太樹町二日目(13日)の朝は救急車で始まりました。
老医師が
「点滴が済んだら帰っていいよ」
そこで若い医師が宿のオーナーに連絡して迎えに来てもらうことになりました。
原因は不明です。おそらく食べ過ぎと疲れのせいでしょう。
若い医師からは
「もし検査するにしても休日ではできない」と言われました。
それでもとても親切に対応していただきました。
実は私は釧路で食べたサンマを疑っていました。そうアニサキスです。苦しむ中で「アニサキス、アニサキス」と念仏のように唱えていました。そのうちアニサシスとかアニキサスに変化して本当はなんて言うんだから分からなくなってしまいました。
老医師の判断は
「時間が経ち過ぎているので考えにくい」
とのことでした。
胃の薬と痛み止めを貰って宿に戻りました。
その日は昼近くまで寝て、目がさめてカーテンを開けると明るい空が広がっていました。オーナーが遅い朝食を作ってくれて、軽くではありますがなんとか食べられたので、ほっとしました。午後は洗濯、簡単に自転車整備をし、風呂そして夕食。食後、交流分析(心理学)の本を読んでいたらいつのまにか眠ってしまいました。
9時半頃、
「二階で寝たらいかがですか」
とオーナーに起こされました。申し訳ないというと
「よく皆さんここで寝てますよ、薪ストーブが気持ちいいんでしょうね」
本当に薪ストーブの暖かさはほんわりと柔らかくてとっても気持ちが良かったです。
翌朝、胃の痛みはほんのわずかにはありましたが、大丈夫そうだったので出発することにしました。
朝食を食べていると、
「昨日は台風の影響で黄金道路が通行止めだったので襟裳岬にはいけませんでしたね。今日は通れるようです」
と教えてくれました。
その道路はいつも風が強く、海のすぐ近くを通っているので、波をかぶってよく通行止めになるそうです。そして北海道で一番長いトンネルがあり、ライダーやチャリダー泣かせだとか。
お世話になった〈ゲストハウス旅うたり〉のオーナーにお礼を言って出発しました。大丈夫、脚には力が入ります。
襟裳岬までの道はわりと平坦で、林あり崖あり丘ありそして海がいっぱいありと、とても楽しめました。
この日、風は弱くトンネルも車が少なくて(風もなく)快適でした。
襟裳岬には2時半に到着。
よく口々に
「えりもに行っても何もないよ」
という言葉を聞きましたが、決してそんなことはありません。
岩礁に右と左から波が打ち寄せるなんて素敵なところだと思いませんか。
岬にある風の館からは望遠鏡でゼニガタアザラシが見えました。
体調のことも考えてこの日は民宿に宿泊。宿のおばちゃんが
「夕日が綺麗だよ。朝日も向こうから上がるよ、5時半頃かね」
と教えてくれました。
「台風で屋根の飛んだ家があるらしいですね」
と言うと
「それ、うちだよ。もう古いからね」
確かに古い民宿で、風呂もトイレも昔のまま。でも宿の方は親切で、素泊まりなのに翌朝出発するときにおにぎりを作ってもたせてくれました。おばちゃん、ありがとう。
では、このへんで。
【データ】
10月13日(日)、晴れ(台風一過) 大樹町に停滞
10月14日(月)、曇り 大樹町からえりも町 69.7キロ
(ここで一句)
颱風の去りし岬の風やさし