老後の長〜い時間をどう過ごしたらいいだろう。
睡眠時間や食事、入浴の時間などを除くと、少なくとも1日10時間は自由時間があります。
1年で3,650時間。人生100年時代ですが、ここは90歳まで生きると仮定して60歳定年の場合30年で109,500時間、65歳定年になったとしても25年あるから、91,250時間も余暇の時間があることになります。
あなたはその時間に何をしますか?
定年で仕事を辞めて家にいることになった男性の場合、「さて、好きなことをしよう」とばかり色々やってみるものの、そのうちにやることがなくなって家でゴロゴロ。
すると、奥さんからは邪魔者扱い。おまけに元部下にも付き合ってもらえない。次第に社会から遠ざかり、挙げ句の果ては「自分は生きていても社会の一員ではない。いてもいなくても何も変わらない」と定年後うつに。
そうなってから、何かを始めたいと思うでしょうか。
皆がみなそうなるとは限りませんが、可能性はあります。
なにごとも準備が大切。辞めてから何をしようではなく、仕事をしている時から少しずつ準備をしていることが定年後の安心を生むことになります。
今回は、わたしが20年余り続けている「俳句」を、そんな定年後の時間の使い方の一つとして紹介します。
大人の趣味のひとつとして、いつまでも続けられる俳句は一つの選択肢になると思います。
この紹介記事は、こんな人に向けて書きました。
- 「俳句でも始めてみようかなあ」とばくぜんと考えている人。読めばどうやって始めたら良いかがわかります。
- 俳句と似た世界の趣味を始めてみたいと考えている人。読めば参考になります。
- 俳句に興味がある方。読めば俳句の歴史がわかります。
【目次】
定年後に何をしたらいいのか
定年後、何をしていいのかわからないという言葉をよく聞きます。だから、再雇用に応じる人も多くいるようです。
せっかく仕事の重責から解放されて、「これからはやりたいことをやるぞー」と思っては見たものの、いざ、何かやろうとすると何をしたらいいのかわからない。そうしていつの間にか毎日テレビを見て過ごす日々。
オレは絶対そんな風にはならないぞという方、今、何かに熱中しているものはありますか。あるなら大丈夫です。けれど、今は仕事に忙しくて、そんな暇はないという方、そういう方はずっと仕事をしていたほうが幸せです。
だって、定年後に急に新しいことを始めようとしてもうまくいかないことの方が多いからです。あ、これは男性の場合です。女性は仕事をしながら家事や育児をこなし、人とのコミュニケーションも上手な方が多いので、歳を取ってからでも新しいことを始められますね。
だからとくに仕事人間の男性のあなた、あなたの人生は定年で終わりではありませんよ。人生100年時代、今後65歳で定年退職をするとして、再雇用で70歳、あと30年どうしますか。もちろんそのために資産など生活のためのお金は準備しておく必要がありますが、人間、生活していればいいというのもではないですよね。生活の中に楽しみがなければ人生も楽しくありません。
その定年後の楽しみを定年前から作っておこうというのが私の意見です。
俳句をやってみよう
俳句は、あまりお金をかけずに楽しめるので、定年後の趣味にはぴったりだと思います。そして、定年になった時から始めるのではなく、現役時代から始めておく方が、ぜったいに長続きすると思います。
そういったことを納得していただけたらと思います。
だから、俳句の作り方については一切触れておりません。それは、コツコツ勉強してから始めるのではなく、さっさと句会に入ってそこで教えてもらいましょうというのが早道だと思うからです。
また、あくまでも趣味としての俳句で、文学作品として今まで世に出ていない優れた句をものにしたいという場合は、人と群れないで孤独に作品を作り続けるというのもありだと思います。
けれど、老後の趣味としての俳句は、人と群れながらその中で個を活かすというものです。ですから、そのつもりでお読みください。
俳句を始めれば感じられる良いこと
俳句を始めれば感じることのできるメリットを箇条書きにしてみました。
- 定年後に時間ができてその暇つぶしになる。
- 月に1回は句回に参加することで、外に出て家族以外と話ができる。
- 頭の体操になる
- 知らない言葉が覚えられる
- 入選するとうれしい
- 俳句を考えている時、創造的な感覚を得られる
- 見て感じたことを追体験できる
