妙高山に登って高谷池のテント場に到着。
池のほとりで日暮まで至福の時間を過ごす。
山頂では、残念ながらガスで景色は見られなかったが時々日が差した。
明日はどうやら晴れそうだ。
早朝に出発するので早めに就寝する。
高谷池ヒュッテテント場
高谷池ヒュッテテント場は水場の向こう側にある。
この水場は飲料に適さないとのこと。
テント場はあまり大きくないため、20張り程度しか張れそうにないが、そのためもあるのか予約制なので逆に安心である。
ただし、早いもの順で良い場所がなくなっていく。ぼくはぎりぎり平なところに張ることができたが、後から来た二人連れは傾斜もあり砂利も多い場所に張っていた。
その後から来た二人連れのひとりがぼくに言った。
「ツェルトですか、玄人ぽくていいですね。ぼくもツェルトにしてみようかと思いましたが、ちょっとまだその勇気がなくて。風は大丈夫なんですか」
ぼくは北海道の経験があったので、
「ちゃんと張れば結構風にも耐えられますよ。ただ、岩にロープを結ぶときは、岩が回転するのでその点を気をつける必要がありますが。どうぞ、ぜひ挑戦してみてください」
そう言うと、今度やってみると言っていた。
ペグの位置を直したり、張りを調整したりして落ち着いたのが4時頃。夕食の前にちょっと一杯ということで、ヒュッテに行き日本酒を注文した。日本酒は3種類あり、そのうちの純米酒千代の光を選んだ。料金は1合で800円。徳利でアルミのお盆に載せてお猪口とともに渡してくれる。
なお、これだけでは物足りず、持参のウイスキーも味わった。
御来光
スマホの目覚ましは午前3時にセット。5時出発の予定である。
目覚ましが鳴ると、すでに周りではごそごそと出発準備の音がする。皆も暗いうちに出発するようだ。
火打山へはツェルトや寝袋を残して出かける計画である。だからいつもより余裕がある。といってもいつも予定時刻よりも遅くなることがほとんではあるが。そうやってのんびり支度をしていると、周りが静かになっている。時計を見ると午前4時。皆出発したようだ。ずいぶんと早い。
ぼくは朝食を食べ、トイレも済ませて5時ちょうどに出発した。今回は計画通りにできたので内心ほくそ笑んでいた。
ライトがないと歩けないくらいの道はおそらく初めてだろう。霜がついているのか、植物の葉が白く光っている。
しかし、はじめは木道なので安心だ。ぼくのほかに登山者の姿は見えなかった。皆はとうの昔に出発しているせいだ。高谷池の木道から離れ、少し登ると天狗の庭といわれる湿地帯に出た。そこから見えるあのなだらかな姿の山が火打山だろうと見当がついた。その火打山が天狗の庭の池に映っている。美しい光景だった。
この天狗の庭の淵を回り少しずつ上に登っていく。ここまでずっと木道がつけられている。そしてこの辺りまで来るともうだいぶ明るくなっていた。そしてこのルートで一番の急坂が目の前になった。
この坂の途中に二人の登山者の姿があった。ぼくはその少し下で休憩し、後ろを振り返った。すると地平線がオレンジ色に輝いている。もうすぐ日の出の時刻だ。そしてこの時に初めて気がついた。皆4時前に出発して行ったのは、山頂で御来光を見るためなのだ。ぼくはまったくそんなことは考えていなかった。
そして5時40分頃、太陽が登り始めた。山腹からでも御来光を眺めるとなんだか心が洗われるような独特な心境になる。ぼくは思わず手を合せた。
しばし朝日に照らされた光景にうっとりする。そして日が当たると途端に暑くなった。今日はタイツは履かずカーフサポーターとニッカーボッカーにして正解。着ていたレインウェアもザックにしまい、ふたたび急坂を登り始める。
急登を終えるとなだらかになって平な場所に出る。そこが雷鳥平である。このあたりから、御来光を見に登った人たちが続々と下山してきてすれ違った。随分とたくさんの人がまだ暗い中を登っていたということがわかる。
