トレーニングのための登山に行ってきた。
ここのことろ体力が落ちてまともに登山ができない。
そんな体に鞭打つべく山に向かう。
だがそんなに急に力がつくものではない。
それはわかっている。
しかし、ゆっくりだが前回より着実に前進している。
鍋割山の思い出
丹沢山塊に鍋割山という山がある。
表尾根で有名な登山ルートからちょっと外れた位置にある。
標高は1272メートル。大山よりちょっとだけ高い。
この山に以前登ったのはもう40年も昔のことだ。
あの時は大倉から林道を歩いて二俣から登り始めた。
地図を見ると、二俣から四十八瀬川に沿ってさらに林道が続いている。
時間と共にもう記憶も途切れ途切れになっているが、ただひたすら登り続けたという記憶が残っている。
途中で荷物を担いだボッカさんを見かけている。
ところがすれ違ったのか追い越したのか、完全に忘れている。
あのころは、確か山頂にある山荘に管理人が常駐していたはずだ。
いまはどうか。
現在も宿泊できるのかどうかも定かではない。
やっと頂上に辿り着くと、野生の鹿がいた。
めずらしかった。
あの頃は、まだあまり鹿にお目にかかったことがなかったからだ。
山頂にはまだ雪が残っていた。
初めての一眼レフを買ったばかり。ニコンの標準レンズでできるだけ近づいた。
胸がどきどきしてそれがカメラに伝わりそうだった。。
意外にも鹿は人に慣れているのか、すぐに逃げるようなことはなかった。
それなのに、出来上がった写真を見るとまだまだぜんぜん寄りが足りなかった。
撮った写真は自分で現像し、4つ切りに引き伸ばした。
それをヨドバシカメラで買ってきたベニヤのパネルに貼り、ホッチキスで周りを止めた。
その後、同じようにパネルにしたのは子供が生まれたときの写真だけだ。
それくらい初めての鹿との出会いは強く記憶に刻まれたのだった。
鍋割山を目指して
再び登ってみたい。
ずっとそう考えてきた。
「よし、鍋割山を目指そう」。
今年になってから何度か地図をみた。
しかし、これがなかなかハードな行程なのである。
どうしても歩行時間が長くなる。
当然それだけ体力が必要になる。
現在のコンディションではおそらく下山で膝が痛み出すだろう。
そこで、体調を見ながら行けるところまで行き、あわよくば登頂できればいいな、という気持ちで出かけることにした。
今回のルートは、まだ行ったことのない寄(やどりき)をスタート地点とした。
いつもながら、初めていく場所というのは冒険心が掻き立てられてワクワクするものである。
寄という場所は、フライフィッシングの管理釣り場があり、これまで何度かきたことがあるが、登山口はそのもっと奥にあり、そこは未知の場所だ。
国道246号線を寄入口という交差点で右折すると、これまで一気に下ってきた道が上り坂に変わる。
この坂道はしばらく一直線に伸びていて、その両側に段々畑のように整地して建てられた住宅が並んでいてちょっとおもしろい。
カーブが現れてさらにその上に登っていくと、造成工事をしているようなところがある。なぜか昔から同じような風景だ。そこから少し登るとピークに達し森の中に入る。
昔は力のないシトロエンBXで必死に登っていた。今はスーパーカブ110というおとなしいバイクでのんびりと登っていく。同じ非力な乗り物であるのに感じ方が違う。それは車とバイクの違いなのか、それとも歳を重ねたせいなのか。
スーパーカブが頼りになるのは、たとえスピードが落ちたとしても、たいていの坂は怯まずに登ってくれるところだ。エンストの心配がないというのもとても心強い。
ピークに達したあとは下り坂になる。こんどはスピードが出過ぎないように気をつけて下る。
下まで下ると森を抜け出て前方に集落が現れる。
最初の橋のところを左折して渡るのが釣りに行く時のルートである。
今回は左折しないでまっすぐに進んでいく。
ここは谷間の集落なのだが、案外と奥が深い。川沿いに集落があるのは当然だが、すこし傾斜の緩い場所には上の方にも集落が広がっている。
登山口近くの駐車場の隅にバイクを停める。
今朝は6時半に起きたのだが、やはり体がだるくて結局出発したのは8時半になってしまった。
本当に今年は調子がよくない。
9時40分に登山を開始する。
最初は舗装された道を歩く。
民家の横をすり抜けていくのだが、結構な坂だ。この道をここの人たちは歩いているのか。
この辺りには、ロウバイの散策コースやしだれ桜の散策コースがあるが、いずれもすごい坂道を歩かねばならない。
歩き出してすぐに汗が吹き出す。蒸し暑い。
手拭いを出しておでこに巻き、汗どめとした。
つづく
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