Hakuto-日記

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病院がもうけてどうするの? 【病院の裏事情】

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久しぶりに句会を行うことができました。

会場に近い、以前勤めていた病院の跡のまえに立つと様々なことが脳裏をよぎりました。

「病院は儲けるところじゃない」

そのように言ったひとがいました。

確かに患者の病気を治すことが目的であることには変わりません。

(ただ、患者が治りたいと思うことが必要だとは思います。)

あのとき、私は反論しました。

病院がつぶれてしまっては患者が診られなくなるのじゃないかと。

結局、話は平行線でした。

そんなことを思い出しながら、今回は病院の裏事情について書いてみようと思います。

 

久しぶりの句会

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風は少し冷たかったけれど、春の光があふれる快晴のもと、5ヶ月ぶりに句会を行いました。

参加者は、ご指導いただく先生をはじめ12名。この中にはすでに先生級の方も含まれています。

 

そんなメンバーが5ヶ月ぶりに集合。

 

昨年の新型コロナウイルス感染症の拡大により、これまで当たり前と思っていたことが、じつは当たり前ではなかったことに気づきました。

 

それまで毎月1回必ず句会を行なっていて、たまに用事が重なって自分自身が欠席することはありましたが、必ず句会は開催されてきました。いつでも参加できるという安心感(甘えともいう)がありました。

 

当たり前にできた句会が行えなくなるなんてことはこれまで考えたこともありません。

 

この日の句会は淡々といつもと変わらずに進行していきました。
だれも大げさな喜びを表すようなことはありませんでしたが、それぞれが句会ができる喜びを噛みしめていたように思います。

 

以前勤めていた病院跡の前に立ち

さて、久しぶりの句会なのでこの日はいつもより少し早く家を出ました。

自転車で駅に行き、いつもの駅に降り立ちます。

 

ここは、むかし出向で働いた病院があった場所です。

いまはもう閉院し、建物も取り壊されていてただの荒れ野原、というか荒れた丘となっています。

 

しばらくそのままの状態で、私道のあった入り口が工事用のフェンスで仕切られています。

 

そのフェンス越しに、茫々としていて元気よく伸びている草むらを眺め、当時あった建物を思い浮かべていたりしました。


出向したのはもう20年以上も前のことになりますが、あのとき色々苦労したことなどが思い浮かびます。

 

病院での仕事は会計の仕事でした。
みなさんが目にする会計窓口は、たいていは医事課という部門が行っています。

 

医事課での仕事は、医者の出したオーダー(行った処置とか薬の処方など)を記録し、患者負担額を集金するとともに残りを社会保険診療報酬支払基金を通じて健康保険組合に請求する仕事です。

 

これに対し、会計は病院施設の電気、ボイラー、人工呼吸器のガスなどの管理のための費用や、医療機器や医療材料、薬剤などの購入にかかる費用を管理する部門です。

 

収入の大半は診療報酬ですが、他に駐車場の収入、売店の出店料などの収入もあります。

 

しかし、会計の一番大切な仕事は、収入を増やし無駄な支出を抑えてまずは赤字にならないようにすること。そして医者や看護師、技師など病院で働く人たちにしっかりと給料が払えるようにするということです。

 

毎月きちんと給料が支払われるという当たり前のことが行われてはじめて安心して働くことができるのです。


ですから、給料を計算するのは会計とは別部門ですが、給料計算が間違うこともあってはならないことなのです。

 

そして会計は、給料日に支払えるだけのキャッシュを確保するという資金管理も重要になってきます。


こうした日々の支払いに伴うキャッシュ管理とともに、病院全体としての収益を上げる。そうしたことが会計の重要な役割となります。

 

ここで、「そんなに収益をあげてどうするの」という疑問がでてくると思います。

 

けれど、病院がなくなると困りませんか。

 

病院が収益をあげるには

首都圏で、たくさんの病院があるところならあまり影響はないかもしれませんが、病院の少ない地域ではどうでしょうか。

 

そして、ちゃんとした検査を受けたいのに最新の検査機器がなくて遠くの病院まで行かなくてはならない場合もあるでしょう。
だから、病院が潰れないため、そして最新の医療機器に更新していく費用が必要です。

 

そればかりではなく、建物が老朽化したら建て替えるための資金も必要になるのです。

 

こうした病院経営の先頭に立つのは病院長です。ところが、病院長は医者しかなれません。


ところがというのは、医者は病気の治療に関しては勉強してきていますが、経営についての勉強はしてきていないからです。なかには経営手腕を発揮している病院長もいます。そういった病院は人気も高く収益を上げています。

 

けれど、そうした病院長はまれです。

 

そして、その病院長をサポートするのが事務部長です。

 

ところがこんどは事務部長が医療に詳しいとは限りません。
ですから、病院長と事務部長がうまく協力できることがその病院の経営を左右します。

 

そして会計という部門は事務部長をサポートする部門と言えます。


ところで今は病院にかかると診療報酬の明細表がもらえますね。
そこには点数というものが載っています。

 

この点数とは厚生労働省が決めている診療費の単価で、1点が10円になります。
この点数に10円を掛けたものが病院に入る収入です。


そしてその金額の患者負担(一般は3割)が直接病院から請求されることになっていて、残りが先ほど述べた健康保険組合に請求されるものです。

 

