日本百名山完登を目指し、ちょっと頑張り過ぎたか。
前日にバイクでキャンプ場入り。翌早朝より登山開始。
ところが、体調不良で足取りが重い。
その上、お腹がゴロゴロいい出した。
おまけに雨も降り出す。
このまま撤退?
そんな考えが頭をよぎった。
戸隠キャンプ場は大賑わい
我が家から戸隠キャンプ場まではおよそ280キロ。スーパーカブに乗っていったが気温は30度を超えていて、信号で止まると熱気がぷわっと体を包む。
途中、国道20号にある道の駅はくしゅうでお弁当を買って昼食。そして富士見町から八ヶ岳に沿って麓の道を北上していく。
天気が良く、八ヶ岳がよく見える。昔、家族で2シーズン続けてクロスカントリースキーを楽しんだ原村を通過。八ヶ岳に登った時は反対側の本沢温泉から硫黄岳、横岳と南に縦走したことがある。あの時は結局小淵沢駅まで歩き通したっけ。
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北上していくと、蓼科山が見えてくる。ここは今年の冬に登ったばかりだ。その手前の山頂が平らな山は北横岳か。ここも正月に登ってきた。
山中に入っていくとその姿が見えなくなる。不思議なものである。山から離れることにより全体の姿を望むことができる。急カーブをなん度もターンしていくと白樺湖に出た。そしてそこから下り坂になる。
しばらく下って行ったところで疲れが出た。長和町というあたりで休憩をとる。昨夜しっかり睡眠をとったつもりだったが眠りが浅かったのか、なんだか眠い。建物の日影に入り、そこで座って目を瞑る。気がついたら30分も経っていた。どうやら少し眠ったみたいだ。
その後は眠気も起こらず走り続けることができた。菅平高原を通った時は涼しくてホッとした。休憩はコンビニで買い物をしたときくらいで急いでキャンプ場へ向かう。
午後4時半、戸隠キャンプ場に到着。すでに多くのテントが張られていた。よく整備されたキャンプ場で、トイレも綺麗だった。ここはみなさんにお勧めできる。
バイクを乗り入れると駐車料金500円がかかるが、登山者用の無料駐車場に停めておけば料金はかからない。荷物を下ろすと登山者用駐車場にバイクを停めた。
テントは北海道に続きツェルトを持ってきた。一般のキャンプ場でツェルトはかなり目立った。
高妻山へ登り始めたが
高妻山はキャンプ場が登山口になっていた。その奥の戸隠牧場までバイクで行けると思っていたが、一般車両は乗り入れ禁止だった。5時45分、キャンプ場を出発。戸隠牧場の中を歩いている時に雨が降り出す。カッパを着てザックカバーをかける。
登山口から右に左にと曲がってなだらかな平原を少しずつ上っていき、森の中に入っていく。しかし、なんだか足が重たい。歩き始めて1時間ほど経った頃、急に腹が差し込んだ。まずい。地図を確信したがこの先トイレは無い。
仕方ない、引き返そう。
こうして戸隠牧場を抜け、キャンプ場のトイレに駆け込む。何とかセーフ、戻ってきてよかった。しかしだいぶ時間をロスした。朝食の刺激が強かったせいだろうか。食べたのはモンベルのリゾッタ、ガパオだった。
気を取り直して再び登り始める。牧場入口に戻ったのは6時45分、40分くらいのロスだろうか。それをログで確認しようとしたら、なんとうまくログが取れていなかった。結局最後までダメだったのだが。
相変わらず重い足を持ち上げながら1時間ほど歩くと滑滝に着いた。ここには鎖が付けられていた。ここまで十数回と渡渉を繰り返している。大洞沢という沢だ。斜里岳のように沢の中を歩くことはほとんどなかったが、ここも沢登りといっていいコースだった。
そしてそこからは急登になり、さらに登っていくと鎖場が現れる。短い鎖場の上は帯岩という壁だ。難所である。ここをトラバースするのである。滑るといけないので鎖を離さないようにしながら慎重に横断する。
この後、氷清水を過ぎたあたりで、牧場入り口手前で追い抜いた男性に追いつかれた。一不動まで後わずかのところである。もうかなり疲れていたので先に行ってもらった。
ああ、今日は絶不調だ。お腹もまだ少しごろごろしているし、足も重たい。慌てずのんびり行くことにしよう。頭の片隅には登頂は無理かもしれないという思いもよぎった。
8時27分、一不動に到着。ここは戸隠山から続く縦走路のコルの部分だ。不調ではあるが、それでも2時間コースのところを1時間40分ほどで登ってきたことになる。
この一不動は稜線上になるので風が通り抜ける。すこし風が強かったが、熱った体を冷ますにはちょうど良かった。ただ、汗冷えしないように熱りが収まったらウィンドブレーカーをすぐに着た。
先ほどぼくを追い抜いて行った男性が座っているベンチの隣に座り、ソイジョイでカロリー補給して腹薬を飲む。
「かなりの急登でしたね」ぼくがそう言うと、
「高妻の登りはもっと凄いですよ。(後ろを振り向いて)あ、今日はガスで見えないか」
「もう何度か登られているのですか」
「数え切れないくらい登ってるよ。ただ、乙妻へは1回しか行っていなくてね」
乙妻山は高妻山の先にあり、相当早い時間に登るか相当の健脚でないとなかなか行けない山である。
その男性は先に出発して行った。ぼくがさらに休憩していたら、下から男性1人女性2人のパーティが登ってきた。それを契機にベンチを空けて出発する。8時40分だった。
崖っぷちはお花畑
ここからは尾根の稜線を歩くことになるが、そこはアップダウンが激しくてきつい道であるという人が多いところだ。少し登っていく東側がぱっと開けた。そこに二釈迦と書かれたプレートと祠が立っていた。どうやら仏様が順番に祀られているみたいだ。
後で調べたところ、十三仏といわれる不動・釈迦・文殊・普賢・地蔵・弥勒・薬師・観音・勢至・阿弥陀・阿門・大日・虚空蔵がおられるということである。その諸尊のあたまに順に番号がつけられてそれぞれの場所に祠が建ててあるもののようだった。
いま向かっているのは五地蔵岳である。実際、その先に順に並んでいて、高妻山の手前には十阿弥陀が建てられていた。しかし、四番目は気が付かずに通り過ぎてしまった。おそらく普賢の祠が建てられていたと思われる。
いま立っている二釈迦の祠のある足元には切り立った崖がある。そこには高山植物がたくさん咲いていた。つまり崖っぷちはお花畑なのだった。
アップダウンを繰り返し
この後もアップダウンを繰り返し、高山植物を愛でながら五地蔵山に向かう。
五地蔵山の山頂付近は草が刈ってあり、広場のようになっていた。ここでも少し休んでカロリー補給をする。下山で使う予定の弥勒新道の分岐はどこかと注意していたら、その先の六弥勒のところから弥勒新道が伸びていた。
五地蔵山を過ぎても急なアップダウンは続く。一つ目のピークは急だが二つ目はダラダラと登りダラダラと下った。
九勢至(きゅう・せし)にでると今度は左側が大きな谷になっていた。
この先、急斜面!!
