3月上旬のおわりに雪山登山教室に行ったのが昨年度最後の山だ。
4月は風邪をひいてずっと調子が悪かった。
秋から冬にかけて毎週のように山に登っていた疲れが出たのかも知れない。
5月になってようやく今年度の登山を始動した。
ゴールデンウィークを有効に活用したい
ゴールデンウィークにはどこかの山に行きたい。
そう思っていたが、4月は体調が悪くて仕事以外はほとんど寝ていた。
4月末のゴールデンウィーク前半も体がキツかった。けれどもようやく風邪の症状が和らいできていた。
GW後半はともかく日本百名山の残りの山を少しでも登っておきたい。そこで楽そうな山を探した。
泊まりがけとなるので宿が確保できること、そして公共交通機関はもう予約がいっぱい入っているだろうと思われたので、バイクで行ってくるということで適当な山を調べてみた。
すると、この冬にスノーハイクをしたいと思っていた西吾妻山と、昨年雨と雪で登山を断念した磐梯山がちょうど良さそうだった。西吾妻山は天気の良い日が休日と重ならず行くことができなかった。磐梯山の方は昨年予定していたスキー場から登る表登山口コースはキツそうなので、標高差の少ない八方台登山口から登ればなんとかなるかと思われた。
次は宿の手配だ。キャンプ場が近くにないので宿泊施設を探す。ところが5月3日はどこを探しても予約でいっぱいだった。たまたま7日まで仕事が休みだったので、出発を1日遅らせて4日から7日までとしてはどうか。
4日の宿泊で探してみると、わずかながらに空いている宿があった。5日も然り。そして6日も同様。これで決まり。すぐにネットで予約をとった。
こうして決まった登山日程は次のとおり。
1日目、自宅から会津若松まで約300キロをスーパカブで移動。
2日目、会津若松の宿から山形県白布温泉、天元台ロープウェイ乗り場まで行き、西吾妻山に登る。登頂後、猪苗代のゲストハウスに宿泊。
3日目、宿から八方台磐梯山登山口にバイクを停め、磐梯山に登る。登頂後、途中の宇都宮に宿泊。4日目はただ帰るのみ。
1日目
ゴールデンウィークは道路が渋滞するのではないか。そう思って早めに家を出る。
Googleマップに行き先を入れるとなんと都内を抜けるルートを勧められた。環七を使うのである。
えー、環七は混むんじゃないか。それにそこまでの246もいつも混んでいる。
しかし、2日前に調べた時もこのルートだった。それでグーグルを信じてそのコースで進むことにした。
ただ、このルートは前にも通ったことがあるので、渋滞さえなければ問題がない。
果たして当日走り出してみると空いていた。そうか、連休の2日目だからなのかも知れない。空いていればとても走りやすい道だ。バイクでも渋滞していないにこしたことはないのである。
今回は会津若松を目指すので、那須の手前を左に入り南会津を通って進む。この道も数回通っている。檜枝岐村へ行く時、那須岳手前の殺生石へ行く時、そして昨年飯豊山に向かう時。
ああ、飯豊山のときは登る前に発熱し、帰りはふらふらできつかったなあ。
そんなことを思いながら南会津を通り抜けていく。暑すぎず寒すぎずほんとうにツーリング日和である。スーパーカブもオイル交換をしたばかりでエンジンの回転もスムーズで気持ちが良い。
あまりに順調でこのままだと早く着きすぎてしまいそうなので、道の駅たじまではしばらく休憩をとった。
午後四時、会津若松の宿に到着。温泉ではないが共同の風呂が沸いていて、のんびりと疲れを癒す。
2日目、西吾妻山に登る
9時半、天元台ロープウェイ湯元駅に到着。
バイクを止めると虫が集まってくる。しまった。まだ早いと思って虫除けを置いてきてしまった。すると左耳の後ろを噛まれてしまった。
