたりが一番風が強いです」と教えてくれた。

 

よかった。それならなんとか登頂できそうに思えた。

 

このガレ場を登っていくとコルに出た。ここが馬の背というところのようだ。

特にここの風が強く、向こう側に転落しないように身を屈め、足を踏ん張りながら歩く。バランスを保つためにストックを使っているが、そのストックが風に流されてうまく突くことができなかった。

 

馬の背から急斜面を登ると緩斜面のハイマツ帯の中にでる。相変わらず南斜面側にいるので風は強いが転落の危険は無くなった。

 

続いて岩場の急斜面を登る。岩場ではやはり風でバランスが崩れやすい。そこを登り切って東側の斜面にでると風はだいぶ弱まった。しかし右側は崖となって切れ落ちているので油断はできない。

 

そこを無事通過すると銀色の神社が目の前に現れた。斜里岳神社である。ここで登山の無事を願う。一瞬ここが山頂? と思ったが、山頂はもう少し先に薄ぼんやりと見えた。

 

この少し前、馬の背の少し先から先頭を後退してもらい、若者に前を歩いてもらっていた。けれど、山頂直下に到達するとその若者はぼくに先に行けという。年寄りに先に山頂を踏ませようという心憎い思いやりだった。

 

こうして9時13分、強風の斜里岳登頂に成功。先の登頂のお返しに、記念写真はまずぼくが若者を撮ってあげた。その後ぼくの写真を撮ってもらう。立っているのも大変なので、二人揃って写真を撮るということを思いつかなかったのが悔やまれる。

 

山頂から北側に1メートルくらい低い場所に移動すると、そこは風がかなり弱かった。なのでここで少し休憩し、カロリー補給を行った。実はさっき先頭を交代したのは、もうかなりバテていたからだった。だが、ここで休憩し、エネルギーを補給したら少し元気になった。

 

その後三角点のある北側へ行き、急いで下山を開始した。

 

山頂付近に咲いていたエゾカンゾウ

風と雲の斜里岳に登頂

斜里岳三角点

 

新道より下山

難所を下って上を見る

下山での難所はやはり馬の背の風である。

ガレ場を下る前の稜線ではやはり身を屈め、足を踏ん張りながら歩いた。

ガレ場の下りはバランスを崩すというよりも、滑らないように注意しながら下っていった。そして下まで降ると難所を通過できたことに安堵感を感じた。

 

あとはただ滑らないようにだけ気をつけて淡々と下っていく。

やがて上二股に到着し、ここで小休止。ここから新道に入っていく。

 

一旦少し登ってから下っていき、すぐに竜神ノ池の標識のところに着いた。さて、遠回りして見にいくかどうするか。

 

「せっかくなので見にいきましょう」と声をかけて(心のうちでは、もう二度と来ないと思われるので)、脇道に逸れた。

 

この竜神ノ池に立ち寄るコースは、国土地理院の地図には書かれていなくて、宿に置いてあった「斜里岳登山コース案内」という簡単なコース地図に描かれていた。いってみると小さいことは小さいが、思ったよりもちゃんとした池で、がっかりするようなことはなかった。

竜神ノ池

池まではだいぶ下っていったので、ふたたび登り返すのかと思ったら、池の先に続く道からの登りは下りの半分くらいで尾根道に出た。

 

そこからの尾根道は、軽いアップダウンが続き、やがて左右が開けた道になった。晴れていればの遠くの山々が見えるのだろう。だが、見えなくともとても気持ちの良い道だった。

 

こうした明るい稜線は熊見峠まで続く。われわれはこの峠の少し手前の広くなった場所で少しのんびりと休憩をとった。この時10時40分頃で少し腹が減ったため、ぼくはシリアルを若者は煎餅を食べた。

 

10分ほど休憩し、歩き出して5分ほどで熊見峠に到着。

 

さて、ここから下りとなるが、さきのコース案内によると、「熊見峠より20分ほどはダケカンバの森の尾根歩き その後は急斜面の下り 登山道整備が進み歩きやすくなったが滑りやすいところもある」と安心させておいて、中腹あたりでは「転倒注意! 疲れているけど気合いを入れ直して!!」と書かれている。

 

その文のとおり、最初は急斜面でもそれほど滑らずに下っていけたが、途中からはもうずるずるで、慎重に下っていてもずるっと何度も滑った。下を向いていると今度は頭が枝に当たる。幸いヘルメットを被っていたのでこちらは大丈夫であったが。

 

ずるっと滑っても最初は尻餅をつかずになんとかクリアしていたが、半分くらい下ったところで激しく尻餅をついてしまった。そこは木の滑り止めがあることろで、その木の上で滑ったため、そしてそれが右にカーブするところであったため、置いた左足が滑って下に落ちてしまった。

 

このときスニーカーのため左足のくるぶしが当たってかなり痛かった。靴下もくるぶしの出るのを履いていたのでモロに擦ってしまったのである。すこし血も出たが、しばらく休んでそのまま下っていった。

 

このあともう一度尻餅をついた。ただ、レインパンツを履いていたため、中は汚れたり濡れたりしなかったのはよかった。

 

ようやく下二股に到着した時はほっとした。熊見峠から約45分かかった。けれどここまでのくだりは相当に長く感じられた。

 

下二股からは何度か渡渉するので、そこで汚れた靴は洗われた。このとき見たら、スニーカーのソールの剥がれが大きくなっていた。それでも下山するまでに剥がれてしまうほどではなかったので安心した。

足を怪我してから少し下ったあたりで

熊見峠に咲いていたゴゼンタチバナ

下二股からは標準コースタイムより少し時間がかかり、50分ほどかけて下った。

林道に出た時は、斜里岳に登った充実感に満たされていた。

 

 

最後に

下山直後の清岳荘

熊見峠の手前で休んでいる時、連れの若者がスマホを操作し、友人の車のお迎え時刻を連絡していた。何時に来るように頼んだのかと聞いたら12時半頃だという。そのちょうど見込み通りの時間に下山してきた。

 

ただ、その友人は予定よりも早く到着して待っていた。

そして、同時にこの時間から雨が降り出した。

 

おお、なんてラッキーなのだろう。雨がちょうど止んでいる時刻に登山ができたのである。もちろん登山口にある社に下山報告をして幸運な登山ができたことを感謝した。

 

なお、くるぶしは単に擦り傷だけではなく、打身もあったようでこうしてこれを書いているときもまだ痛みが残っている。足首をひねらなくて良かったと、つくづく幸運を感じている。

 

では、このへんで

 

 

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