3月12日日曜、19時からの参政党タウンミーティングに行ってきた。
会場は練馬区 Coconeri ホール。
テーマは
「世界で最初に飢えるのは日本?」〜食の安全保障をどう守るか
と題して東京大学大学院教授の鈴木宣弘先生が講演された。
内容は昨年11月に発刊された同名の著書に沿ったもの。
さて、農業経済学の権威が警鐘を鳴らす日本の食の危機とは?
食の安全保障について
みなさんは、食の安全保障ってことばを聞いたことがありますか?
食の安全保障についてどの程度知っていますか?
講師の鈴木宣弘氏は、10年以上前から食に関する危機について警鐘を鳴らしている。
食に関する危機といっても量の問題と質の問題がある。
質の問題とは危険な輸入食品に関わるものだ。
- 成長ホルモンを投与された家畜
- 小麦など収穫後の農産物への農薬散布(ポストハーベスト農薬)
- 遺伝子組み換えの農産物 などなど
そして今回の講演でのメインテーマは量の問題について。
講師の話から日本の現状とその背景、そして今後起こりうる危機について以下に整理してみたい。
日本の自給率は37%
現在(2020年度)の日本の食料自給率は37.17%だという。
ただしこれは、甘く見積もっての数字だ。
農産物の種やヒナなど、ほとんど輸入に頼っているものがあるのでこれを除けば10%にも達しない。
もし、世界的な不作や国家間での紛争などにより輸出停止や規制などが広がったら日本人が最初に飢えてしまうだろう。
江戸時代までは全て自国で賄えていたのに、どうしてこんなことになったのだろうか?
それは、不平等の条約により低い関税で輸入させられているからである。
特に戦後はアメリカ国内で余った小麦を、戦後、食料の救援という形で無償で提供し、その後は強制的に買わされている。
アメリカは国内の生産者は国の助成で保護し、安い農産物を世界に輸出して食で世界制覇しようとしてきた。
とくに経済的に破綻しそうな国に資金提供し、その代わりに価格の安い農産物を輸入させる。
こうして自国の農業生産者を廃業に追いやり、その結果として食料自給率が低下する。
日本の場合は資金提供の見返りとは違うが、戦勝国の強みで安い農産物を買わされることによって、価格競争できない国内の農業生産者(農家)が激減した。
そればかりではなく、タネも輸入に頼らざるをえず、農薬もみな輸入にたよっている。
もう完全にアメリカとその背後にいるグローバル企業に乗っ取られてしまっているのである。
すでに始まっている危機
(出典:Pixabay)
すでに始まっている危機といえば、たぶんウクライナ戦争を思い浮かべるだろう。
だが、そればかりではない。
3年前に始まったコロナショック。近年の異常気象。
さらに最近では中国が家畜のエサとなる穀物を爆買いしているというのだ。
こうしたとき、食料供給国はまず自国の国民の食料を確保する。そのうえで余裕があれば輸出をする。だから金を払えばなんでも買えるわけではないのだ。
また、供給量が減れば食料自給率の低い国が競争をして食料確保に走る。
当然価格は高騰する。このとき売り手側は購入量が多く高値で買ってくれる国に売ろうとするだろう。
こうしてやっと買えたとしよう。しかし、原油価格が上がれば輸送コストも上がってしまう。
食料ばかりでなくタネ、ヒナ、エサが輸入できなくなったら日本の農業は壊滅する。
今コストが高いと思っても、農家を守らなければならない。そのことが結局は少ないコストで済むのである。
食料安全保障
以上のようなことが食料危機であり、最悪な状態にならないようにするのが食料安全保障である。
ところが、日本ではこのことがなおざりにされている。
車の関税率を下げるかわりに貿易の自由化によって食が犠牲にされてきた。
財政政策においても、農水予算は毎年2.3兆円と財務省によって抑えられている。
そして規制改革は一部の企業のみが利益を得る仕組みを作ってしまった。
ことほど左様に政府は農業政策に関心がなく、国民の食について危機感がない。
食料、エネルギーで自給できない国は侵略されても戦うことすらできない。
農業政策
(出典:Pixabay)
今回昆虫食の話は軽くしか触れていなかったが、農水省が始めている政策は少しおかしな方向に向いているようだ。
たとえばゲノムトマト。これが人体に及ぼす影響がまだよくわかっていないにも関わらず、これを普及させるため学校に苗を無償で配布している。
コスト上昇。スーパーなどの力が強くて(価格を決めていて)価格転嫁できない。
農地や漁業権(海)が売買できるようになってこれが外国人に買われている。
成長促進剤のラクトパミン。これをエサに混ぜている。
RNA農薬。みどりの食料戦略によって開発が進められている。
スマート農業。AIが人手不足、高齢化を解決するとのことだが、AIがすべてを解決してくれるのだろうか。逆に農家がなくなってAIの企業が独占するようなことにならないか。
こうした取り組みよりも、我々が目指すべきなのは江戸時代に行っていたような、輸入に依存しない循環農業なのではないか。
われわれができること
さまざまな食料危機を挙げていったが、われわれにできることはどんなことがあるだろうか。
三方よしという言葉がある。売り手によし、買い手によし、世間によしということである。
われわれつまり消費者にできるのは、農薬に汚染された輸入品をなるべく買わず、多少高くても国産の安心な食べ物を買うことだ。それが売り手側(日本の農家、メーカー、小売り)に利益をもたらして農家が存続できる。
また、学校給食に有機栽培の米を使う試みが千葉県いすみ市において実施されている。
地元の有機米を市が買い取っているのである。
専門家を招いて有機農法を行ったところ、手間もかからず収入は増えたそうだ。
国でも「地域のタネから作る循環型食料自給」を目指して超党派で「ローカルフード法」の成立を目指して活動している。
こうした取り組みを全国に広げていくことがいまわれわれにできることである。
最後に
以上、硬い話ばかりで恐縮だが、こうした説明をユーモアを交えながら、大量のスライドを駆使して1時間半程度にまとめて話をしてくれた。
なお、講演を聞きながらメモした内容なので、講師の説明を正確にまとめたものではなく、一聴衆の理解の程度によるものであることをお断りしておく。
今回の記事を読んで、正確な情報が知りたい方は「世界で最初に飢えるのは日本 食の安全保障をどう守るか」(鈴木宣弘著、講談社+α新書)をお読みいただきたい。
では、このへんで
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