雨続きの予報の中、その1日だけが曇り予報だった。
そしてその日は仕事が休み。
その日に登らなければ土日は雨になる。
そこで、夜行バスで往復するという弾丸登山を行った。
行き先は盛岡。
さて・・・
ありがたいレンタカー
5月29日水曜日、東京駅発青森駅行きの夜行バスに乗った。目的地は途中の盛岡駅。そこから岩手山に登る計画だ。
翌朝5時50分少し前、盛岡駅で下車。2階の待合室で電車の発車時間になるまで待つ。
目的の岩手山にはいくつかの登山コースがあるが、今回は一般的な馬返し登山口から登ることにした。早朝に盛岡駅についてからどうやって登山口まで行ったら良いか。路線バスは通っていない。タクシーで行くしかないのか。すると帰りも頼まなければならない。
その場合、下山の時間を見込んで頼むことになる。標準コースタイムでいくと、往復するのに9時間45分かかる。これに昼食の時間が加わる。これでは時間がかかりすぎるがもう少し早く歩けるのではないかと思われる。
それにタクシー代が片道7千円とすると往復で1万4千円もかかる。
そこで、お気に入りのニコニコレンタカーをアプリで調べてみた。残念ながら盛岡駅の近くには営業所がなかった。
しかし、JRで隣の駅まで行けばそこにはあった。さらに、他の近くの営業所の営業開始は8時なのに、その隣駅の店は7時から開いている。これだ。それになんて言ったって価格が安い。なんと12時間で約2500円。
朝7時、ニコニコレンタカー営業所へ行く。今回借りるのはフィット。そして初めてのハイブリッドカーである。走り出すと、前回乗ったフィットとなんとなく何かが違う。少し動きが鈍いようなそんな感じがする。でも運転のしやすさは抜群だ。やはりフィットはいい。
途中コンビニで飲み物と最中を買う。本当は羊羹が欲しくて探したけれど見つからず、お店の人に聞いたら置いていないという。飲み物はダカラというのを買った。これは甘すぎないのがいい。いつもは水だけだけど今回は歩行時間が長いためミネラル補給がしたかったからである。
馬返し
8時少し前、岩手山馬返し登山口第一駐車場に到着。ここでふくらはぎのサポーターをつけたり、靴紐を結び直していよいよ登山開始である。
少し行くとトイレがあり、ここでトイレを借りる。また少し登ると鬼又清水という水場があり、そこに四阿の休憩所があった。ここで水を補給し登山カードを記入して再出発。
緩やかな陽気の樹林帯の中を行く。風が爽やかに吹き抜けとても心地良い。ところどころ急な登りもあるがとても歩きやい。ただ「熊に注意」が気になる。今回は熊鈴を持ってこなかった。
登山道脇でヤマツツジが出迎えてくれた。その後もたくさんの花が見られたので順に紹介していこう。
0.5合目で道が二手に分かれる。少し先で合流することになっている。今回登山では、上りは左、下りも左で行こうと思う。この先にも新道と旧道とに別れるの場所があるので同じように進むことにする。
上の1合目で合流し。そこに石の祠があった。馬のような獅子のような像があり、目玉にコインが置かれていた。かわいい。
1合目から少し岩が多くなってきた。溶岩の流れた後だ。このあたりで少し息が上がりだした。長丁場だけどのんびりはしていられない。頑張ろう。振り返ると、新緑の向こうに北上盆地が見えた。ああ、気持ちが良い。ここで写真を撮り、菓子パンを一つ食べた。
9時半、2.5合目の新道と旧道の分かれ道に到着。鬼又清水から1時間、駐車場から1時間半かかった。標準コースタイムが1時間20分なので、トイレに寄ったり水を汲んだりしていたからそんなもんだろう。ゆっくりゆっくり登ってきている。それでも結構しんどくなってきた。ファイト。
10時25分頃4合目に着く。そろそろスマホに充電しようとモバイルバッテリーを取り出し、ケーブルで繋ごうとしたが見つからない。おそらく車から降りるときに忘れてきたものと思われる。スマホで歩行ログをとっているので下るまでバッテリーを持たせなければならない。機内モードにし、写真も控えめにしてバッテリーを節約することにする。
4合目からのガレ場・ザレ場はその後長く続き苦戦する。
ここでは、平地を歩くときのようにあと足を蹴り出してしまうと滑って体が上に持ち上がらない。それは雪などの滑りやすい斜面でも同じである。だから登山では重心を移動させてからうしろ足を前に出すようにするとよい。
だが、頭では分かっていても実際にやるのは難しい。何度もあと足で細かな石を弾き出して滑ってしまう。
しかし、このようなザレた場所が長く続いてくれたおかげで重心移動ができるようになった。それは、簡単に言えば前足の膝を前に出すようにすれば重心が前足に乗るということがわかったのである。
