檜枝岐のキャンプ場2日目の朝は冷え込んだ。
今日は晴れの予報。
ここから尾瀬御池までいき、燧ヶ岳に登る予定である。
下山後は那須まで130キロを移動する。
スーパーカブのガソリンはどこまで持つだろうか。
尾瀬御池登山口
4時起床、テントを撤収して6時20分にキャンプ場を後にする。
6時50分尾瀬御池(みいけ)駐車場に到着。
今日の天気は晴れ。放射冷却のため今日はかなり冷え込んでいる。体が冷えきったので自動販売機で温かいココア飲む。ところが缶を捨てる場所がない。持ち帰れと言うことか。
登山準備をしたあと登山口がわからずうろうろする。たしか駐車場の向こう側に登山口があったはずだと地図を見る。そうだ、駐車場入り口の反対側に道が伸びている。行ってみると果たして御池登山口と書かれた表示版があった。7時10分、いざ出発。
駐車場の先からは幅のある木道が始まり、少し進むとすぐに左に折れる道がある。そこを曲がると細い1本の木道となる。ところがこれが曲者で、腐って落ちているところがある。おまけに濡れていて、いつ滑ってもおかしくない状態だ。木道脇は土で水が溜まっている状態なので落ちたくはない。
初めはなだらかな道を行き、途中から急坂になる。地形図では尾根道のようにみえるが、それがなんと雨でもないのに沢のように水が流れてくる、まるで枯れかけの沢なのである。
今朝寒かったので、この山行直前に購入したオーバーパンツを履いていた。急坂になる前にすでに暑くなっていたのでそれを脱ぎたいが、脱げるような場所がない。細い木道の一本道である。
ようやく木道の橋の手前に広くなった場所があり、平らな岩があったのでその上でようやくオーバーパンツ脱ぐことができた。もちろん上のジャケットも脱いでザックにしまう。
この沢登りのような登山道は、水あり大きな段差ありでとても登りにくく、きつかった。連日の登山ということもあるが。
段差のところで先行する人に追いついたので、「いいお天気になりましたね」と話しかけた。すると、
「そうでないと困ります。そのために新潟から日帰りでやってきたのですから」という返事が返ってきた。そして先に行くように言われたが、こちらもきつかったので、断って後ろを歩かせてもらった。
その後、なんども休んだので後ろを行って正解だった。その方の顔をみることはもうなかった。
湿原あらわる
少しずつ傾斜が緩くなってくる。するとまた木道があらわれる。ただし今度は二本の木道だ。次第に周りの木がなくなって湿原地帯になる。池塘に青空が映り美しい。
中間あたりにわずかに横に佇めるスペースがあって、そこに広沢田代の標柱があった。ここで先行者が一眼レフで写真を撮っていたので「綺麗ですね」と声をかけたら「ほんと美しいですね」と返してくれた。その後、この方とは前後を入れ替えつつ何度も顔を合わせる。
再び樹林帯の中の急坂を登る。道がぬかるんでいて歩きづらい。五合目の標識が見えた。まだ半分だ。今日はここまでのところ標準タイムよりやや遅れ気味である。
ここを頑張るとふたたび湿原が現れた。行手には燧ヶ岳が正面に見えている。やはりちょうど真ん中あたりにスペースがある。今度はベンチが置かれていた。展望台といってよいだろう。熊沢田代展望台である。
手前にわりと大きな池塘を置いて写真を撮る。その向こうにはたくさんの山が連なっていた。アプリを使って山名を同定しようと試みるが、山名がたくさん出過ぎてどれがどれだかわからない。平ヶ岳だけはあれで間違い無いだろうとひとり納得する。
そうして5分くらい滞在し、再び山頂を目指す。ここの木道もだいぶ傷んでいたが、それでも二本通っている。そうすると荒れているところを避けることができるのでありがたい。
熊沢田代を後にして、先ほどよりはゆるやかな道を登る。振り返ると下に湿原がよく見えた。しかし、道はぬかるんだところが多くていやになる。できるだけ靴が沈みにくそうなところを探して通り過ぎる。
燧ヶ岳登頂
ふたたび道は傾斜が急になっていく。
