前回は、旭岳から白雲避難小屋まで。
さて、ここからが大雪山を余すところなく楽しめるルート。
しかし、大量遭難があったルートなので気を抜かずに行こう。
二日目、まずは忠別岳に向かって
8月12日、3時に起床。とりあえず寝具を片付ける。この山行では寝袋は持たず、ダウンジャケットとダウンパンツを履き、それにシュラフのインナーシーツとSOLのエスケープヴィヴィ・ライトをシュラフ代わりとした。
目覚めるとすぐにレインジャケットを着る。ツェルトの内側が結露で濡れているのでこれを着ないと服が濡れてしまうのである。それに朝方は冷え込んでいたのでレインジャケットを羽織ったままでいた。
朝食は、荷物を軽くするために1食分のシリアルと粉ミルクをビニール袋に入れてきた。あとは水を入れるだけである。これにミニッツメイドの朝バナナでカロリーを補充する。
明るくなってきたので小屋の周りを少し歩いて写真などを撮る。
そうこうしているうちにいつの間にか5時少し前。慌ててツェルトを撤収し出発の準備をする。ツェルトの撤収は簡単で楽だ。ペグを無くさない様にしっかり本数を確認する。
5時15分、トムラウシに向けて出発。朝日を浴びた高根ヶ原の先に忠別岳、その向こうに小さく王冠の様なトムラウシ山が見えた。最高だ。
歩き出すとすぐに暑くなる。まずはレインジャケットを脱いだ。さらに進むと下草が朝露で濡れている。そこでレインパンツを履く。そこを通過したら今度はそれを脱ぐ。こうして何度も立ち止まっているうちに後ろからやってきた人たちがぼくを追い抜いていった。
朝日を浴びながら歩く高根ヶ平はとても気持ちが良かった。
さらに歩いていくと、気温も上がり暑く感じはじめたので長袖をさらに1枚脱いで身軽になった。
高根ヶ原は名前の通り平らな平原で左側が切れ落ちて崖になっている。右側はハイマツが一帯を覆っている。登山道はその間の崖っぷちにつけられていて、たいていは石ころだらけだが、ところどころにハイマツのトンネルがあって、そこは少し大変ではあったが、開けたところはとても快適で気持ちよかった。
8時30分、忠別岳到着。忠別岳は右側が崖になっていて、左側が緩やかな傾斜になっている。その緩やかなところを少しずつ登っていて、頂上につく少し前でエネルギー不足を感じ、しばらく休憩してカロリー補給をした。
このときに追い抜いて行った集団は、忠別岳山頂で休憩して食事などをしていた。
これまでずっとこの忠別岳を目指すように歩いてきたので、なんだか寂しい気持ちになった。
次の目標はヒサゴ沼
ここでは休憩を取らず、すぐに反対側に降りていく。久しぶりの急坂だ。下っていくとトムラウシ山に笠雲がかかっているのが見えた。さらに下ると下に避難小屋が見え、登山道から少し脇に逸れるがそれほど遠くないように思えた。
小屋への分岐には9時15分頃着いた。そこから小屋の方に行ってみたが、だいぶ下るのと5、6分歩いても小屋が見えて来なかったので引き返すことにした。
目の前には壁のように聳え立つ山々見える。地図を見てあれが五色岳、化雲岳だろうと見当をつける。10時5分頃、その五色岳の山頂に到着した。忠別岳から前後ろになりながら歩いてきた方と一緒になったので少し話をする。富山から来ている方だった。
そこからハイマツ帯の中を進むとすぐ右側が崖だったりして、油断すると危険な箇所だった。だんだん崖っぷちから離れていき、なだらかな平原地帯に出た。沼のところで分岐があり、右に行くと化雲岳、左はエスケープルートだ。出発が遅れたこともあり、また、天気が下り坂で雲が出てきていたので眺望はきかないと考えて、エスケープルートを取ることにした。
11時過ぎに向こう側の分岐に出たが、その少し手前で登山道にクマの糞を発見した。明らかにこの辺りにクマがいる証拠なのでゾッとした。
そのとき化雲岳の方から降りてくる人がいた。だいぶ前にぼくを追い抜いて行った方で、雲の切れ間に旭川の町の方が見えたということだった。その方はこれからふたたび白雲岳の方へ引き返すという。ぼくはここで昼食にした。
11時半に出発。ヒサゴ沼に向かう。そこの水場で補給するつもりだ。12時ちょうどに沼に到着。これまで話をした方は皆このヒサゴ沼に泊まると言っていた。水場を探しながらテント場に行ってみるとテントはまだ2張りのみで、人影は見えなかった。
水場が見つからず、いよいよ沼の水を汲むしかないかと思っていたら向こうから人が歩いてきた。尋ねると雪渓の下が水場だと教えてくれた。なるほど、そういうことか。どのぐらい汲もうか迷ったが約3リットル水を汲んだ。重い。
そして南沼のキャンプ指定地へ
水を汲み終わると12時25分、そのまま雪渓の脇の大きな岩が転がったところを登っていく。間宮岳分岐で話しかけてきた人が一人でそこを降りてきているのに出会う。なぜ一人? そう思いながらもコースを間違えていないことに安心する。
ヒサゴ沼との分岐にはちょうど13時に到達。そこはメインルートのコルになっていた。よって左に折れてさらに登っていく。
これまでですでにだいぶ疲れており、そこから先にある日本庭園、ロックガーデンなどと綺麗な名前がついているところはさらに体力を消耗するところだった。
次の目標の北沼にいくにはこのロックガーデンという大岩の積み重なった山を越えていかねばならない。登っているとナキウサギが鳴く声がしたので必死に探したが、残念ながらその姿を見ることはできなかった。
そこを登り詰めてホッとしたのも束の間、さらに細かな石が転がるの平原に見えるところを登っていかなければならなかった。霧のためコースから外れないように注意して進む。誰かが立てた杭やケルンが道標となった。
こうして右手の霧の中にさらに白く輝くものが見えた。北沼に到着だ。南沼まではあと少し。
そして15時半、ようやく南沼キャンプ地に到着した。テントの数は少なかった。
つづく
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