このようにしたらズルッと滑ることがなくなった。ただし、歩幅を大きくは取れないためスピードは出せない。
ともかくできるだけ歩きやすそうなところを見つけて登って行った。すると自然とザレ場の端の方が歩きやすかった。ようやくガレ場、ザレ場を過ぎたと思ったら、今度は藪漕ぎになった。これは、なかなか大変だ。
すると、だんだん道がなくなっていく。ものが落ちていて、人が通った形跡はあるのだが、どうもおかしい。コンパスアプリの地図で確認すると、本来のコースと微妙にずれている。
そうしていたら、熊鈴の音が上から聞こえた。上から来た人が、ぼくから2メートルほど離れたところをするすると降りていく。どうやら端に寄りすぎて道を外れてしまったようだ。
11時45分、8合目避難小屋に着くとアラフォー世代の女性が小屋の前にひとりで座っていた。こちらもここで休憩。その女性が「こんにちは」いったので、こちらも挨拶を返しつつ「もう登ってきたのですか」と聞いた。やはりもう登ってきたとのこと。当然だろう。
すると小屋から年配の男性が出てきてその女性に話しかけた。どうやら連れのようだが夫婦ではなさそうだった。
出発前にトイレに行こうとしたら、そこは封鎖されていて、小屋の中のトイレを使用するように張り紙があった。さっき男性が出てきたところがトイレなのだった。
風に吹き飛ばされそう
さて、少し急がなければならない。レンタカーの返却の時間を考えると18時には下山したい。パンをひとつ食べて12時少し前に出発する。
8合目のあたりは不動平といって比較的平らな場所が広がる。すこしは早く歩けるとおもったが、すぐに雪の道になる。そこを過ぎると岩がゴロゴロとしていて歩き辛い。
右手には岩手山が見えている。岩手山の最高地点が薬師岳である。斜面に見えている登山道は途中から2方向に伸びている。このYの字の分岐を左に入る。するとそこからはこれまでよりも比べものにならないくらいにズルズルと足が潜り込んでとても上りにくい。こうしたところのたくさん穴の空いた石をスコリアというそうだ。
ここでも膝を前に出して重心移動をこころがける。そうしてようやくお鉢の上に出た。
ここまでくる間にも風は強かったが、お鉢の上はさらにすごかった。うっすらとガスが流れているのが見えるが、それが外側の斜面を登ってきてお鉢の中へと沈み込むように流れている。
バランスを崩して崖から転げ落ちないように、できるだけ中心部を歩いていく。そして体が飛ばされそうなくらい強い風が吹いた時は体を沈めて防風体制をとった。
前方には一人の登山者の姿が見える。その影はだんだん小さくなっていく。とくに身を屈めてはいなかった。これは難しいかも、登頂を諦めるべきかもということを考えていたが、その姿を見てなんとか行けそうだと思った。それでも慎重に進んで行った。
面白いことにそんな稜線上でも風が弱まる場所がある。そこで少し立ち止まり、再び歩き出す。薬師岳の山頂はあと少し。
12時半を少しすぎた頃、岩手山の最高地点、薬師岳山頂に登頂した。
13時10分、お鉢を巡って8合目の避難小屋まで戻ってくると、ここでまたパンを食べてエネルギーを補給する。ここまで意外と早く往復できたので、15分ほど休憩した。
7合目の分岐から新道を下る。新道は半分地下で上は木々に覆われていて、なんだかモグラみたいだなと思った。そしてなんだかじめっとしている。
下を見ているせいで上の枝に気が付かず、何度も何度も頭をぶつけてしまった。あゝ痛てて。登りは旧道を通って良かったと思う。そしてたくさんのイワカガミとチングルマに出会えた。
あとは新道を黙々と下って行った。
最後に
下りはそれほど急がなかったが標準タイムよりもかなり速かった。
15時半に駐車場に戻ると犬を連れた地元の人がいた。挨拶をするとその人は言った。
「盛岡に住んでいながらまだ一度も登ったことがないんです。どのくらいの時間がかかりましたか?」
「7時間半くらいでした。登りは時間がかかりましたが、下りが標準タイムより早く下れました」
そのあと天気の話などをして、
「ところでこの辺りに温泉ってありますか?」と聞いてみた。
その方は少し考えてから、
「網張温泉が近くて有名です」と教えてくれた。
そこは車で20分程でいくことができた。
網張温泉はビジターセンター横に日帰り施設があり、入ってみると白濁したいい温泉だった。
帰りは少しの渋滞があったが、30分前に無事にレンタカーを返却できた。感謝。
帰りの夜行バスが出るまで盛岡駅近くの居酒屋で夕食。ごちそうさまでした。
では、このへんで
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