6月27日、月曜日なので他のキャンパーはいなくなっていた。
朝、受付にファイルを返却し、美ヶ原に別れを告げて霧ヶ峰に向かう。
昨日まで見えていた王ヶ頭ホテルは霧に包まれていた。
霧ヶ峰の楽園
鳥の目覚めとともに起床。時刻は4時3分前。鳥たちが一斉に鳴き始め、うるさいくらいだ。ウグイスの鳴き声くらいしかわからないがウグイスが一番元気だ。30分くらいで少し騒ぎが鎮まり、そこにカッコーの鳴き声も加わるようになった。
朝食はモンベルのリゾッタ。お湯を注いで3分で食べられる。
急いでテントを片付け、6時45分、受付に案内のファイルを返却しに向かった。
アザレアラインからビーナスラインに入ると、霧が濃くなってきた。
三峰付近にくると特に霧が濃い。10メートルくらいしか前が見えない。
やっぱり一昨日ここを通った時に写真を撮っておけばよかったと後悔した。
高原の道をカーブしながら下っていくとしだいに霧が晴れてくる。
霧ヶ峰は当然霧で何も見えないだろうと覚悟していたが幸いにも霧はなく、空もだんだん明るくなってきた。
霧ヶ峰ビーナスライン無料駐車場の十字路を左に曲がるとすぐ、警備員のような人に止められた。
ここで車の撮影を行うので少し待ってほしいという。撮影は30秒ほどで終わるとのこ
と。
前にバイクが1台と車が1台止まっていた。
少しして向こうから先導車の後ろに撮影車、その後ろに撮影されている車が走ってきて、目の前で道路の横に外れた。
7:30頃に車山肩に到着。
レストランの建物に上がる階段下にバイクを停める。
トイレを借りていざ出発。
しかし5分くらい歩いてから地図を取り出そうとして、もう一枚の行程メモが見当たらないことに気づく。どうやら落としたらしい。おそらくトイレの後に地図を取り出した時だろう。再びトイレの場所まで戻る。すると思った通りそこに落ちていた。
7時45分、再出発する。この時は目の前のなだらかな丘が車山だとは気づかなかった。
そのなだらかな丘の横腹をぐるっと巻くように道がつけられている。右側に柵がつけられていて、ジージーとあまり綺麗ではない声でなく白黒の小鳥が、まるで先導するかのように、近づけば飛び立ち、また少し先に止まりを繰り返していた。
そうして少し登っていくと、いつもは空高く飛んで大きな声で泣いている雲雀が地上に降りてきている。それにしても雲雀の鳴き声はよく響く。風下で飛んでいてもうるさいくらいに声がよく鳴り響いている。
眼下には緑の丘が美しい曲線を描いて続き、車山肩の建物がどんどん小さくなっていった。
車山肩から一番遠いところまで来ると道は大きく左に曲がり、まっすぐに登っていく。
ここで夫婦らしき中年の二人連れを追い越した。
道は右に曲がり、さらに左に曲がるとその先にはドームのような建物が見える。どうやらそこが車山の頂上らしい。
8時20分、頂上に到達。山頂(1925m)の標識の前で写真を撮っていると先ほどの二人連れがやってきたので場所を空けた。
ここまで歩いてきて、どうも体が重い。やはりまだ美ヶ原登山の疲れが抜けていないようだ。
ゆっくり展望デッキへ移動し、遠くの山々を眺める。さすがに富士だけはすぐにわかる。そのあと脇に鎮座する車山神社に参拝した。
そのあと反対側にあるハングライダーの飛び立ち台のようなデッキの端に座り、足をぶらぶらさせながらしばらく休憩する。後から着いた二人連れは先に下って行った。
休憩しながら次に歩くコースを目で追う。そこからこれから歩く道が全て見えるのである。おそらくあれが次に登る蝶々深山(1836m)だろう。地図を出して確認した。
30分くらい山頂に滞在し、登ってきたのと反対側の急な階段を下る。すぐ横では小鳥が休んでいた。
階段が終わると次は砂利道だった。ずるっと滑りそうなのでゆっくり慎重に下る。
平らなところまで降りてくるとそこから左に伸びている道を行く。道は途中で木道に変わった。ここは車山湿原である。
オレンジ色のレンゲツツジがあちこちで咲いている。右手にはコバイケイソウの群生が白い花を咲かせている。緑の湿原と青い空が美しい。
蝶々深山の登りは一直線だ。といっても高低差は5、60メートル程でたいしたことはない。
ずっと緑の中を歩いてきたのに蝶々深山山頂は石ころだらけだ。
記念写真だけ撮って八島ヶ原湿原に向かう。
下り始めてすぐに珍しい蝶が僕の前をひらひらと舞ってくれた。羽根に日の丸のような丸い紋様がつき、地の色は杏色。羽根の下側にも丸い紋様があり、全体がサファイアブルーのようだった。
残念ながらひらひらと飛んでいたので写真を撮ることができなかったが、あとで八島園地にある八島ビジターセンターに入ったところ、蝶の標本が展示されており、その蝶がクジャクチョウであることがわかった。
また少しいくと、写真を撮っている男性がいた。近づいてみるとクラシックカメラで写真を撮っている。青年だった。
「いいカメラですね」と声をかける。すると「ありがとうございます」と言ってカメラを見せくれた。
アンチークのカメラに詳しくないので機種まではわからないが、美品と言われるような綺麗なスプリングカメラだった。
IKONという文字が見えたので「イコンですか」と訊くと、
「ええ、645(ロクヨンゴ)です。暗室作業が好きなのでこれで撮ってます」
「今はフィルムが手に入りにくくなっているので大変でしょう」
「そうなんです」そして、
「蛇腹は交換しているんですか」と訊いてみた。それは折り目に穴が開くことが多いと聞いていたからだ。すると
「まだ大丈夫なのでそのまま使っています」とのことだった。
その青年と別れて進むとそこは笹の平原の中を進む道で、その先に突然大きな岩があった。そこは物見岩というところで、岩が不安定なかっこうで乗っかっていた。
つづく
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