- 無いことを句にするという逆の発想ができる
- 句会などに参加することにより、社会の一員であることの確認ができる
- 作品が他の人からの共感を得られるとうれしい
どうですか。大きく分けると、
1 暇つぶしができる
2 社会参加ができる
3 自己肯定感を得られる
4 頭の体操になる
5 記憶の定着率が高くなる
以上のようになるかと思います。
なかなかいいですね。自分でもなるほどと思ったりしてます。
少しだけ、自身の俳句歴
これまで自転車日本一周のことばかりブログに書いてきましたが、もうかれこれ20年余り続けている俳句にもこの辺で触れておかねばなるまいと思いました。
私自身は、へたくそです。
でも、たまに特選に入ったりすることもあります。するとまたやる気が出ます。
始めたきっかけは、病院に出向(事務職で4年ほどいました)したとき、病院の中で力をもっている看護師長の顔と名前を覚えるのに都合が良いという打算から、たまたま誘われた句会に入りました。
その句会は、高浜虚子の子孫と縁のある会で、看護師長、看護主任、検査技師の方々がメンバーとなっていました。一時は医師も入っていたそうです。
はじめはそんな職場のサークルからスタートしました。
選に入らない時は「仕事が忙しかったからなぁ」と自分をごまかし、特選に入ったときは「ひょっとして才能あるんじゃない」と自惚れてこれまで続けてきました。
そんなサークルであることから、この句会の他に虚子の流れをくむ「花鳥」という俳句結社の同人となっています。
俳句を始めることのデメリット
メリットばかりでなく、デメリットも箇条書きにしてみました。
- 句会で投句時間まで時間がないことにあせる
- 誰にも自分の句が採ってもらえない寂しさを味わうことがある
- 仕事が忙しいと俳句を作る余裕がなくなる
- 俳句歳時記と辞書、または電子辞書が必要になる
- 句会や結社への会費が必要になる
- 感じたことを伝えることに初めは抵抗がある
ちょっと少ないですか?
あまり浮かばないのですよね。
まとめると、才能の無さを感じる。お金がかかる。仕事が忙しいと考える余裕がない。思ったことを発表するのは恥ずかしい。などとなりますが、才能のある人はほんの僅かな人。凡人が普通なのだから、これは諦めるしかない。
でもひょっとしたら才能あるかもしれませんよ。そうならラッキーだと思ってください。
お金は、たとえばオートバイや自転車、釣りなどと比べたら安いものです。道具は歳時記と辞書。電子辞書があれば一つですみます。会費はだいたい千円程度。句会参加費は2千円程度だと思います。
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また、仕事が忙しいと俳句が浮かんでこないということもあります。でもそれが、心の余裕を取り戻すことにもなると思うので、無理せず続けていくことが大切です。わたしは、通勤の電車やバスに乗っている時に浮かんでくることが多かったです。
最後に恥ずかしさ。これは最初だけ。あとは気にならなくなります。
俳句の始め方
ここまで読んで興味を持った方、やってみようかなと思ったあなた、次はどうやって始めようかという疑問に答えます。
句会・カルチャースクール
お金と時間に余裕があるのなら、カルチャースクールなんてどうでしょう。私の結社でもカルチャースクール出身の方がいますし、とてもお上手でよく入選しています。ネットで検索してみてください。
また、あなたがお住いの地域にも句会をやっているところがあるかもしれません。細かい指導はないかもしれませんが、俳句の基本は身につけられますし、句会に参加すること自体がモチベーションを高めてくれます。これもネットで「地域名 俳句会」で検索してみてください。
歳時記を買うのは、それからの方がいいでしょう。角川書店から発行されているものと、三省堂書店から発行されているものでは取り上げている季語が少し違います。入会する時にどんな歳時記を買うべきかを聞いてから購入しましょう。
なお、どちらも入っている電子辞書もあります。
合本俳句歳時記 第五版 | 角川書店 |本 | 通販 | Amazon
ホトトギス新歳時記 第三版 | 稲畑 汀子, 稲畑 汀子 |本 | 通販 | Amazon
俳句結社は、全国に1000くらいあるようです。残念ながら、ネットで検索してもほとんど出てきません。ここは昔風に雑誌で調べる方法が手っ取り早いです。たとえば、月刊『俳句界』は株式会社文學の森から、『俳句』は角川文化振興財団から発行されています。