高妻山山頂まであと少しのところで急斜面が現れる。疲れた体でここを登るのはしんどい。下ってくる人影を見とめた時は、休憩がてら待つことにした。こういった急斜面は下りが危険なのだ。
阿弥陀如来を拝み、登頂
上まで登り切って横に登山道を進むとふたたび急斜面があらわれた。波状攻撃である。この急斜面はかなりのものでだいぶ消耗した。頂上はまだか。すると岩稜帯が現れ、十阿弥陀如とある。ようやく頂上と思ったが、高妻山の標識はない。残念、まだ先か。
がっかりして岩の上にしゃがみ込んでいたら、一不動で話をした男性が向こうから現れた。
「本当にここの登りは急ですね」というと、
「ただ、距離が短いですから、300メートルくらいでしょうか」
「ここからは北アルプスがよく見えるのだけど、今日はガスって残念でだね。雨が降らないだけマシですが」
「家に電話したら下は蒸し暑くて大変だって。それに比べここは天国だね」
聞けば地元の方で、足を怪我してしばらく登れなかったので足慣らしにやってきたとのこと。今後常念岳や鳥海山に登りたいと話していた。
そんな話をしばらくしてから降りて行った。こちらも気を取り直して岩場を進んでいく。
そして、ほどなく高妻山山頂の標識が目に入る。11時50分だった。ここでコンビニで買ったパンで昼食。食べていると一不動に後から登ってきた3人組もやってきた。お疲れ様と声をかけあい、登頂を讃えあう。そして12時10分一足先に下山を開始する。
危険な急斜面は時間をかけて慎重に下る。アップダウンを繰り返していると九頭竜山や戸隠山がその険しさをあらわにしている姿がよく眺められた。
六弥勒から弥勒新道を下っていく。眼下には戸隠牧場やキャンプ場が見え、向こうには黒姫山や飯縄山が優雅な姿を見せている。
間近に猿も
やがて森林限界の草地から樹林帯に入って行き、下界は見えなくなる。
こうして長い下りを辛抱して下り、15時30分戸隠キャンプ場に戻ってきた。
キャンプ場に戻ったらシャワーを使わせてもらおうと考えていたところ、残念ながらちょうど清掃中だったため、結局、トイレで体を拭いて着替えをした。
さっぱりして売店で瓶のジンジャーエールを飲んでいたら、ヘルメットを持った20代の女の子が隣に座り「お疲れ様でした」と話しかけてきた。
その娘は戸隠山に登って一不動から降りてきたとのこと。蟻の塔渡りというナイフリッジなど危険な岩場を通ってきたと言うことになる。
「蟻の塔渡りも跨いで進めば怖くなかったですよ」と平然として話していた。ぼくがこれからバイクで帰るというと、以前ホンダのCB400に乗っていたが、登山にハマったので手放したと言うことだった。
そうやって話をしていると雨が降り出した。しばらく話をして休憩を取るとカッパを着て駐車場に向かった。戸隠高原を降りていくと雨は上がった。
最後に
高妻山は本当にきつかった。苦しかった。先週の御嶽山の疲れが残っていたのだろう。
戸隠連峰はやわらかい土と鋭く固い岩稜帯が混ざり合っている硬軟併せ持つ神秘的な山だ。登山道でもその土は柔らかく、ストックの先が埋まってしまうほどだ。岩稜帯ではストックの先のゴムが滑って怖かった。
登りではこのゴムキャップをつけていたが、急斜面を下るのに危ないのでゴムを外した。しかし、岩稜帯を過ぎるとやわらかい土で、その先が埋まってしまうためしっかりと突くことができなかった。
先がどろんこのままゴムキャップをつけたくなかったので結局そのまま下山することになった。つまりあまりストックが役に立たない状態で下ったことになる。
そしてもともと弱い膝に少し違和感を感じ始めたため、無理をしないでゆっくり下った。
一時は撤退という言葉も頭をよぎったが、五地蔵山あたりがなだらかだったため、そんなことも忘れて歩いていたらなんとか頂上まで行くことができ、下山までしっかり歩き通すことができて本当に良かった。
今回は遠くの景色は眺められなかったが、それよりも十の仏に導かれて無事に登ってこれたことに感謝したい。
では、このへんで
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