
北海道の登山三日目は雌阿寒温泉から登る雌阿寒岳。
登頂後、隣の阿寒富士にも登る予定。
天気予報は晴れ。
あとは体力がどれだけ持つか。
そして当日は快晴。
オンネトー湖畔でキャンプ
斜里岳を下山すると雨が降ってきた。
レンタカーのダイハツ・ロッキーのリアゲートを開けてその下に入る。
ザックを下ろすと、なんと底から背面にかけて泥まみれだった。
下山で尻もちをついた時に付いたものだろう。
雑巾で泥をはらい、車についた水滴を含ませて絞り、それでザックを綺麗に拭いた。
昼食は晴れていればお湯を沸かして食べようと思っていたが、近くの食堂に行くことにする。
昨日埃まみれだった林道も雨のおかげでしっとり濡れている。
検索して食堂を調べると、もうすぐ閉店時間という店ばかりだった。閉店ギリギリに入るのもなんなので、一番近いコンビニの弁当を食べることにした。
コンビニに車を停めた時にはまだ雨が降っていたが、弁当を食べ、出発する頃には雨が上がった。これから向かうのは阿寒湖近くのオンネトー国設野営場だ。
コンビニからは2時間15分ほどで到着。真新しいUPIオンネトーという建物で受付を済ます。料金は格安で1000円也。なので勧められるまま地元のビール(800円)を買った。
初のツェルト野営
今回の登山ではツェルトを持ってきた。これで一泊してみるつもりだ。
設営は相模川の河原で練習してきた。

もってきたのはファイントラックのツェルト2ロングというやつ。
新品を買うつもりでいたが、メルカリを調べてみたら、未使用のものが安く売られていたのでそれを購入。

ガイラインは山旅で売っているダイニーマの1.3ミリを購入。
これは嵩張らなくていいし、とても丈夫。
床面積はぼくのテント、アライテントのトレックライズ0よりも広い。
ツェルトを設営すると近くの雌阿寒温泉まで車をとばした。国民宿舎の野中温泉が1軒だけある。日帰り温泉は6時までなのであと30分。ちょっと嫌な顔をされたが、6時までには上がるのでと言って入浴させてもらった。
長い廊下を通っていった突き当たりが温泉だった。左側の窓から外を見るとたくさんの鹿が草を食べていた。

温泉は洗い場はなく、石鹸やシャンプーなども置いていない野生味のある温泉だった。
しかしちゃんと汗を流してから湯船に入る。ああ、気持ちがいい。露天風呂にも浸かる。
(出典:雌阿寒温泉|北海道足寄町公式ホームページ)
温泉の帰りにオンネトー湖畔から雌阿寒岳と阿寒富士を眺める。山頂は雲に隠れて見えなかった。

ツェルトの中で夕食を食べ、ヒグマ避けのため食料は車の中にしまった。そして早々に就寝。翌朝、気になっていた結露の状態を見てみた。ツェルト内と外気の温度差がなかったのだろう、全く結露していなかった。テントとしての使用に全く問題はなかった。

雌阿寒岳へ
7月2日(火)、道東登山の最終日、3座目は雌阿寒岳に登る。
ツェルトを撤収し、7時にキャンプ場から歩き始める。まずは湖畔を昨日行った雌阿寒温泉まで歩いていく。この場所に下山する予定なので車はキャンプ場に置いていく。
国民宿舎がある雌阿寒岳登山口駐車場まで約40分。ここのトイレを借りて少し休憩。近くの沼にヒグマが出たとの情報が掲示されていた。他の登山者がたくさんいてくれることがありがたい。そこから少し行った先に雌阿寒岳温泉登山口がある。8時、登山開始。



はじめは樹林帯の中の涼しい道を歩く。気温は16度。晴れているのに昨日と同じ気温だ。ありがたい。それほど急ではないが、ともかくずっとのぼりが続く。3合目の少し手前で小休止。羊羹のカロリー補給。3合目を過ぎるとハイマツ帯となり日差しがもろに照りつけるようになる。

4合目あたりに溶岩の流れた跡らしき谷があり、そこを渡ると九十九折りの岩場の道になる。遮るものがなくなり、登り始めた雌阿寒温泉を原生林の中に見つけた。馬鹿でかい岩が点在し,噴火の恐ろしさを感じさせる。


ふと御嶽山の噴火のことを思い出す。
あの時は噴火の10秒後くらいから岩が降り出し、その後すぐに灰が空を覆って真っ暗になったという。そしてその灰が降り出して息ができなくなったそうだ。ガラス質の灰なので吸い込むと肺に詰まってしまうとのこと。恐ろしい。大きな岩が降ってきたら身を隠せそうな岩陰を探しながら登って行った。
このあたりには高山植物がたくさん咲いていた。
ここで下から歩いてきて見つけた花の写真をまとめて紹介しよう。







