久しぶりの芝居鑑賞。
新中野ワニズホール。
1作品30分の二本立て。
笑えて泣けて心がじんわり温まるストーリー。
2023年6月3日(土)15:00/18:00
そして、6月4日(日)13:00/16:00
(観たのは6/4 13:00)
バック・トゥ・ザ・ロマンス
出演:下平久美子・川島拓矢
作演出:古賀勝哉
ストーリー:
一人の若い男性のもとにAmazonから宅配便が届く。
中身は鶏の卵。全国各地の卵を取り寄せて食べるのを生き甲斐としている。
そこに突然轟音が響き、気がつくとそこに一人の女性が現れていた。
女性はその若者にお土産を渡そうとするが、お互い近づくと警報が鳴って近づくことができない。
そこで離れたまま場所を入れ替わり、宅配便の置かれたテーブルの上にそれを置く。
そして「あまり卵を食べない方がいいわよ」と忠告する。
その女性はその男性のことをよく知っている。
女性は65歳。Amazonのタイムマシンに乗って40年遡ってやってきたといった。
40年後、日本は韓国やベトナム、フィリピンなどの国々と併合され、Amazon国になっているという。
そして、中国やロシアなどはアリババ国に。
それを聞いて若者は起業の大きな夢を描く。
だが、未来のことを聞いたらそれを消去しなくてはならないというルールがある。未来を変えることをしてはならないのだ。
女性は若者に向かって記憶を消去するマシンガンをぶっ放す。
女性はここにやってきた理由を若者に伝える。
滞在できる時間は27分40秒。あまり時間がない。
若者はこれから友人に誘われた合コンに出かけることになっている。
そこで3人の女性を紹介される。
若者はその中のひとりに一目惚れしてしまう。
その後すぐにその女性に血液の病気があることが判明する。
半年後、ふたりは結ばれる。
それが私だというのである。
挙げ句の果てにその女性は、昨日突然に病気の自分より先に心筋梗塞で亡くなってしまったと若者に告げる。
そこで女性は若者に言う。
これから私に出会っても好きにならないで。
あなたは私に尽くすために大きな夢を捨ててしまった。
だから別な人生を歩んでもらいたいと。
若者は言う。
僕はやりたいことの優先順位をよくわかっている。
これまで間違ったことはない。それが僕の特技だと。
だから将来の僕が選んだことには間違いがない。
たとえ先に死んでしまうとしても。
タイムアップ。
もう戻らなくてはならない。
女性は知り合う前の若者に会いたくてこの時代の今日に照準を合わせてやってきたといった。
通常は1、2年の誤差はあると聞いていたが、ぴったり望んだ時代にやってこれたことに満足し、マシンガンで若者の記憶を消去して轟音を響かせて消え去った。
後に残されたのは卵の横に置かれたお土産のきなこ。
若者はAmazonに電話して余計なものが入っていたと告げた。
どんなにあなたが探していても
出演:下平久美子・白峰ゆき菜
作演出:古賀勝哉
ストーリー:
とある公園。
ベンチに腰掛けた中年女性と公園の茂みで何かを探している40前の女性。
中年女性はその女性に話しかける。
「お嬢さん」
若い方の女性は何も答えない。
何度も呼びかけられて「私はお嬢さんではありません。もうすぐ40なので」
中年女性は自分は65だと言い、その女性が綺麗だと褒め称える。
「若い頃は女優の〇〇さんに似てるって言われたでしょう」
「若い頃はっていわれても全線嬉しくありません」
「何か探し物?」
若い方の女性は、半年前この辺で猫がいなくなったと言った。
中年の女性は猫の名前を尋ねる。
若い方の女性はミャーコと答える。
「どんな字を書くの?」と中年女性。
「当然、カタカナです」と若い女性。
中年女性は若い女性に向かって言う。
「ここではぐれたと言うのは嘘ね」
中年女性は若い女性を詰問する。
若い女性は猫を捨てたことを認め、事情も聞かずに非難されたと感情的になる。
中年女性は私だけでなく誰でもあなたを非難するでしょうと答える。
