秋からのお祭り的な毎週登山を今月頭に終えて気が抜けた。
残念ながら、悪天候と冬季道路閉鎖により2座に登れなかったが、それでもやり遂げた感を感じている。
最終的に今年登った百名山は11座となった。
前半の体のだるさによりスタートは7月半ばとなり、さらには8月のコロナ感染。
なんとか山登りができる体調となってからの駆け込み登山だった。
その間、頭の中は登山一色で、句会の欠席連絡を忘れていたりもした。
昨年の反省点は、登山シーズンが終わったらまったく運動をしなくなったこと。
これでせっかく付いた体力がすべて衰えてしまった。
そんな反省をもとに、この冬はしっかり運動していこうと思っている。
とりあえず、年末年始の休みの初日、丹沢の塔ノ岳に登って来た。
バカ尾根に挑戦
年末、いつもは大山に登っている。
だが、今年は少し難易度を上げてバカ尾根に挑戦することにした。
12月2日に伯耆大山に登って毎週登山をやり終えてからは、まったく運動をしてこなかった。燃え尽き症候群というやつでやる気が起こらなくなった。疲れを癒すためだと言い訳をして暇さえあれば横になっていた。
それからそろそろ1ヶ月。ここでようやく体を動かすことにしたのである。
バカ尾根とは、丹沢の塔ノ岳から大倉に下る大倉尾根のことで、ただただ長く、また関東ローム層で滑りやすい尾根である。
昔からよく登られるルートのため、登山者の踏み跡で植生へのダメージが大きく、特に雨が降るとまともに歩けないくらいひどい状態だった。
こんな状態の尾根道を歩くのだから、バカみたいと登山者自身がそう思ったのか、そんなところへ出かける酔狂者に対してバカみたいと思われたのかは定かではないが、おそらくその両方でこのような名前が付けられたのではないかと個人的にはそう思っている。
ところが近年、植林が行われたり、植生を守るための木道や木の階段が丹沢のほかの登山道でも整備されて来ている。今回登ってみてあらためてそのことを再認識した。
バカ尾根はもはやバカ尾根ではないのである。
だが、バカ尾根に登って来たといえば通りがいい。大変な山道を登って来たのだぜ、と吹聴することもできる。そこで、ここでも今まで通りバカ尾根と呼ばせてもらうことにする。
ベースレイヤーのテスト
大倉バス停のある秦野戸川公園大倉駐車場までスーパーカブで行く。朝の気温は3、4度。家からは50分弱の距離である。
一昨年、カブで西丹沢に行った時は体が冷えきって、登り始めても暖かくならなかった。その反省をふまえてしっかり防寒対策をした。おかげで体の芯まで冷え切ることはなかった。まあ、距離も短いしね。
今回はトレーニングのほかに、新しいベースレイヤーを試すことも目的の一つだ。肌にじかに身につけるものは、汗を素早く上の衣服に移してできるだけ体を濡らさないようにするものがよいと言われている。
冬山の遭難で、ウールの下着を着ていたので助かったという話は昔からよく聞かれる。このウールに匹敵する良さと、さらに手入れの良さを追求してポリプロピレンという素材が生まれている。総合的にはポリプロピレンが良さそうだが、暖かさの面ではウールが優っているという。どちらも着用してきているが、はっきり言ってその違いはよくわからない。ただ、どちらも静電気でパチパチする。だから登山以外では着ることはない。
今回試すのはおたふく手袋の3つの製品(ミレーのドライナミックという網網の評価が高いが値段も高い)。
一つ目は、「BTデュアル3Dファーストレイヤーノースリーブクルーネックシャツ」製品番号JW-520というもの。長ったらしい名前だが、ようはミレーの製品と同じ機能を狙ったもの。
二つ目は、「BTデュアル3Dファーストレイヤーボクサーパンツ」。一つ目と同じで、それのパンツ版。製品番号はJW-519。
3つ目は、「BTパワーストレッチ前開きロングタイツ」(製品番号JW-165)。こちらは吸汗速乾機能は同じだが、遠赤外線加工や裏起毛により暖かさという機能が加わっている。
これに、上は衝動買いした(実はセールで安かった)カリマーのベンチレーションパーカを着て、下にはモンベルのアウトレットで買ったウールのニッカボッカを履いてきた。
さらにクリエイトSDで買ったレッグウォーマーまで付けて、汗対策と暖かさ満点の出立ちで歩き始めた。8時に到着し出発は8時半、準備に30分もかかってしまった。
大倉には何度も下りて来たことはあるが、たぶんここから登るのは初めてである。知っている道でも反対側から見ると萩原朔太郎の「猫町」のように世界は違って見える。
歩き始めてすぐに堀山下高区配水場(大倉の清水)がある。ここで家から組んできたペットボトルの水を入れ替えた。
アスファルトの道がコンクリートに変わり、やがて家屋が現れる。そこには「克童窯」という看板が掲げられている。なかなか趣のある建物だ。そこから先は石がごろごろした山道に入っていく。
次に現れた建物、そこに小さく「丹沢ベース」と書かれた看板が立てられている。そこの庭にお邪魔すると向こう側が谷になっていて、とても見晴らしがいい。