8合目あたりに来ると隠れられそうな大きな岩がなくなっている。身を隠す場所がない。ここで噴火されたら一貫の終わりだ。
すると上から降りてきた人がすれ違う時にぼくに言った。
「上は爆風ですよ。眺めは抜群ですけど」。
さらにまた降りてきた人が同じことを言った。覚悟して登っていく。
登るにつれて風は強くなってくる。ふらつかないようストックで体を支える。そして頂上直下、ロープを伝いながら下山してくる人がいた。そこは狭い稜線でさらに風の通り道となっていた。その人が通るのを待って、同じようにロープを伝いながら登っていく。
そして10時、無事に山頂に立つことができた。
山頂は少し広くなっていて、バランスを崩しても直ぐに転落ということはなさそうだ。けれど立っているのが怖いので座ったままなんとか記録写真を撮る。それにしても風は怖い。ストックも風で煽られるしザックも風を受けて体が振り回されそうになる。



山頂を過ぎてお鉢を下っていくと多少風が弱くなった。振り返ると雌阿寒岳の荒々しい表情がむき出しになっている。お釜の下からは何ヶ所からか白い蒸気が吹き出していた。
左の方にはまんまるの青い沼があった。その向こうには端正な姿の阿寒富士が聳え立っている。


阿寒富士へは8合目まで下り、そこから左にルートをとって、目の前に見えるジグザグの登山道を登っていく。だが、この強風じゃ阿寒富士は遮るものが何もないので登山は諦めた方がいいかな、と思い始めていた。
下は細かな砂利と岩ばかりで岩は赤かった。


「安全のため阿寒富士に登るのはやめておこう」そう自分に言い聞かせてオンネトー方面への道をとる。
少し下って阿寒富士の方をみたら人が降りてくるのが見えた。
「登っている人がいるのか。登っている人がいるなら行けるところまで行ってみよう」そう思い直して再び8合目まで登っていく。
そしてこんどは阿寒富士に向かって下っていく。下の低くなったところは平坦な場所でハイマツが茂っていた。そのためその辺りの風は弱かった。
そこから岩だらけのザレた登山道をジグザクに登って行った。ハイマツ帯を抜けるとやはり強い風が吹いている。風に向かいながら登り、今度は追い風を受けて登る。
だが、3分の1ほど登ったところで引き返すことにした。風でバランスをとるのが大変だったこともあるが、それよりも体力がもたないと判断したためだ。
そう決めると緊張が解けたが、下山するまでは慎重に下ろうと自身に言い聞かせる。
下まで降りると向こうから人がやってきた。
「風が強いので途中までで下りてきました。これから登られるなら気をつけて」
そう挨拶をしてオンネトー方面に向かった。
ハイマツ帯の中を小さなアップダウンを繰り返しながら下っていく。ちょうどそのあたりにピンクの花が咲いていた。コマクサだ。阿寒富士の方を見ると、さっき挨拶した人の登る姿と、中腹を下ってくる人が見えた。



やがて樹林帯の中に入るとこれまで見えていた景色は見えなくなった。
割と急な樹林帯の坂を下っていくと、西欧人の家族とすれ違った。小学生くらいの女の子の姉妹が元気に坂を登って行った。
途中からなだらかな道になる。長閑だ。だが、ヒグマと出くわしたら大変、耳を澄ませてすすむ。
1合目まで下りてきたところで休憩し、ここで余っている火薬銃の玉をすべて使い切ることにした。途中で数発鳴らしてはきたが、まだ90発くらい残っていた。8連発銃なのだが、ときどき破裂しなかったりしたので100回以上引き金を引くことになった。
そしていつの間にか連発できなくなり、レボルバーの回転式弾倉を自分で回してやらなければならなくなった。すべて鳴らし尽くした時には銃の方も使い物にならなくなっていた。
こうして12時半ちょうどにオンネトー国設野営場の駐車場に戻ってきた。下りてくると日差しが暑く、車の中は火傷するくらいに暑かった。
最後に

駐車場でお湯を沸かして昼食をとる。それにしても疲れた。
空港に行く前に温泉に入りたい。スマホで検索したいが、ここの駐車場は携帯の電波が届かない。管理棟の前まで行けばWifiが使えるのだが、食べながら調べたい。結局雌阿寒温泉まで行って調べることにした。
雌阿寒温泉は体が洗えないためパス。阿寒温泉が近いが日帰り温泉が見つからない。調べていると時間ばかりが過ぎていくので、エイやっとばかり阿寒温泉まで行ってみることにした。
しかし、日帰り入浴の看板は見つからない。代わりに阿寒湖まりむ館という観光案内所を見つけた。入ってみると日帰り入浴をやっている旅館やホテルのリストがあった。そこから一番近いホテルの温泉に向かう。
そこの日帰り入浴は午後3時からとなっていたが、5分前くらいに行ったところ、湯船にまだお湯を入れているところだという。時間がないのでというと、半分くらいでよければと入浴させてくれた。
いってみると3分の2くらいは入っていた。石鹸もシャンプーもある。ともかく体を洗いたかったのでありがたかった。宿の方が言った通りお湯はものすごく熱かった。だが、うめるのもなんなので我慢して入ってみた。じっとしていれば意外と入れるものだ。そういえば陸奥市で入った温泉も熱かったなあと回想。
阿寒湖から女満別空港まで単調な道が続き、眠くなりながらもなんとかレンタカーの返却時間の20分前に返すことができた。
こうして4日間の北海道の登山旅は終わった。
かなり疲れたけれど、大きな怪我などなく、ヒグマにも遭遇しなくてよかった。
では、このへんで

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