松前の民宿に到着すると、宿のご主人が出迎えてくれて
「自転車ですか、どうぞ玄関の中に入れてください。私もロードバイクに乗ってましてね」
そして
「洗濯物があったら洗濯できますから」
と親切に教えてくれました。
今回は2食付きにしてたので、当然期待して食堂へ行くと、やっぱりありました松前漬け。それもたっぷりと。朝食にも夕食のときとは違うものが出ました。ご飯がすすみました。
出発前、女将が
「これから江差の方へ行かれるんですか。向こうは坂があるからね。あっ、でもたいした坂じゃないけどね」
たいした坂じゃない。なんだかその言葉が引っかかったまま出発しました。
この日は前日に長距離を走ったので60キロ程度と軽めです。
そしてその坂というのもたいした坂じゃありませんでした。
松前まではほぼ平坦。そして松前あたりまでが津軽海峡。その先は日本海で地形も大きく変わりました。
それは険しい崖が海にすとんと落ちていて崖と崖との間に沢があります。そんなところに道を作っているのですから橋がたくさん掛かっています。
相当なお金をかけていることがうかがえます。工事も大変だったことでしょう。一つの橋を見たら昭和52年竣工と書かれていました。
しばらくそんな道を緩やかにのぼり下りしていたら、ジャブのように効いてきて、たぶん前日の疲れもあってきつくなってきました。
やっと海辺に降りてきて、港を見ながら昼食をとりました。
そこへ自転車に乗った地元の方らしき親父さんが声を掛けてきました。
「内地?」
聞き慣れない言葉に戸惑いながら「神奈川です」と答えると
「俺は新潟、村上」
えっ、地元の方じゃないの。
そして、あまり何を言っているのか分からないながら聞いていると、父親が転勤族で7歳の時に引っ越して来た。当時は何もなくて。小学校はそこの坂の上。こんな南風の日は沢に熊が出る、鮭を狙って。そこの海に鮭が来ると真っ黒になってこんな大きな奴が飛び跳ねるんだ、それは凄いよ。この浜いっぱいに昔はイカを干していた。ということだったと思います。
その先はアップダウンはほとんどなくなって快調と言いたいところですが、さっきまでのジャブにやられて体が重く感じられ、広い場所を見つけてしばらく草の上で横になっていました。近くにはめずらしく羊の牧場がありました。
どうにかこうにか江差に着き、かもめ島にテントを張ります。
この島は大きな岩でできていて、島の上に上がるには階段を登っていかなければなりません。
崖下には遊歩道もつけられていました。
一回では荷物を運びきれず2往復することに。こんなところでキャンプする人いるの?
しかし無料でキャンプできるのはありがたいことです。
キャンパーはいませんでしたが、数人の観光客と釣り人が島を歩いていました。
この日は暖かく、ぼんやりと奥尻島も見え、夕日もバッチリ見えました。ここから見る景色はとても気持ちのいいものでした。
では、このへんで。
【データ】