しかし、丹沢ベースって何だろう? 帰ってから調べてみると、HPに「この小屋を活動の拠点として、広く登山、自然散策を行っている」と書かれていた。空き家ではなかった。
ここでベースレイヤーについて。
歩き始めてすぐにタイツが暑くなって来ていた。気温はたしか7、8度。このタイツ登山には保温力が高すぎる。急登を登ればなおさら暑い。だが、途中で脱ぐわけにはいかず困ってしまった。
急登を登り切ると雑事場の平という尾根道に出る。ここからが本当のバカ尾根である。ここは名前の通り平らな場所でテーブルとベンチが備えつれてある。ここで、カリマーのパーカは脱いで、モンベルのベースウェアのうえにTシャツを着た。そして下のレッグウォーマーを外した。
こうして身軽になって(だが、ザックは重くなった)、しばらく平坦な道を進んでいく。大倉尾根は、こうした平坦なところがところどころにあって、それが足を休めることになって非常にありがたい。
しかしこの先、頂上まで階段地獄が待ち受けていた。
平坦な尾根の先には見晴茶屋がある。なかなかきれいな小屋である。明るい日差しを浴びて日向ぼっこをしているようだった。
この茶屋の裏手にまわるとここからがバカ尾根の真骨頂の急登が始まる。そして傾斜が緩くなるとそこにはモミジの林が広がり、秋には紅葉が美しい場所だ。このあたりから木道がつけられていて、それが次第に階段に変わっていく。
こうしてひと登りすると駒止茶屋があらわれる。駒止? ここまで馬が通ったのだろうか? ここは週末に開いていて宿泊もできる、らしい(最新の情報ではないので行かれる方は直接確認してください)。
こうした小屋が要所要所にあって、それがちょうどよい中間目標となってくれている。
駒止茶屋は塔ノ岳山頂までのほぼ中間地点にある。この茶屋は波板のトタン壁でいかにも安普請といった感じなのだが、鮮やかなグリーンに塗られていて、なんだか可愛らしい小屋に見えてくる。
登山カメラ考
そういえば、今回はひさしぶりにデジカメを持って来た。パナソニックのDMC-LX5である。
なぜかというと、スマホのバッテリーを節約するためと、手袋をしていても写真が撮れるようにというためである。しかし、手ぶれはするし(安易にシャッターを押すため)写りはスマホに劣るのでちょっと考えものではある。
まあ、古いデジカメだから仕方がないのだが、色がアンバーがかっているのとLEICAレンズの特性なのか柔らかい描写すぎて風景を撮るにはシャープさが足りない気がする。逆にいえば、人を撮るにはいいのかも。木村伊兵衛風にね。
どうしてこんなことを考えたかというと、先日の大山は完全な雪山で、スマホのバッテリーの消耗が激しかったこと、そして写真を撮るためには手袋を外さなければならないなど面倒だったからだ。
バッテリーの方は、スマホをモバイルバッテリーに繋いで一緒にポケットに入れ、そこにカイロを入れておいたら復活した。手袋の方は、インナー手袋がスマホ対応ではなかったのにも関わらず、雪で濡れたおかげで電気が伝わり、シャッターが切れたのである。
こうして考えると、いかにスマホカメラに慣れてしまったのかということがわかる。ここ2年間はデジカメに触れることもなかったんだからしょうがない。
今回久しぶりにコンデジを使ってみて、気をつけなければならないことがいくつかあった。それは、首にぶら下げていると、いつの間にかダイヤルが回って撮影モードが変わってしまうことだ。
なまじシャッター優先だの絞り優先だのプログラムだのとモードが切り替えられるため、いちいち撮影前に確認しないといけなかった。それがとても煩わしい。まあ、スマホはいちいちカメラアプリを起動するのが面倒なので、気をつけることが違うというだけでどちらもあまり変わらないのだけれど。
あと、LUMIXのほうはフィルムモードというのがあってダイナミックとかネイチャーとか色々と変えられるので、ひょっとしたらもっとシャープな画像も撮れるのかもとちょっと期待したりもする。
地獄の階段
駒止茶屋からは比較的なだらかで、快適に歩くことができる。再び登り始めるとすぐに堀山の家がある。ここまででかなり疲れてしまったので、そこのベンチで休憩。目の前には急登の坂が見えている。
だが急登も、階段がつけられているので安心して歩くことができる。昔は階段なんてなかった。下りでは多くの人が尻餅をついてお尻を泥だらけにしていた。現在は安心して下ることができる。
しかし、階段はどこまでも続く。さらに今回はトレーニングのためザックにたくさん荷物を詰め込んで来ていたので、それが肩に重くのしかかってくる。それにどうも左肩が上がっているらしく、ショルダーハーネスが左にばかり食い込んでくるように感じられる。
そればかりではなく、約1ヶ月間運動をしていなかったことが原因だろう、足が重たい。けれど、自分のリズムを崩すとなお更きつく感じられるだろうと思い、リズムだけは保って歩いた。