ここまでの道は山の中なので狭い道を想像していたが、それがなんとちゃんとセンターラインがあってとてもよく整備された快適な道路だった。両側に見える山々は新緑の緑が美しく、所々に針葉樹の濃い緑がアクセントを添えている。
とてもいい調子で走ってきたのでさぞかし時間短縮になっているかと思いきや、そこはGoogleマップも織り込み済みのようで、マップの示した時間通りでの到着だった。
いそいでバイク用のジャケットを脱ぎ、脚のプロテクターも外して別のバックに詰め、ザックだけを持ってロープウェイ乗り場に向かう。
窓口で1日券なるものを3千5百円で買い、ゴンドラに乗り込むとまもなく出発した。
ロープウェイの次はリフトを三台乗り継いで北望台に向かう。10時30分に北望台に到着した。
晴れ。雪が眩しい。ここでサングラスをつけて靴紐を締め直し薄着になって、10時40分にいよいよ登山を開始。 ロープウェイの中でコンパスアプリの登山届を提出したが、登山スタートボタンを押し忘れ、出発から10分後にボタンを押した。
雪がだいぶ残っていて道がない。とりあえず踏み跡に沿って登る。すると赤いリボンが見えた。けれど、またすぐに見えなくなる。そしてまた赤いリボン。リボンの間隔が遠いのだろうか。それとも違う道を歩いているからなのだろうか。
いずれにしても上りは間違える事は無いだろう。だが下りが心配だ。もし、ガスっていたら全くわからなくなるだろう。晴れていても不安なのだから。
雪はもうだいぶ溶け始めていて、チェーンスパイクなしでも歩いていける。
だいぶ上まであがってきたとき、トレースがわからなくなり赤いリボンも見つからない。そこでスマホを取り出し、コンパスアプリの地図で現在地を確認しようとした。するとその時、ずぼっと雪の中に足がはまり、太もも位まで埋まってその場に倒れた。
雪の表面は割と硬くなっているのだが、その下は柔らかく空洞状態だった。特に木の周りが緩んでいてそこに寄りすぎたようだ。雪を踏み抜かないように気をつけていたつもりだったが、スマホに気をとられてよく見ていなかったのだ。
足を引き上げる時も難渋した。靴が雪に引っかかって上がってこない。この時足の方向が変な方に向き、少し足をひねってしまった。なるほど、もし足がはまって体が変な方に向いてしまったら、足をひねってひどければ骨折してしまうだろう。
雪上の滑落訓練の際にアイゼンが引っかからないように足を上げるのもそのためだ。
あの訓練で新雪をラッセルした時、雪の中でもがいたことを思い出す。もがけばもがくほど埋まってしまい、雪が上からかぶさってくる。もしも雪崩で埋まっても自力で這い出すのは相当難しいということがわかった。雪は美しくもあるが危険なものなのである。
後ろから若い人が登ってきてぼくを追い抜いていく。見ているとやはり道を見失ったようだ。スマホを取り出してルートを確認している。
ぼくも同じようにスマホで確認してみる。よく見ると向かっている方向の先は少し下っているようだ。左に向かえば上りが続いている。こっちだ。少し歩いてみて地図を確認するとGPSは正しいほうに向かっていた。
少し登ると岩場に出た。この辺りには雪がない。また、木がないせいで見晴らしが良い。間近に飯豊連峰、その右手に朝日連邦。さらに右側に見えるのは月山だろうか。それとも鳥海山? これらがくっきりと、とは言えないがよく見ることができた。そこから少し登って行くとかもしか展望台と書かれた柱が立っていた。
その先はなだらかな下りになった。山を左に巻いてから右の方へまっすぐと道が続いている。この辺は木道になっていた。それが雪が溶けて見えていた。さらに少し下ると木道が雪に埋まって見えなくなっている。よく見るとそこここに雪を踏み抜いた穴が空いていた。どうやら下には水が流れているようだ。
木道の上と思われるところを慎重に歩いていく。夏道はそこからずっと下まで降りて行くと思われるが、雪に覆われた今は下まで降りずに中腹をトラバースしていく。行手に見えるのは梵天岩だ。なだらかな山の頂にゴツゴツした岩が見える。
