前回はスーパーカブに乗って長い長いアプローチについてだった。
今回はいよいよ登山開始だ。
まあ、あまり順調とはいかなかった登山だったけれど収穫もあった。
登山する方のなにかの参考となれば幸いです。
キャンプ場の朝は早い
長いアプローチではあったが、それほど疲れは感じていなかった。
午後4時半に宝台樹(ほうだいぎ)キャンプ場に到着。受付を済ませると早速テントを設営した。
数分で設営が終わり(モンベルムーンライトは設営が早い)、キャンプ場内を偵察がてら散歩した。
受付のある入り口近くがフリーサイトで奥がオートキャンプ場となっている。左手奥の山側にはバンガローが建っている。
奥のオートキャンプサイトまで行ってみる。そこを越えると森の中だ。道はずっと先まで舗装されていた。
向かっている方向に明日目指す武尊山があるはずである。ときどき前方にピークが見えたが、それが武尊であるかどうかはよく分からなかった。
途中まで行って引き返す。バンガローとフリーサイトの間の道を通って受付のある建物の裏手に建つロッジの前まで行ってみる。
受付の係の人が、このロッジで入浴できると説明していた。もしも温泉だったら、明日下山した後に行ってみようと考えた。
そこで、ロッジ入り口まで行ってみたが、温泉とは書かれていない。念の為スマホで調べてみた。
すると、坂の下から小学生くらいの子供が近づいてきた。
「すみません。ここは温泉ですか?」
「いまちょうどそれを調べているところなんだ。入り口のところには温泉と書かれていないんでね」
後から両親がやってきて、子供と一緒に入口からロッジの中に入って行った。
たしかに直接聞いた方が早いかもしれない。
だが、もし温泉ならそれを売り物にしてちゃんと目立つように書いておくだろうとも思った。
坂を下り、受付に立ち寄ってここから近い日帰り温泉施設を尋ねてみた。
「一番近いのは宝川温泉です。水上温泉まで行けば公共の施設が2軒ありますよ。宝川温泉はちょっとお高いので」
と、白いTシャツを着た筋肉質の中年のおじさんがそう答え、水上温泉までは30分ちょっとだと教えてくれた。テンガロンハットみたいな帽子をかぶっていてカーボーイみたいだった。
公共の施設の名前を何とかと言っていたがよく聞き取れなかったが、後で調べればいいやと思った。
夕食を早く済ませて早く寝ようとしたが、昼に食べたざるそばの大盛りがまだ腹に残っているようでちっとも腹が空かない。それでもコンビニ弁当を無理やり腹に詰め込んで、食後2時間も経たないうちに横になった。
一応スマホの目覚ましをかける。
その後何度か目が覚めたが極め付けは3時過ぎに鳥たちが鳴き始めたこと。
外はまだ真っ暗だ。
じつはスマホの目覚まし音は鳥の鳴き声で、それに体が反応したのだ。目覚ましを止めようとスマホを探してしまった。
目を覚ましてみると、山の奥に向かって車の走る音が次から次へと聞こえてくる。どうやら登山者が駐車場を確保するために未明から向かっているものと思われた。
こちらの目覚ましは5時にセットしてあるのでまだ1時間半ほどは眠ることができる。もし眠れなくとも体を横にしておくことは重要だ。なにしろまだ体力がついていないのだから。
そんなふうに考えていたらいつの間にか眠っていて、結局本当の目覚ましの鳥の鳴き声で目覚めたのだった。
武尊神社下の駐車場から登山開始
6時半、いよいよ登山開始だ。
武尊神社下の駐車場は、車ぎりぎり1台分が空いていた。そのほかはすでに満杯で、駐車場に停められなかった車が手前の道路脇の空きスペースに駐車していた。
予定では6時スタートだったが、テントでお湯を沸かしたりトイレにいって軽量化をはかったりしていたら結構時間がかかってしまった。朝食は前日に買っておいた稲荷寿司と海苔巻きなので簡単であったのにも関わらずだ。いったい何をしていたのか。
さて、駐車場から武尊神社までは50メートルくらいだろうか。ここで舗装路が終わる。その先は砂利道だ。
この砂利道林道を歩いていると後ろから四駆がやってきた。
「ここまで車? 許可車だろうか」とナンバーを見ると「長岡」とある。地元の車ではない。
さらに歩いていくとその先に駐車場(ただの空き地)があり、車が10台くらい停めてあった。もう後数台は停められそうだ。さっきの長岡ナンバーはいちばん手前に停めてあった。