天神尾根からの道が合流するあたりから道が平坦になる。そして木道。この木道がなかなかに歩きにくい。しかし植生保護のためなるべく木道の上を歩く。そしてその後は階段に次ぐ階段。
やがて目の前に花立山荘が現れる。ここまでくれば山頂はあと少し。
花立山荘の上部は見晴らしがいい。正面に塔ノ岳、右手には大山が見える。
こうして11時半、塔ノ岳山頂に到着。
標準コースタイムは3時間半。気がつけば30分も早く歩くことができた。
暑くてアンダーウェアとTシャツだけだったが、降ってくる人たちは皆フードをかぶって暖かそうな格好をしていた。想像通り、山頂はすごく冷え込んでいて風もあって寒かった。
だが、一番に目を引いたのは樹氷である。山頂は別世界だった。
山頂の尊仏山荘の左手には丹沢山、さらにその左手には不動の峰が見えた。山頂が白く美しい姿を見せていた。そして圧巻は富士の笠雲。
さっと景色を眺めたところで昼食。風下側に移り風を避ける。最近買ったキーホルダ式の温度計は2度くらいを示していた。しっかり上着を着て寒さを防ぐ。
昼食は不本意ながらパンを持って来た。寒さでゆっくりできないことを考慮してである。温かい飲み物はポットに入れて来たお湯で作る味噌汁。フリーズドライなので簡単だ。
山頂の写真のほとんどは昼食の後に撮った。こうして山頂での滞在は約50分。いつの間にか長居をしてしまった。
下山開始
前回塔ノ岳に来たのは5、6年前で、ヤビツ峠から表尾根を縦走した時だ。あのときはゴールデンウィークで行列ができ、鎖場では大渋滞だった。そして調子に乗ってバカ尾根の下りを駆け降りて行ったら途中で膝痛により動けなくなった。
あのときは本当にもう歩けないかと思った。見晴茶屋の裏手でしばらく休み、痛くなった左足を庇いながらなんとか下ることができた。大倉バス停手前の舗装路に出た時は、ホッとしたと同時に困難を乗り越えた(ミッションを達成した)ことに我ながら誇らしい気持ちがしたのを覚えている。
そんな失敗があり、下りは慎重に膝にダメージを与えないように(衝撃を与えないように)下って行った。
途中、花立山荘のトイレをみて、ちょっと行きたい気もしたが、すくなくともこの下の小屋(堀山の家)までは大丈夫だと思いそのまま下る。
ところが、堀山の家には「ここには公衆トイレはありません」という貼り紙があった。しかたなく、そのまま下る。
こうして、その下の駒止茶屋につくと、トイレがないかと裏に回ってみた。そこには昔ながらの、でもバイオ処理されているというトイレがあった。なんとかギリギリ間に合った。
と、なぜトイレの話をこうして書いているかといえば、ここでベースレイヤーのボクサーパンツとタイツの登場だ。最初にタイツは前開きと説明した。では、ボクサーパンツの方は? 実はこちらも前開きだと勘違いしていたのである。
だから、いざ小用をしようとした時にどうしても前が開かずに慌ててしまったのである。ただ、このときは、あわてていたので見つけられなかったのだとばかり思っていた。帰ってから洗濯する時によく見たら、前は閉じられていた。残していたタグにも「前閉じ」としっかり書いてあった。
なお、ぼく自身おお汗かきではないため、おたふく手袋製のドライナミック(スルーという網目の細かい方)もどきは十分に機能を発揮してくれた。それでお値段は3分の1なのでぼくの体質ではコスパ最高だといえる。
下りは登りとは違う雑事場ノ平から大倉高原テントサイト、大観望を経由して下る。
午後3時、大倉バス停に到着、下りは標準タイム通りだった。
最後に
実はもう一つテストをしていた。
それはショルダーハーネスにポーチとドリンクホルダーを装着したことだ。
これまでポーチはストラップで肩に斜めにかけていた。ドリンクホルダーはショルダーハーネスの下側にぶら下げていた。
とくにこれまで不自由は感じなかったが、前に取り付けるとバランスがよいと聞いたので試してみたのである。
結果は、ドリンクホルダーは○。ショルダーポーチの方は△といったところ。
ショルダーポーチの方は、中身を落としそうで(実際に落とした)扱いが難しい。つまり入れる中身を選ぶのである。
当然、ポーチの形も入れるものによって考える必要がある。中身を落とさないためには上開きのものが良いだろうと思うが、中を覗き込まなくてもいいようにスマホや地図など大きめのものが適しているだろう。
横開きであれば、何か一つのものだけを入れるのが良いと思われる。
また、雨の時には当然濡れるので、濡れても困らないものを入れる必要がある。
その点、ショルダーポーチだと、雨の時はレインウェアの下にすることで濡れずに済む。
まあ、こうしていろいろと考えて試してみるということがもう趣味の世界で、そのことを楽しんでいる自分がいる。
2023年がこうして暮れようとしている。
後何年登山を楽しめるのだろうか。
今年はロードバイクにはあまり乗らなかったが、体力作りのためにも来年はたくさん乗りたい。
みなさまも良い年をお迎えください。
では、このへんで
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