ともかくあの目標に向かっていけばたどり着けるはずだ。踏み跡は途中から幾本かに分かれていた。ぼくは右側のトレースに沿って歩いて行った。しばらくなだらかなところを進んでいく。すると傾斜がきつくなり、行く手をハイマツ帯が前を阻んだ。幅2メートル位のその先には湿地帯が広がっていた。まずいところに出てしまった。夏場なら歩行禁止となっているところだろう。
周りを見ればあちらこちらから人が登っていた。そしてそれが1カ所に集まっていく。ぼくもその中の一団に混じっていった。
こうして11時50分に梵天岩に到着。ここで昼食にする。風除けになり腰掛けやすい岩を探してザックを降ろす。今日は久しぶりにお湯を沸かしモンベルのリゾッタだ。
12時40に梵天岩を出発。ほぼ平らな道を少し進むと天狗岩。広く平らな岩場が広がり向こうの端に岩で覆われた吾妻神社が見えた。あとでそこを通るはずなので、まずは左にあるルートをとって西吾妻山に向かう。
少しすると樹林帯に入る。ともかく道を見失わないように目を皿のようにして踏み跡をたどる。
13時05分、西吾妻山山頂に到着。そこに女性が2人いて、その足元にポツンと小さな標柱が顔を覗かせていた。ぼくがその文字を読んでいると山頂名はそこには書かれていなかった。
「こちらから見ると、ちゃんと見えますよ」とその中の人が教えてくれた。
樹林帯の中にポツンと置かれた標柱。ここが山頂だと言われても、「そうなのか」といった感じだ。
自撮り棒を取り出そうとして、ザックの横のポケットをまさぐっていたら、「写真を撮りましょうか」ともう1人の女性が声をかけてくれた。「ええ、それじゃお願いできますか」と言って写真を撮ってもらった。
2人はぼくが歩いてきた道とは反対の方へ歩いて行った。おそらく西吾妻小屋に向かったのだろう。ぼくも遅れて向かった。しかし特に案内標識があるわけでもなく、気がついたら、また山頂に戻ってきてしまった。
そこにいた男性に「西吾妻小屋に行こうとしたら1周回って戻ってきてしまいました」と言うと、スマホの地図を見ながら小屋はあちらの方角ですねと教えてくれた。「3時過ぎが最終のリフトに乗るんですか」と聞かれたので「ええ」と答える。
ぼくもスマホを取り出して確認しようとしたら、全然地図が表示されない。仕方なくその男性が歩いて行った方向に向かっていく。さっき歩いたのと同じ方角だ。
その道は少し右にカーブしたところから左にトレースがついていた。ぼくはさっき、そこをまっすぐ進んでしまい、元に戻ってしまったのだ。こうして15分後に再出発。
今度はその左側にある道を進んでいく。するとだんだん下り坂になり下のほうに小屋が見えた。あれだ。間違いない。
そうやって小屋まで下っていくと、写真を撮ってくれた女性2人が小屋の分岐のところで休憩していた。、小屋を写真に収めてから女性らの脇を抜けて天狗岩に向かった。
展望の良いところにでたので、山の名前を調べようと、スマホを取り出して山ナビアプリを立ち上げる。するとそこでまた足を踏み抜いてしまった。今度もスマホに気をとられていたせいだ。気が抜けないなと思った。
木道の脇には鉄の棒が立っている。だから、その近くを通れば木道があるはずだ。そうやって天狗岩のところに見えているさっきの神社を目指して歩いて行く。最後に岩を登ると神社に到着した。
そこで参詣する。そうしていたら後から女性2人もやってきた。その中の1人がぼくと同じように参拝する。ぼくは左側の下に見えている盆地の集落を眺めた。するとそこに煙のようなものが輪になって立ち登っているところが見えた。一体なんだろうと思って眺めていた。
