前回は新宿から高速バスの夜行で上高地に向い、そこから横尾までを書いた。
夜行バスで体が伸ばせないのはやはり老人にとっては辛い。
高低差がほとんどないのに徳沢までで疲れが出て、横尾ではすでにバテバテになってしまった。
今回は横尾からババ平までの道のりです。
横尾からテン場まで
横尾から槍ヶ岳方面に向かうと道はすぐに登山道らしい細い道になる。路上には丸まった石が多く、それが濡れていて滑りそうだ。
同じ方向に向かう人の数は大幅に減り、代わりに下山する人とたくさんすれ違う。
ちょうど槍見河原というところに差し掛かったとき、二人の中年の男性が下山してきて河原で山の方を眺め出した。
「いま、ちらっと槍が見えますよ」
そう言われて同じようにして見てみると、ガスが流れて槍の穂先が見えた。スマホを取り出して写真を撮ろうとしたときにはもう見えなくなってしまう。
歩き出した二人に後ろから
「昨日はどうでしたか?」と尋ねてみる。
「朝のうちはダメだったけど、だんだん晴れてきて9時頃から1時頃までいい天気でしたよ。それから曇ってきて2時頃からは雨、そのあと3時頃からは雷が鳴り出しましたね」
「そうでしたか、ありがとうございます」
予報では霧か雨となっていたが、明日も同じような天気だったらひょっとして、などと期待を抱かせる情報だった。
いくつか小さな沢を越えていくと少し大きな支流があり、そこにちゃんとした橋がかかっていた。そこを渡り終えるとそこに「一の俣」の標識があった。近くにベンチがぽつんとひとつ置かれていたのでそこで休憩する。
小腹が空いたのでフルグラを食べる。そこから10分ほどで「二の俣」の橋を越える。橋の上から槍沢と合流しているのがよく見えた。
そこから先は槍沢に沿って進んでいく。正確にはわからないが、ニノ俣と合流してからの下流が梓川になっていると思われる。
槍沢の所々に大きな岩があった。まだまだ傾斜はキツくないが山登りをしている感じになってきた。そうやって少しずつ高度を上げていく。
すると目の前に小さな小屋が見えてきた。近づいてみると「ヤリサワ水力発電所」と書いてある。ホースで引いてきた水を小屋の下から流している。
この水力発電所を過ぎたあたりから少し傾斜がキツくなってくる。
日差しを受けて汗が流れる。体もキツい。ゆっくり歩いていると、どうにか槍沢ロッジに到着。11時5分だった。
ロッジの前のテーブルベンチにザックを下ろして休憩。カロリーメイトを食べる。テント場の受付をここでやるように案内が書かれていたので中に入って受付を済ませ、二泊分の4000円を支払う。
ここからテン場まで3、40分とのこと。日差しを受けながら今までより少し急になった岩だらけの道をさらに高度を上げていく。
岩だらけの道とはよく言えば石畳であり石段である。その両側にはさまざまな高山の花々が咲いていた。ニッコウキスゲらしき花もある。
12時10分、そうこうしているうちにババ平に到着した。
テント場
テント場に着くとまず目に入るのは石室である。地図にある赤沢岩小屋とは別もので、昔の槍沢ロッジか。現在は使われていないが、どんな嵐でも耐えられそうな頑丈な建物である。
その石室を取り囲むようにテントが張られていた。そして槍沢とは反対の山側にもずらっとテントが張られていてスペースがない。中央はそこそこ広くまだまだスペースがあるが、登山者の通路となっているため、できれば中央にでっぱって張りたくはない。
いま張ってあるテントはどこもみな留守のようだ。おそらくテントを置いて槍に登っているのだろう。
すると、ちょうどテントを撤収している人がいたので、声をかけてその後にテントを張らせてもらった。
地面にペグは刺さらないので、近くの石を使ってテントを固定する。見ればどのテントも同じように石で固定していた。
テントを張り終えてテントの入口に座って昼食を作っていると、日差しが膝の辺りを焼いて熱かった。食後、日陰を探して岩小屋の陰で涼む。
するとすぐに太陽が雲の中に入り涼しくなってきた。午後2時30分にテントに戻る。戻って5分後に雨が降り出し、3時頃には雷も鳴りだした。槍見河原で聞いた昨日の天気とそっくりだ。
雨は午後7時前に止んだ。
つづく
広告