お芝居を見に行って来た。
なんと舞台は、今は閉店している喫茶店。
客と役者がおなじ舞台にいる。
だから観客は20名。
とてもユニークな舞台だった。
神田の純喫茶
海賊のように飲む会 純喫茶公演っていったい何?
公演案内をもらったとき、そんな感想を持った。
小劇場には慣れたけど、喫茶店でどうやってお芝居をするのだろう。
ライブハウスみたいに前方を空けてそこを舞台にするのだろうか。
案内によれば、そこは元喫茶リンダというところ。
作品は、いつものようにコメディーで、昭和のノスタルジーやクリスマスを感じるものらしい。
神田といえば、定年前にやっていた写真で、月に一回先生に作品を見てもらったり、いろいろな話を聞かせてもらう会(写真塾)が竹橋であり、会の終了後は決まって神田まで歩き、そこで飲みながら友好を深めた懐かしい場所である。
12月半ば、その神田の地に4年半ぶりに訪れた。
海賊のように飲む会 純喫茶公演「あの頃の思いの気持ち悪いオルゴール」
公演は12月15日(金)から17日(日)までの3日間行われ、15日はソワレ、16、17日はマチネとソワレの公演がある。
当初の案内では16日と17日の2日間だったが、どうやらもう1日追加されたようだ。
ぼくが観に行ったのは16日のマチネ。
写真入りの道案内にしたがって路地を曲がり、またその先の路地に入っていくと、すでに20名近くのお客さんが並んでいた。
そこは、まさに昭和の香りがぷんぷんする喫茶店だった。
入り口を入って正面にカウンターがあり、そこで料金を払い、飲み物(コーヒーを注文)を受け取った。
店内は営業している喫茶店と変わらず、テーブルはそのまま動かしてはいないようだった。ただ、座席の一部が壁際に置かれて、中心を向くようになっていた。
中央のテーブルではオリジナルのCDやTシャツの物販を行っていた。だからそのテーブルには座れなかった。
つまり、そのテーブルを中心にお芝居が展開していくのだろうと推測できた。
そして、その物販でははじめなかなか買い手が現れなかった。それが、一人がTシャツを買い、劇団員たちが感謝したりTシャツの説明や在庫の話などをしていると、また一人と買い手が現れた。そうして劇団員のドジ話などをしているとまた買い手が現れ、次々とTシャツが売れていった。
#想キモ 2日目終わりました😭
— 西村千夜 (@chiya_official) 2023年12月16日
なんと先程の夜公演で
海賊コーヒーTシャツが完売しました‼️
限定Tシャツを持ってる方はレアです✨
皆さん素敵な差し入れもありがとうございます🥹
明日で昭和の世界を感じれるのは最後。
もう一度見たい方、飛び込みで見たい方は
お早めにご連絡ください✋🏻 pic.twitter.com/LqOqysvtKG
残念ながらCDの売れ行きは良くなかったが、こちらの方は劇団員らがパロディーソングを歌っており、似ているようで違う曲を真面目に歌っていてそれなりにお金をかけたと思われる仕上がりとなっている。申し訳ないが当方は舞台を観にくるという応援だけで勘弁願った。
役者さんたちは、すでに衣装に着替えていて、その格好で芝居が始まるまで物販やらツナギの話などをしてくれて、普段に近い顔になっている。
そしてお芝居が始まる。
さっきまでの普段の顔ではなくなって、みな役者の顔に変わる。
脚本はいつもの通りで、なんだかよく話がわからない「?マーク」がたくさん付く展開が続き、「?」がいくつか溜まったところでそれが一つずつ消えていくという感じで進行する。
随所にギャクなどお客さんを笑わせようとする旺盛なサービス精神が心憎い。ときにはまったく受けなかったりもするが、そのお客への心遣いが嬉しい。
今回はいつものはちゃめちゃが抑えられていて、いつもよりはわかりやすくて助かった。いつもは理解できないところがいくつも残ってしまうのである。
作・演出はいつもの通りカワモト文明氏。コメディの常道で、観客を笑わせておいてそのなかにこころがジーンとする話を持ってくるというものだ。観客であるぼくはその誘いのままに笑い、そして思わず涙を流す。
また、謎が解けるにしたがってそれを理解した自分というものに酔うことができてそれが心地良くなってくる。
おそらくこうしたこともすべて計算して脚本が書かれているのだろう。けれど、ときにはアドリブらしき場面を挟んで、ホッと息をつかせるというのもいつもの海賊の手なのである。
もちろん、観客側もその演出に乗って楽しむつもりで来ている。ここは楽しんだものがちなのである。
今回の作品は現在と過去が同時に進行し、それが区別なく同じ場面に登場するという量子力学のようなSFのような展開だった。
クリスマスの1週間前に喫茶リンダの従業員に関わる人たちが集まってくる。それが38年前と重なって物語が進行する。
昭和の雰囲気を残したままの喫茶リンダ。それがそのまま舞台装置となって昭和の時代を振り返らせる。お芝居を見ながら自分自身の昭和が重なって、懐かしい気持ちになった。
主演の下平さんはさすがに心理学の先生なので、今回のようなうまく社会に溶け込めない性格の役をまるで本当にそうなのかもと思わせる演技を見せてくれた。
また、主役の若い頃を演じた松尾レナさんの演技では、とくに顔の表情がとてもよかった。
お芝居の最後では、すべての登場人物の関係が明かされてすっきりとして純喫茶の舞台の幕が下された。
最後に
お芝居が始まった直後に若者が一人入って来て入口の近くの椅子に座った。
あれはいったち誰だろう?
役者さんなのか。
そんな疑問が終始頭の中を巡っていた。
結局、その若者は役者ではなかった。
もちろんお客である確率の方が高いとは思っていた。
だが、ひょっとして・・・と思わせられてしまうのである。
そんな演出家がカワモト文明という人なのである。
今回も涙を流してしまったが、いつものように暗転した最中に涙を拭くことができず、衆前で涙を見せてしまった。
だが、だあれもこちらを見る人はいなかった。
まあ、そんなもんでしょうね。
では、このへんで
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