月刊俳句界 2020年9月号 | |本 | 通販 | Amazon
俳句 2020年10月号 [雑誌] 雑誌『俳句』 | 角川文化振興財団 | 趣味・その他 | Kindleストア | Amazon
コンテスト
新聞にも俳壇の欄があり、無料で投句することができます。NHKでもやっていますね。前記した『俳句界』などでも投句コーナーがあり、入選作を読むだけで俳句の勉強になります。ともかくたくさんあります。
けれどこれは、入選しないと、自分で作った句が他の人からどのような評価を受けているのかを知ることができないのが欠点です。
俳句の歴史と現代の流れ
ここでちょっと、俳句の歴史を紐解いて見ます。
もし、俳句をやってみたいと思った方は、これは知っておいた方がよいと思うことお話したいと思います。
短歌と和歌の違い
和歌とは、漢詩に対する日本の詩歌で、奈良時代には「倭歌」(やまとうた)と言われて、長歌、短歌など4種類があったそうです。それが、万葉集の平安時代になると短歌だけが生き残りました。つまり、短歌は和歌の一種でしたが、現在は和歌と短歌は同じものになっているということです。けれど、一般的には和歌といえば万葉集から鎌倉初期の「新古今和歌集」までをいうそうです。
連歌から俳諧そして俳句へ
江戸時代に入り、短歌の発句の5・7・5を詠んだものを受けて次の人が脇句の7・7を作って次々に続けていくという連歌が、言葉遊びを中心とした滑稽で軽妙な俳諧へと進み、貞門派と呼ばれる俳風が生まれました。
すると、もっと滑稽さを求めた談林派が隆盛となり,そこからひとり抜け出して、芸術性を追求した松尾芭蕉があらわれました。芭蕉が追求したのは発句の芸術性で、以後、発句の独立性が高まりました。そして 明治なって成立した俳句へつながってい きます。
現代の俳句
現在、みなさんが「俳句」と呼んでいるものは、明治時代に正岡子規が定義し世に広めたものにほかなりません。芭蕉の確立した発句の芸術性、これに蕪村の写実性を備える、5・7・5の17文字という俳句はこの時できたものです。
その後の大きな流れをみると、子規門下の双璧といわれた河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)と高浜虚子の二人の確執から二つの流れに分かれていきました。その一つは時代とともに変化し、もっと自由な表現を求めるという碧梧桐の流れと、伝統を守って一定のルールのなかで表現を追求するという虚子の流れです。
そして、碧梧桐の流れから『現代俳句協会』ができ、その中から「有季定型」は守っていこうという考えの人達が集まって『俳人協会』を作りました。虚子の流れを汲んでいるのは『伝統俳句協会』です。
もしあたなが句会や結社に入る場合、その団体がどの流れをくむのかを知っておいた方がいいでしょう。あなたの作りたい俳句は、一定のルールのもとで(例えば、季語があり、5・7・5の17音にする)作るのか、あるいはもっと自由に何にも縛られない俳句(例えば、種田山頭火の「分け入っても分け入っても青い山」のような句)を作りたいのか。自分にあった句会や結社に入らないと、あなたの句が特選に入ることはあまり望めないでしょう。
※種田山頭火は青空文庫で読むことができます。
まとめ
俳句を始めよう!
と決意したあなた、まずは近くの句会、あるいは俳句結社に所属して、そこの句会に参加してみましょう。
入会すれば、俳句の基本はそこで教えてもらえます。もちろんカルチャーセンターでも教えてもらえます。
本を読んで勉強するのはそれからでも大丈夫。
はじめから上手な人なんていません(いや、ちょっぴりそういう人もいます)。
けれど、目的を忘れないようにしましょう。目的は定年後の趣味、生きがいをつくることです。出世競争ではありません。たとえ入選できなくても、自分の句を評価に晒すことでダメだったところが見えてきますし、逆に良かったところもわかります。
つまり、発表することで初めて文芸という俳句として認知されるということです。自分一人の中に収めているだけでは、多くの楽しさを味わうことができません。
さあ、あなたも新しい世界に足を踏み入れてみませんか。
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