前回は、山頂レストランで天候の回復を待っているところまで。
ヤマップか何かで、山頂レストランでコーヒーを飲んでいたら天気が回復したという記事を読んでいたので、同じようにならないかと期待。
だが・・・
休憩のあと再び外へ
山頂レストランで休憩しながら窓の外を眺める。
一時というか一瞬といった感じで日が差したが、またすぐに太陽は雲の向こう側。
それではと、地蔵岳を巻く道が通れないかと地図を見る。ひょっとしてそっちなら行けるのではないかという淡い期待が湧く。
そうと決まれば出発だ。
スキー置き場の壁の隅にスノーシューを立てかけておいたので、その前で立ち話をしている人に声をかけて割り込ませてもらう。
表に出てスノーシューを履く。今度は試しに左右を逆にしてみた。
アレッ。今度はすっと踵が留められる。それにラチェットダイヤルが枠に引っかからないどころかかなり余裕がある。
ひょっとして左右があった? だがそんな話は聞いていない。ともかく調子が良い。ついでにスノーシューをザックに取り付けるために付けてきたベルトを外してスノーシューに靴を縛り付けてみた。これで壊れる前と同じように使える。とても歩きやすく快調になった。
地図を見て巻道の入口あたりまで行ってみるが、案内板などは見当たらない。ただ、スキーで歩いた二本線がそのあたりから熊野岳の方に伸びていた。
ともかくこのトレースがあれば戻って来られる。そう思ってトレースの後を追っていく。だが、相変わらず雲の中にいてさらに見通しが悪くなっていた。
最初のうちは駅近くにいる人の影が見えていたが、しばらくするとその姿も見えなくなる。見えるのは霧の中に浮かぶスノーモンスターばかりである。何度も何度も振り返りながら、歩いてきた道を確認しながら前に進む。
いま、視界のなかで見える人間は自分一人である。まだそんなに遠くまでは来ていないはずなのに、まったく人の気配を感じられない。もし、このトレースを見失ったら、スマホやGPSの電源が落ちてしまったら、そうなったら人が大勢いる駅の近くで遭難することになる。
さっきまではっきり見えていた二本のトレースがだんだん薄くなってきた。よく見ないと見失いそうだ。それに雪の影がスキーのトレースのように見えたりもしている。さらには自分が歩いたスノーシューの跡はほとんどわからない。それだけ雪への沈み込みが少ないのだ。
スマホのGPSで確認すると、夏道に沿ってはいるけれども夏道とは離れた場所を歩いていた。雪の上はどこを歩いてもいいのである。つまりはっきりとした道はない。
次第に完全にホワイトアウト状態になってきた。
もう危険である。引き返そう。目を皿のようにして、今歩いてきたトレースを探す。それなのにトレースがはっきりとわからないところもあった。そんなときは少し引き返し、心を落ち着けてトレースを探した。
少し戻ってくると、駅の近くにある鐘の音が聞こえてきた。この音に向かって歩けば方角を間違えることはないだろう。なんだかとても安心した。
再び地蔵岳に登る
うっすらと人影が見えてきた。もう安心だ。それにしてもホワイトアウトになったら動くのは危険だとはっきりと判った。GPSをたよりに歩くのは非常事態の場合だけと肝に銘じておこう。
ちなみに、正月に登った北横岳ではスマホの電源が落ちた。それは突然に起こった。そもそも古い機種だったので、バッテリーが弱っていたこともある。でも登山のYouTubeを見ていると、雪山ではスマホのバッテリーが落ちるということを何人もが語っている。
実際、昨年12月の伯耆大山では、モバイルバッテリーを繋いでもぜんぜん充電されなかった。モバイルバッテリーをポケットに入れ、そこにカイロを入れることにより、ようやく充電することができた。
そんなことがあったので、今回はスマホを買い替えている。といっても中古ではあるが。ただ、バッテリー能力が100%というものを買った。それにスマホは体に近いポケットに入れておくようにしたのでなんとか持ち堪えている。
さらにカメラはコンデジを持ってきていて、なるべくスマホを外に出さないようにした。
こうして命綱であるスマホのバッテリーが落ちないようにしてきた。それにガーミンのGPSも併用しているし、アナログのコンパスと地図も持っている。
それでもやはり真っ白な世界は恐ろしかった。
無事に生還できたことで嬉しくなり、スノーモンスターの近くの新雪の上をぐるぐると歩きまわる。スノーシューの調子もいい。だからもっと歩きたいということでもう一度地蔵岳に登ることにした。
午前中に下ってきたあたりから上に向かっていく。やがてエビの尻尾が目に入る。もう頂上はすぐそこだ。みな同じところを登るのでトレースもしっかりしている。後ろからはわかんを履いた女性が登ってきている。
山頂はさっきよりも視界が悪くなっていた。山頂の標柱を確かめるとすぐに下山した。
スノーシューは踵が自由なので踵から踏み込んで下っていく。さらに急なところでは斜めに下っていく。歩き方を習っていないので、自分で考えながらいろいろ試してみる。
こうしてまた山頂駅まで帰ってきた。まだ少し早いがロープウェイで下ることにして支度を整えた。山頂駅からはすぐにゴンドラに乗れた。しかし、途中の樹氷高原駅では2、30分待たされてしまう。
こうして麓の駅に降りてくるとまっすぐにレンタルショップに向かった。
えっ、修理代がそんなにするの
店の中に入りスタッフに声をかける。
「スノーシューの返却なんですけど、それが割れちゃったんですよ」
するとスタッフの顔色が変わったのが判った。
奥に座って事情を話し、取れた部品を見せる。
「これはもう直せないですね。修理代をいただくことになりますが」
「普通に使っていただけなんですけど」と言ってみたが、そんなことはどうでもいいという感じで無視される。
いったんレジの方に行き、再び戻ってくると、
「1万円いただくことになります」
驚いて、思わず「えっ、そんなにするんですか」と返した。
だが、スタッフは何も答えず、他のお客さんの対応を始めてしまった。
もう一切話は聞かないぞという態度だ。感じが悪い。
ああ、レンタル代と合わせると13,000円。ワカンが買えちゃう。
「領収書をいただけますか」
こちらが声をかけるまで無視されつづけた。
こんなやりとりをしてお金を払い店を出ていく。
すでに2時を回っていた。山形行きのバスは15時過ぎだが、昼食がまだなのである。
温泉くらい入って行きたかったが、昼食を取ったらもう時間がないのでバスターミナルに向かう。
バスターミナルの中は人で溢れかえっていた。というより外にも大勢人が立っていた。
状況を伺っていると、ぐるりと回りながらバスを待つ人の列だとわかった。最後尾を確かめて列に並ぶ。
館内放送で臨時便が出るという。よかった。そうでなければ乗り切れないところだった。
ターミナルに来る時、その手前で振り返ると山頂の雲が晴れてきて熊野岳らしき山が見えていた。残念。また今度挑戦しよう。
こうして熊野岳には登れず、スノーシューの修理代を払い、ついていないという想いを残して蔵王を後にした。
最後に
不運なことばかり書いてきたが、スノーシューで新雪の上を歩くのはとても楽しかった。
それに平地ばかりではなく、坂道も結構登れることがわかった。
しかし、スノーシューは値段が高いことと重量があることがネックである。
まずはわかんを買って雪山を楽しんでみたいと考えている。
なお、蔵王は夏に刈田岳の駐車場から登ったことがある。しかし、ほとんど歩くところがないので百名山の登頂とはしていない。
熊野岳を登った時に蔵王山の登頂とすることにしたい。
では、このへんで
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