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テレビでもネットでもニュースは新型コロナによる医療崩壊の危機をさかんに報道しています。
一方、日本が医療崩壊することはありえないという人もいます。
最近は、マスコミのニュースが偏った報道ばかりするので鵜呑みにはできません。
実際、今年度の医療費は過去に比べて下がっているそうです。
コロナ感染が怖くて病院に行かない人が多いということでしょう。
それでもコロナによる医療崩壊が起こるとすれば、どこかに問題があるのということです。
今回は、そんなことを考えてみます。
新型コロナ、高齢者の致死率が低下
「新型コロナ、高齢者の致死率が低下 治療法の確立、日本人の自然免疫の向上が原因か」
週刊新潮に載った記事がネットのデイリー新潮に掲載されていました。(「週刊新潮」2020年12月10日号 掲載)
記事の主張は次のようになると思います。
- 日本の感染者数で本当に医療崩壊するのか。
- 政府はむやみに怖がる必要がないことを啓発すべきだ。
以上について、次のように説明しています。
まず、感染のピークは既に過ぎていること。
現在、ベッド自体には余裕があること。
イタリアやアメリカは医療崩壊していない(「爆笑問題」太田光氏の発言を取り上げて)。
京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授の弁として「緊急事態宣言を出すというのは、いくつかの意味で間違っています。いま発表される感染者数は、実際の感染日が10日~2週間前。すでに2週間前にはピークアウトを迎え、下降フェーズに入っているので、緊急事態宣言を出す必要はありません」と紹介しています。
GoToトラベルについても、「感染拡大の大きな原因ならわかりますが、そうでない以上、やめるメリットは全然ない。GoToトラベルがよかったのは、ここまでやっても感染は大して広がらないとわかったこと。大丈夫だったことを、政府はきちんと説明しなければなりません」。
そして高齢者の致死率は低下しているとして、新型コロナウイルスの現状について次のように述べています。
- 医療サイドが処置の仕方を理解するようになった。
- 新型コロナウイルスが体に入り、自然免疫が強化された。
- そもそもインフルエンザでも、風邪でも、高齢者のリスクは若い人にくらべれば高い。新型コロナだけが特別ではない。
医療崩壊は起こるのか
ベッド数が不足している状況がニュースになっていますが、この記事では医療崩壊はしないと述べています。
果たしてどちらが正しいのでしょうか。
JIJI.COMでは、「迫る医療崩壊、現場悲鳴 「ベッド空かず」「看護師不足」―限界寸前・新型コロナ」という見出しが危機感を煽っています。
この見出しだけ見ると今にも医療崩壊しそうです。
この記事では、救急搬送で9回以上も受け入れを拒否された患者がいることをあげていました。
一方、こんな記事もあります。
ダイヤモンドオンラインの「医療資源が不足していない日本で「コロナ医療崩壊」が起きる理由」(2021.1.22 4:25)
名古屋商科大学ビジネススクール 原田 泰教授の書いた記事です。
ここでは、欧米や韓国と比較して日本の医療資源が不足していないことをデータを上げて説明しています。
ベッド数は「人口1000人当たり「フランス5.9、ドイツ8.0、イタリア3.1、英国2.5、米国2.9であるのに対し、日本は13.0、韓国は12.4である(OECD.Stat)」
集中治療室(ICU)は、人口10万人当たり「フランス11.6、ドイツ29.2、イタリア12.5、英国6.6、米国34.7であるのに対し、日本は7.3、韓国は10.6である(Niall McCarthy, “The Countries With The Most Critical Care Beds Per Capita” Statista, Mar 12, 2020)」
ここで、
「日本のICUは米国の5分の1であるが、100万人当たりの累積のコロナ感染者数は米国が7万414人に対し、日本は2459人であり、米国の29分の1である。100万人当たり累積の死者数は、米国が1174人に対し日本は32.6人であり、36分の1だ。」
以上のように十分余裕があることを示しています。
そして、「日本の医療関係者の数は、他の先進国並みか、3割ほど少ないだけだ。人口1000人当たりの医師は、フランス3.4、ドイツ4.3、イタリア4.0、英国3.0、米国2.6、日本2.5、韓国2.4である。」
つまり、日本の医療従事者数は米国と大きく変わらない。
そのうえ、コロナ感染者、死者数は米国の30分の1程度という日本の状況です。
では、なぜ、このままだと医療崩壊するとさかんにニュースが煽っているのでしょうか。
そこには病院がコロナ患者を診ると赤字になるから受け入れないという現実があるようです。
つまり、コロナ患者を受け入れても赤字にならないようにすれば、病院がコロナ患者を受け入れ、医療崩壊を招かないということです。
日本では現在、コロナ感染を恐れて病院に行く人が減少しているそうです。
こんな状況で医療崩壊するわけがないとこの記事を締めくくっています。
これでなんだか見えてきました。
医療崩壊しそうだというのは、コロナ患者を受け入れている病院が悲鳴をあげているということ。
しかし、現実に政府あるいは厚生労働省が支援金か診療報酬の加算等を行って、多くの病院が新型コロナ感染者を受け入れ始めるまでは、コロナに感染しないようにしないと、救急車の中で重症化し、へたをするとあの世に行ってしまうこともあり得るということです。
むやみに怖がる必要はないのか
[René BittnerによるPixabayからの画像]
つぎに、本当にむやみに怖がる必要はないのでしょうか。
新型コロナに感染するとどんな症状が現れるのか。
重症化のリスクは? 死亡率はどうなっているの?