中年女性は名刺を差し出し、若い女性に渡す。
「動物愛護協会 坂上」と読み上げる。
坂上。私と同じだと若い女性が言う。
女性の名前は坂上真理子。
中年女性は「この公園に猫を捨てる人がいるのでここに座ってそれを監視しているの」
そして探している猫が保護されているかもしれないと言うようなことを匂わせる。
若い女性はぜひその猫たちに合わせてもらいたいとお願いする。
けれど、重要なのはその猫がどう思うのかであると言う。
若い女性はわたしより猫のほうが寂しがり屋なんだと言う。
10年前、捨てられていたのを拾ってきて家族のようにして可愛がってきたのだと言う。
だから合わせて欲しいと。
しかしその中年女性は若い女性に猫の気持ちを何も理解していないと厳しく言う。
若い女性は一緒に暮らし始めた家庭のある男性がその猫を虐待するのに何も言えず、ただ見て見ぬふりをしていた。
そしてある日、男性がテレビでサッカーのワールドカップを見るのに邪魔だからと言って猫をロープでぐるぐる巻きにした。
そして見るに見かねてとった行動がこの公園の茂みに猫を捨てることだったのだ。
半年後、男性が女性のもとを去り、寂しくなって捨てた猫を探しにやってきたのだった。
そうしたことが中年女性によって暴かれていく。
中年女性の名前は「坂上美也子」。
あなたにとって可愛かった猫は10年も経てばもう65歳。
いつのまにか立場は入れ替わっている。
あなたはもう、ひとりで強く生きていくために猫に縋ってはいけない。
真理ちゃん、その辺でこんなふうに「ミャー」って鳴き声が聞こえても振り向いてはダメよ。
そういって中年女性はどこかへ姿を隠してしまった。
最後に
1本目の作品は、バック・トゥ・ザ・フューチャーをモチーフにした作品で、タイムマシンの制作者がドクという名前であったり、時間を移動するときに爆音と共に流れる曲がThe Power Of Love · Huey Lewis & The Newsだったりする。
Amazon国やアリババ国というのも現代のグローバル企業が、実質世界を経済で支配している様を風刺していて笑いたいけど笑えない(笑ったけど)ブラックジョークの設定だった。
短い時間の中でそれも若者の部屋の場面だけなのに40年後の世界の様子が描かれ、それを観客が想像するという広がりがあった。
未来のロマンスが今という瞬間に姿を現し、結局、未来は何も変わらないけれど、若者のしっかりとした生き方に接して未来の女性の心は豊かになった。
これを書きながら、ロマンスというものは時代に関係なく普遍であるということを感じた。おそらく太古の昔から男と女はそうしたロマンスを持っていたのだろうと想像できる。
2本目の作品は、始まってすぐに「見たことある」と思った。
聞けば5年前の再演なのだそうだ。
とても印象的な作品だったのでよく覚えていた。
今回2回目を観て、単に捨て猫の話だったのではなく、女性の自立がテーマだったのだと気づいた。
男性に依存して自分の生き方を相手に委ねるという飼い主の女性。
これに対し、捨てられた猫がしっかりと生きて行きなさいと心で泣きながら愛する飼い主に苦言を呈している。
そうした心情に涙が溢れた。
両作品に主演したのは下平久美子。
65歳という未来の女性が40年遡って鏡を見ると25歳の見目麗しい女性が写っているという演技が笑えた(若者にも65歳の女性としか映っていなかったようだ)。
また、当時の自分を高嶺の花と言ってポーズを取るところもコメディチックで、大いに笑わせてくれた。
猫の方も65歳という設定。
この中で、若い女性に厳しい言葉を浴びせかける場面の演技は秀逸。感情的にならず、かつ女性のためにわざと厳しく言い放つ。
そして、宝塚男役のような二役の男性のシーン。こちらも実にうまい。
悪びれない憎たらしさがよく表現されていた。
以上、ストーリーと感想でした。
では、このへんで
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