そして山頂を最後に降りてきたらしき人から、
「こんにちは。いまなら貸切ですよ」と声をかけられた。
6時33分。火打山に登頂。言われた通り山頂には誰もいなかった。自撮り棒で記念写真を撮ろうとするが、朝日が眩しくて画面が見えない。感で撮影するがなかなかうまくいかない。何度も撮り直してようやく全体が入っている写真が撮れた。
テント場の退出時間
山頂の眺めを楽しんで、6時50分に下山を開始する。テント場の退出は8時となっているため、いそいで下山しなければならない。
だが、ほとんどが木道の下りなのですごく楽だ。天狗の庭まで40分もかからなかった。
7時45分、無事に高谷池のテント場に戻ってきた。先に登ってきた人たちはテントを乾かしていた。さて、ぼくもいそいで撤収だ。
時間は8時を少し回ってしまっていたが、30分くらいは問題ないと言われている。下山する前にザック置き場にザックとストックを置いてトイレにいく。
ザック置き場は、身軽になって火打山に登るために設置してくれているのだろう。ぼくもアタックザックを持ってくれば良かったと、気が回らなかったことにちょっぴり後悔した。昨日の妙高山の時も黒沢池ヒュッテにザックをデポしておけばもっと楽に登って来れただろう。それに剱岳の時にせっかくアタックザックを買ったのだから。
ともかく後悔をしても始まらない。急いで下山だ。昼前に下山できれば温泉に入ろう。入域料を払った証の雷鳥の札を見せれば市営の温泉が割引されて250円で入れるというのだ。
いよいよ下山
温泉のことばかり考えて8時35分高谷池ヒュッテを後にする。30分ほど下ったあたりで何かおかしいことに気がついた。あれ、ストックがない。しまった、ストックを忘れてきてしまった。ツェルトを立てるのに使っていたため、火打山に登る時はストックを使っていなかったのが気づくのが遅れた原因だろう。しかしまだ30分しか歩いていない。戻ろう。
こうして再び高谷池ヒュッテを再出発したのが9時40分。黒沢出合まで下ったときは11時半になっていた。そしてここでエネルギー切れ。沢の水を汲み、浄水してお湯を沸かす。ここで昼食だ。もう温泉はあきらめた。ともかく1食分余計に食料を持ってきていて助かった。
1時間ほどここで休憩し、笹ヶ峰に戻ってきたのはちょうど午後1時になっていた。さて、ここからまた10時間近くかけて帰らなければならない。気を引き締めてバイクに跨った。
最後に
今回の新しい試みに入れなかったが、化繊のジャケットはとても使い勝手が良かった。濡れても保温力が落ちないし、汚れても洗濯機で洗える。ダウンは行動着として着るには汗をかかないような場面でしか着れない。だから、両方あるとすごくいい。
また、今回ベアフットシューズで長時間歩いた。感想としては踵のある靴よりも疲れる。だから、足の筋肉を鍛えようと思うならベアフットシューズを履き、足に楽をさせたいときは踵のあるシューズを履くのがいい。
ザックのウエストベルトについては、モンベルのお店で要望を伝えておいた。ウエストが細い人のために、ベルトの長さをもう少し短くしてもらいたいということ、あるいは後付けのパットを作ってもらいたいことである。ネットで検索したら、同じ悩みを持っている人がいることがわかった。タオルを巻いたり自作のパッドをつけたりと工夫しているようだ。それに、ウエストベルトを短くすると大きなポケットはつけられないことになる。ウエストが細いとそれなりに不便なのである。
ギアのことが多くなってしまったが、最初に書いたとおり、急坂あり、岩場あり、湿原ありとまるでディズニーランドのように色々楽しめる山であった。百名山を完登したあともう一度登りたいと思った山だった。そして、まだ登ったことのない人にお勧めしたい山でもあった。
では、このへんで
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