このように診療にかかる単価が決められているのです。

そしてこの単価が2年ごとに見直しされて、これにより収入が大きく変わってきます。

 

厚労省がどうして2年ごとに見直しを行うかというと、厚労省の医療計画に沿うようにこの診療報酬を利用しているのです。


たとえば、初診のとき大病院に行くと選定療養費という特別な料金がかかります。これは大病院に患者が集中するのを防ぎ、重篤な患者を待たせないという目的があります。

 

一方で、大病院に患者が集中すると個人の小さな開業医のところには患者が来なくなってしまうため、開業医を守るという別の目的もあるのです。

 

そのほか、看護師の数を一定の基準まで増やすと加算をつけるなどして手厚い看護を行おうとします。そして、ある程度まで目的が達成できるとこの加算をやめて、また次の目的のためにこの加算をつかいます。

 

こうした加算のほか、補助金制度なども利用して国の目指す医療体制を整えようとしています。

 

ようするに、病院にとっては厚労省の方針に沿った運営にその都度合わせていかないと、経営が難しくなるということです。

 

健康保険組合の負担

現在、私のように働いていないで国民健康保険に加入している場合、働いていいる時よりも保険料が安くなってほとんど同じサービスが受けられます。

 

これは病院にかかる患者にとってはありがたいことですが、国民健康保険を運営している自治体では赤字になってしまいます。医療費のうちの7割の請求が来るからです。

 

そこで、、働く人たちでつくっている健康保険組合がお金を拠出して退職者医療制度を支えています。

なお、次の条件の方が退職者医療制度に加入することになります。

  • 国保に加入している人
  • 65歳未満の人
  • 厚生年金や共済年金などの年金を受けられる人で、その加入期間が20年以上、もしくは40歳以降に10年以上ある人

こればかりではなく、後期高齢者数の増加などによる後期高齢者支援金や前期高齢者納付金などの拠出金の増加もあって、多くの健康保険組合では財政が逼迫しています。

 

すると、保険料を上げざるを得なくなります。

 

そうなると働く人たちの給与から自動的に保険料が差し引かれ、ますます手取りが少なくなるという構造になっています。

 

こうした医療財政のもと、大幅な診療報酬単価の引き上げは難しく、ほとんど変わらない財政の中をやりくりして、つまり診療報酬を増やすものと減らすものを変えながら、ときに加算を作ったり無くしたりして日本の医療体制を整えるために政策的に行っているということです。

 

このやり方がいいとか悪いとかといっていたら病院の経営は立ち行かなくなります。

 

病院が儲ける別な方法

ただし、病院が儲ける方法は他にもあります。

それは、医療ではない分野で収益を上げるという方法です。


たとえば健康診断などで多くの人を集めたり、人間ドックなどに付加価値をつけて高い単価で検査を行うなど、診療報酬にしばられない分野で収益をあげるのです。

 

こうしたものを含めた全体で収益を上げている病院というのは、すぐれた病院であるということもできると思います。

 

こうした病院では最新の医療機器を備え、これにより診断の精度が上がるからです。

 

最後に、私が以前勤めていた病院がなぜ閉院したのかということについて少し触れたいと思います。

 

それはとある議員からの圧力により救急医療を始めることになったのですが、病院職員への説明がちゃんとなされていなかったことなどから、救急を行うための職員を別に雇ったりすることなど救急体制づくりに伴う費用がかさみ、大幅赤字となったことによるものでした。

 

その後、順調に回復してはいたものの、近くに市民病院ができたことなどから、私が前の職場に戻ったあとに閉院となりました。

 

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まとめ

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

あまり私たちにはよくわからないのが医療財政などにかかわる裏事情だと思います。

病院職員でも、医療現場最前線の人たちにはあまり関心のないことだとも思われます。

 

今、新型コロナウイルス感染症により医療制度が崩壊しそうだという悲鳴のような声が聞かれますが、こうした受け入れ態勢を整えることは厚労省の仕事であると思います。

 

実際には医療資源はあるものの、受入れ病院が限定されており、その限られた病院で医療崩壊が起きてしまいそうになっているということです。

 

つまり、コロナ患者を受け入れているのは大病院で、それは医者も看護師も定められた給料で働いています。いってみれば割に合わない仕事を、人の命を救うという使命感で、さらに自分が感染して亡くなるかもしれないというリスクまで抱えてがんばっていてくれています。


本当に頭が下がります。

 

これに対して、医師会に所属している開業医などは、ここ1年、クリニック内でともかくコロナ感染を発生させないことが精一杯ということだったように思われます。ようやく最近になって開業医の医師が検査センターなどで検査が行えるようになったところです。


また、コロナ患者を受け入れた病院ではそのほかの患者が減って職員への給料を減額するなどというニュースもあります。

コロナ患者に直接関わる看護師の50%超が給与減【看護師の労働環境 実態調査】

 

なんとか知恵を出し合って、できれば現場の意見をよく聞いて実効性のある医療体制を整えてほしいと思います。

 

では、このへんで

 

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