そしてゴツゴツした岩の原を通り抜け、行きで通った道を戻っていく。13時50分に梵天岩に出る。そんなに遅くなるとは思っていなかったので、リフトの終了時間をはっきり聞いていなかった。だが、もうすぐ午後2時だ。急いで下っていかねばならない。
ぼくは2人の女性の後をついて行った。後を歩くのは楽だ。ありがたい。池のある湿原を今度は木道の上を通って下っていく。
急な下りになった。前を歩く女性はかなり苦戦している。ひとりは四つん這いになって下っていくが、それでも滑っている。ぼくは雪山講習で習ったように腰を落とし、できるだけ斜面の下に爪先が向くようにして下ってみる。けれど止まろとして足を踏ん張ると滑ってしまう。そこで少し小走りのようにして下ってみた。こうすると滑らない。
下るとそこは登るときにトラバースしたところの下の道だった。だが、ずっと下を行くのではなく、途中からトラバースしたところへと斜めに登っていく。
そこには斜面を滑って遊んでいる家族がいた。帰りの時間は大丈夫なのだろうか、そんなこと思いながら急いで歩いていく。おそらくここに見えている人たちが最後のリフトに乗る集団になるだろう。
先ほどから前を歩いている2人の女性は、意外とペースが早い。必死で後をついていく。
トラバースが終わりると上りになった。そこで2人の女性は、きっと疲れたのだろう、そこで休憩し道を譲ってくれた。本当はぼくだって休みたい。だがお礼を言って先にいかせてもらった。マイペースマイペース。自分のリズムで歩くのが1番だ。
先程のかもしか展望台を過ぎると上るときに迷った道を下っていく。ここは慎重に下らなければならない。ここで前を行く男性2人と子供のパーティーの子供が滑って転び、雪どけの木の根元に落ちてしまった。1人では這い上がれない。大人(父親?)に助けてもらい脱出した。そしてそこで立ち止まり、ぼくに道を譲ってくれた。
本当は先頭を歩きたくなかったが、仕方なく先に行かせてもらう。そこからは慎重に慎重に踏み跡を探して下っていく。赤いリボンも目を凝らして探す。やはり上りと同じように赤いリボンは所々見失ってしまうが、しばらくするとまた見つかる。そうやって慎重に下っていると、突然目の前にリフト乗り場が現れた。ほっとした。14時40分、北望台に戻ってきた。
それにしても、リフトは時間がかかった。リフトに乗ってロープウェー乗り場までに着くのに、45分かかった。まあ、それでも歩くよりはずっと早いが。
ロープウェイは20分間隔。結局乗ったのは15時40分。ロープウェーの乗車時間は約10分。湯元駅に15時50分に到着。
白布温泉
簡単に身支度を整え白布温泉に立ち寄る。すぐに日帰り温泉が見つからずウロウロする。
ネットで調べて17時まで営業しているという旅館に行ってみたところ、16時で終わりだと言う。あれ? さらに下に降りていくと日帰り入浴という看板が目に入る。行ってみるとどうやらやっているようだ。車がたくさん停まっている。
バイクを駐車場に止め、歩いてその旅館に行く。大丈夫やっていた。温泉は細長い大きな浴槽でオリンピック風呂と書いてあった。露天風呂はあるのだが洗場がないと言うことだったので内風呂の方へ向かう。お湯はかなり熱めだが、登山の後にはちょうどいい。さっぱりした。なかなか良い温泉である。今日は猪苗代のゲストハウスに泊まるのでのんびりできる。
温泉から上がり駐車場に戻って出発の準備をしていると、中年の女性が僕の元へ歩いてきて「平塚からバイクで来たんですか?」と声をかけられた。
その夫婦は車で茅ヶ崎から来たそうだ。今日は西吾妻山に登って明日は福島でサーフィンをするのだという。登山は奥さんの趣味、サーフィンが旦那さんの趣味だそうだ。お互い気をつけてと言って、先にゲストハウスへ向かった。
では、このへんで
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