この辺りから道幅が狭くなって、軽のジムニーがやっと通れるくらいの幅と荒れ具合だった。そしていくらか傾斜も急になっていく。
歩き始めて30分、剣ヶ峰山との分岐に着いた。ここから左に入り、手小屋沢避難小屋に向かっていく。
ここからがいわゆる登山道で、地形図によれば手小屋沢避難小屋分岐までの3分の2が比較的傾斜が緩やかな道で、そのあとの急斜面を登れば須原尾根に出る。
ところが、この登山道に入ると急に腹が痛み出した。トイレに行きたいような行きたくないような変な感じである。登る前にトイレは済ませているが下痢をしたら大変だ。おそらく慣れない早起きで腸がびっくりしているのだろう。しばらく我慢していたら治るだろうとそのまま登り続けた。
今日は暑くなるという予報が出ていたが、ずっと樹林帯の中なので案外涼しい。もちろん水上で高原だということもある。
登山道は全体に湿っていた。ただ、ぬかるむというほどではなかった。
ほぼ標準コースタイムで小屋沢避難小屋分岐の須原尾根に到着。尾根までの急登ではしっかり汗をかいた。
その分岐では一人の登山者が休んでいて、ぼくが到着したらすぐに歩き始めた。
こちらも少し休憩だ。すると、さっき追い抜いた夫婦連れがあとから現れたのでこちらも歩き始める。
ありがたいことにここの尾根道も樹林帯の中で直射日光が遮られている。すこし平坦な道の後、細かい起伏が続く。
その登りの時に休んでいる人に追いついた。するとその少し年上と思われる男性は
「あぶら・・・」とつぶやいた。
「何ですか?」
「あれですよ、あぶら・・・」
ストックで目の前の木を指すと、「いや、それじゃなく向こうのやつ」
「あれは食べれるんですよ」
「どうやって食べるのですか?」
「天ぷらにするよ」
結局、あぶらなんとかの名前はわからなかった。
(後から調べると、たぶん「あぶらこ」(ウコギ科)というものだと思われる。「こしあぶら」ともいうらしい。味はたらの芽ににていると書いてあった。)
さらに登っていくと岩場が現れた。ここが「行者ころげ」といわれるところだろう。
その後もいくつか岩場が現れ、どれも鎖が付けられていた。ぜんぶで3箇所か4箇所くらいあっただろうか。
この岩場を越えると、木々はほとんどなくなって明るい尾根道になった。すると太陽が直接体を焦がし始めたが、傾斜は少し緩くなった。道の両側にはシャクナゲの花が出迎えてくれた。
登頂
そんなふうにして歩いていると、いつのまにか武尊山頂上に着いた。なによりも多くの登山者が腰を下ろしていたり写真を撮っていることで頂上であることに気付かされたのである。
時刻は9時54分。標準タイムよりも少しだけ早いペースで歩くことができている。スタートの遅れは完全に取り戻していた。
山頂からは、同じ位置ではうまくいかないが、山頂を小さく移動すれば360度の展望が開けている。北を向けば至仏山、平ヶ岳が見えている。南には赤城山、東には日光白根山、その間には皇海山が見える。西側は少し靄っていて同定はできなかったが谷川岳が見えているはずである。
腹は全く空いていなかったが、ここでカレーリゾットを食べた。ポットのお湯を注ぐだけである。南東にはこれから向かう剣ヶ峰山の尖った山頂が見えている。だからおそらく山頂にはのんびりできるスペースはないだろうと思ったのでここで食べておくことにしたのだ。
腹の痛みの方は相変わらずで、ときどき差し込むように痛くなる。食べたら治るかと思ったがそんなことはなかった。
予定通り1時間ほど休憩した。10時50分に歩き出す。いったん東方面に向かい、すぐに西方面に向かっていく。剣ヶ峰山が正面に見えたら急斜面のガレ場の下りになる。石を落とさないように慎重に下っていく。
下の方には歩いている登山者がよく見えている。剣ヶ峰山までの尾根道には高い木がなくハイマツ帯となっている。シャクナゲも混じっている。
連休のせいで登山者が多かった。こちらに向かって登ってくる登山者も多かった。
長くなったので次回へつづく。
なお、収穫についても次回で。
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