さらに最近騒がれている後遺症はどうなのかについてみてみます。
感染するとどんな症状が現れるのか
新型コロナに感染すると、どんな症状が現れるのか。
これは、「新型コロナの症状、経過、重症化のリスクと受診の目安(2021年1月)」
忽那賢志 | 感染症専門医(1/8(金) 8:06)の記事がわかりやすいです。
新型コロナ感染の症状とは、咳、発熱、筋肉痛、寒気、倦怠感、頭痛、下痢、咽頭痛、息切れ、味覚・嗅覚障害など。
風邪やインフルエンザでは稀な新型コロナに特有の症状は、息切れ、味覚・嗅覚障害です。
なお、潜伏期間(感染する機会から何らかの症状を発症するまでの期間)は1〜14日ですが、多くは4〜5日で発症します。
重症化や死亡のリスク
次に重症化や死亡のリスクはどうなっているのでしょうか。
流行早期の中国での4万人の感染者のデータによると、約2割弱が重症化し、「2割のうち全体の約5%の症例で集中治療が必要になり、約2%の事例で致命的になりうる」ということになるようです。
日本での死亡率を国立感染症研究所のデータで見てみます。
全対象患者12,599例のうち、60歳以上は4,732例(37.6%)。
死亡率は全対象患者では4.2%(529/12,599)、
そのうち、60歳未満0.3%(23/7,867)、60歳以上10.7%(506/4,732)。
60歳以上の基礎疾患のない患者の死亡率は4.0%(45/1,135)
基礎疾患のある患者の死亡率は12.8%(461/3,597)。
年齢群別死亡率は以下の通りです(表1)。
基礎疾患なし場合、60歳未満0.1%(3/5,879)、60~64歳1.6%(5/304)、65~69歳1.6%(5/304)、70~74歳3.7%(8/215)、75~79歳5.3%(9/171)、80歳以上12.8%(18/141)。
基礎疾患のある患者の場合、60歳未満1.0%(20/1,988)、60~64歳4.4%(21/472)、65~69歳7.2%(40/554)、70~74歳7.5%(49/654)、75~79歳12.8%(71/553)、80歳以上20.5%(280/1,364)。
「対象患者:12月2日時点で本レジストリに登録された情報のうち、2020年9月30日までに入院し、以下の主要項目〔入院時基本情報(患者背景、曝露歴)、併存疾患、入院時の徴候・症状、入院中合併症、入院中薬剤投与歴、退院時転帰、入院中治療歴〕の入力が完了した患者(死亡退院を含む)、433施設12,599名を対象とした。(出典:国立感染症研究所)
以上のことから、60歳以上で基礎疾患がある場はリスクが高いことがわかります。
さらに、高年齢になるほど死亡率が高まります。
しかしこれはどんな病気でも当てはまることなので、当然と言えば当然です。
ここでいう基礎疾患とは、心疾患(心筋梗塞・うっ血性心不全)、末梢血管疾患、脳血管障害、片麻痺、認知症、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患:COPD、慢性肺疾患、気管支喘息)、肝機能障害、腎機能障害、高血圧症、高脂血症、糖尿病、肥満、消化性潰瘍、固形癌、リンパ腫、白血病、膠原病、HIV/AIDSです。
これらの基礎疾患が一つでもあれば基礎疾患のある患者としています。
特筆すべきは、この死亡率は第一波の時の死亡率に比べて大きく減少していることです。
例えば70-74歳では、基礎疾患がある場合の5月までの死亡率14.3%が6月以降は2.2%まで減少しています(表2)。
(出典:国立感染症研究所)
歳をとればたいていこれらの基礎疾患の一つや二つ持っていたりします。
だから、60歳以上の方はコロナに感染しないよう気をつけることが大切ということになります。
しかし、医療提供者側もコロナに対する対処の仕方が分かってきたことなどで死亡のリスクは大幅に軽減されていることがわかります。
後遺症について
さて次に、後遺症はどうでしょうか。上記の忽那賢志(くつなさとし)医師の記事によれば、
「新型コロナから回復した後も何らかの"後遺症"の症状が続く方がいることが分かって」いるということです。
海外からの報告では、特に倦怠感や呼吸苦、関節痛、胸痛、脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下などの症状が報告されているそうです。
その他、咳、嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、味覚障害、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状がみられるようです。
脱毛については全体の24%でみられ、発症から1ヶ月後から出現し、4ヶ月後くらいまでみられることが分かっているとのことです。
それに加え、再感染の報告もあるということです。
こうしてみると、初めの記事のとおり、むやみに怖がる必要がないことは確かなようです。
しかし、命は助かったとしても後遺症に悩まされる恐れがあることから、やはり感染しないに越したことはないですね。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
これからは、インフルエンザウイルスと同じように新型コロナウイルスとも共存していかなければならないと腹をくくる必要があります。
ウイルスを大量に体の中に入れないために手洗いをしっかりやる。密室での宴会はしない。
そして自然免疫が弱くならないように気をつける。
そのためには体を冷やさない。睡眠を十分にとる。そして適度な運動を行う。
高齢者は、風邪の症状が現れたら、なるべく早くかかりつけ医か地域の医療機関に相談、または受診する。ちなみにここでいう高齢者とは60歳以上の方です。
まあ、やみくもに怖がってもしょうがないので、おたがい自分にできることをやっていきましょう。
では、このへんで
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