ほとんど樹林帯のなかなのだが1箇所溶岩が流れ出て草木が生えていない崖を横切るところがある。長居はしないほうがよいのだが、ここからの景色が素晴らしい。深田久弥を魅了したという会津駒ヶ岳がなだらかな山頂をみせてどんと構えているのがみえた。
頂上に近づくと、急な涸沢があらわれる。本当に急だ。それも直上する。何人も途中で休んでいる人が見えた。
ここを登ると左に少し巻いてまた少し登ると最後に岩場が現れる。そこを乗り越えると燧ヶ岳のひとつ俎嵓(まないたぐら)の山頂である。10時20分、登頂。
ここからは尾瀬沼全体が見下ろせる。そこから視線を右にやるともうひとつのピーク、柴安嵓だ。
ここに荷物をデポし、芝安嵓まで往復する。芝安嵓には5分間滞在。尾瀬ヶ原がしっかり見えた。至仏山は山頂が雲に隠れてしまっていた。
唯一ここだけは標準コース20分のところ片道15分で往復できた。しかしそれも荷物を置いて空身だったからだ。やはり2週続けての登山が堪えている。
11時10分、俎嵓に戻ってくる。ここで昼休憩をとり、11時40分下山開始。
途中の涸沢はすこし幅があったのでスキーで滑る時のようにジグザクに下る。するとスキーで使うようにストックを突いたらとても降りやすかった。これまで2本あるとたいてい1本がひっかかっていたのが解消されたのである。
つまり、2本のストックがあっても左右1本ずつ使うようにすれば邪魔にならないということを体で理解できたわけである。ついでに体を左右に動かしていても、視線はいつも下を向くようにすると早く楽に下ることができた。今まであまり下りは得意ではなかったが、これで少し楽になった。
熊沢田代に12時25分到着。5分ほど休憩する。ここまでの下りは早かった。15分も短縮。これもスキーのときように調子良く下ったためである。そしてその後は標準タイム通りとなった。なお、木道では2本のストックでは歩きづらいので1本はザックにくくりつけた。
登りで苦労した沢のようなところでは、下りも大変で滑らないように慎重にくだった。先行者が休んでいるところに追いついた時に、「滑りそうで怖いですね」というと、
「滑りそうというか、もうすでに何度も転びました」ということだった。そこで昨日登った会津駒ヶ岳の<必ず滑る>という注意書きのある木道のことを話した。するとその方は、
「わたしは明日登ろうと思っているところなんですよ、気をつけます」とのことだった。その後自分も一度滑って手をつく。
13時45分、ようやく尾瀬御池駐車場に戻ってきた。
最後に
尾瀬御池登山口から登った燧ヶ岳の全体的な感想。
結局頂上までほとんどが腐った木道とぬかるみ。そして急坂の沢登り。とても歩きづらい山だった。
悪いところばかりでは無い。良かったところは、やはり湿原の美しさ。そして頂上からのすばらしい眺め。
下山後、靴の洗い場があったのはよかった。靴だけでなくストックも洗う。つけていたスパッツも泥だらけだったのでこれも洗い雑巾で拭く。
こうするとなんとなく気持ちがいい。これから那須までの移動が待っている。
するとそこに懐かしいバイクがスッと入ってきた。
なんとホンダXL250。たしかRだったと思う。近づいてみると綺麗な車体だ。黒いシートに白くXLの文字。おじさんライダーに「懐かしいバイクですねえ。ずいぶん綺麗に乗ってらっしゃいますねえ」と話かける。すると、うれしそうにいろいろ話してくれた。
ずっと乗っていたのではなくて最近中古を買ってそれに自分で手を入れたのだそうだ。若い頃に乗りたかったバイクなのだそうだ。シートも張り替え、XLの文字もそのシートから写して自分で書き入れたのだということ。
よく見ればさすがに40年前のバイク。だが、キャブやプラスチックのフェンダーはフリマで買って交換したということだった。
新潟から走ってきたというその方は僕より一足先に軽快なエンジン音を響かせて去っていった。
では、このへんで
尾瀬のもう一つの山、至仏山には昔登っています。
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