先日の日曜日にミツマタを見に出かけた。
昨年より少し遅い時期になってしまった。
もう終わってしまっていたら・・・
そう思いながら山道を登っていく。
不動尻のミツマタ群生地
4月になった。ところが3月の暖かい日が続いた後の春の長雨からふたたび寒い日々が戻ってきている。
この前の日曜日は3月の陽気が1日に濃縮されたような、晴れたり曇ったり、そしてちょっぴり雨が降って気温も暖かかったり急に寒くなったりという一日だった。
さて、ようやく重い腰を上げて向かったのは神奈川県厚木市の不動尻。ミツマタの群生を見るためである。
広沢寺から林道を歩いて約1時間。ちょうどよい足慣らし。
広沢寺にある無料駐車場にスーパーカブを停める。途中、ミツマタを見に来た方々のための臨時駐車場がいくつか設置されていた。
ところがそこには1台も車が停まっていなかった。広沢寺の駐車場も全体の4割程度という少なさ。
「やっぱり最盛期は過ぎているんだな」と思わざるを得なかった。
矢作先生と出会う
今朝は寒かったので薄手のダウンとそのうえにウインドパーカーをきている。バイクを降りてもそのままの格好で歩き始めた。
不動尻へ向かう道はもう何度も通っている。この前歩いた時は材木を切り出して運び出すところだった。
その道を歩くと杉の枝が丁寧に払われて明るい森が続いている。まっすぐに伸びる木立の中を歩くのは気持ちが良い。
少しずつ薄着になりながら、前を行く夫婦連れを追い越したり追い越されたりしながらいくと、山の神トンネルに着いた。
この少し手前で追いついた母子連れはそこから左にそれてトンネルの上の道に向かっていった。
こちらはここで休憩してヘッドライトを出す。
すると後からやってきた家族連れがライトもつけずにトンネルの中に入っていった。トンネル内に照明はない。少し中に行けばもう真っ暗闇である。
おそらく出口の明かりを頼りに歩いていったのだろう。幸い道路はしっかり整備されていて、穴などは空いていなかった。でももし穴だらけだったらと思うとぼくは怖くてライトなしには歩けない。
だいぶ登っていくとその先にミツマタの群生のさきがけがみえた。一部離れて密生しているのである。
遠くから見ても白っぽかった。つまり黄色い花はもう終わっているようだった。
近づいてみると所々に少しばかり黄色がのこっていたが、ほぼ白くなっていた。
また少しばかり登っていくとそこが不動尻のミツマタ群生地である。やはり今年は少し遅かった。残念ながら黄色い花はほぼ終わっていた。けれど、白い萼はしっかり残っていてまるで白い花が咲いているように見える。
それはそれでなかなか綺麗だった。そしてそれが群生しているとなるとそれは美しい。
まだ11時ではあったがもう腹ペコだった。ここの広場は綺麗に整備されてベンチやテーブルが設置されていた。
ほとんどのベンチは濡れていた。雨が降ったのか、それとも朝露にぬれたのか。
一部乾いているベンチもあったが、ぼくは奥の濡れたベンチにマットを敷いて腰掛け、すぐにお湯を沸かし始めた。
昼食に持ってきたのはアルファ米の赤飯だ。これが結構美味い。
そうしてふと道路側の方を見ると、見たことがある顔が目に止まった。
「えっ、ひょっとして矢作先生?」
そう思って改めてしっかりと見ると、なんとこちらに会釈をしてくれた。
そのゆったりした動きをみて間違いなく矢作直樹先生であることを確信した。
どうやらご夫婦できているようだったので声はかけなかったが、こんなところでお見掛けするとは思いもよらなかった。
先日、先生の「人は死なない」を読んでいて、若い頃はかなり山に憑かれていたことを知っていたので、ここで会っても不思議はないと納得したのである。
しばらくして先生は柔らかい物腰のまま下っていかれた。
ぼくは赤飯を食べ、それから不動の滝を眺めてから下山を開始した。
広沢寺温泉につかって心機一転
下りは途中から煤が谷方面に下る。
こちらは昨年数回通った谷太郎川に沿って道がつけられている。
なだらかな道なので脚に負担はかからないが、谷間を行くのでところどころ危険な箇所がある。
そんな場所は当然道幅は狭く、少し川に向かって斜めっていたりする。
もし足を滑らせたら川にハマる。それどころか、途中の岩や木に当たって怪我をするだろう。
そんな場所は特に慎重に気を引き締めて通り過ぎる。
谷太郎川には中流域にマス釣り場がある。中流域と言っても下流域からもうすでに山岳渓流なのであるが。
その下流域と上流域が一般の釣り場となっている。
昨年はそのどちらにも挑戦したが、釣果はゼロだった。
そんな思いを胸に抱いて川を覗きながら下っていくと、その上流域で釣り人と出会った。
お互いに軽く会釈をする。釣り人は長い竿をもっていたのでおそらくテンカラだろう。
少し眺めていたら、10センチくらいの魚を釣り上げた。
魚の種類はわからない。それからまた下り始めた。
1時間半ほど降ると煤が谷のバス停に出る。
バスの時刻表を見ると次のバスまで50分。
それに直接広沢寺まで行くバスはなかった。
歩くしかないか。
広沢寺から不動尻、そこから煤が谷へと9.5キロほど歩いた。
煤が谷から広沢寺までは6キロ弱。まあ歩ける距離だしバスに乗るより早い。
今回は、ミツマタを見るだけでなく、温泉に浸かるのも目的の一つだった。
それは、この4月から異動により新天地に赴くことになっていたからである。
新天地とはかなり大袈裟だが、仕事内容はほぼ同じであるのに大きく環境が変わり、やり方も職長の方針でかなり異なっているからである。
そこで思いついたのが、温泉でこれまでの垢を落として新しい勤務地に向かおうということだった。
清川には道の駅がある。その近くまで来ると急に曇りだし小雨が降ってきたので急いで道の駅の建物の中に入る。
すると入り口を入ってすぐのところに地元の農産物が並べられていた。
そこにめずらしい”のらぼー”があったのでそれを一と束買う。100円だった。
そこからゆっくり下り坂を歩いていく。雨は上がっていたが気温が急激に下がっていた。
左手にはずっと飯山観音裏の白山から続いている尾根が小鮎川の向こうに見えている。
しばらく歩くと別所温泉の看板があり、そこを通り過ぎるとすぐに右手に折れる道がある。広沢寺はそっちだ。
少し上り坂になったところをどんどん進んでいくとだんだん暑くなってきた。道路には多くのバイクが行き交っている。
下り始めると右手にゴルフ場につづく道路があり、その道から出てくる車があった。
その林の中の道を進んでいくと、こんどは”かぶと湯”の看板が見えてきた。
意外にも厚木には温泉が多いのだ。厚木の温泉巡りも楽しいだろうな。
だが、今回は広沢寺温泉と決めている。ここの露天風呂は素朴な風情がたまらない。
空は曇っていたが気温がさっきより上がっていた。
広沢寺バス停から脇道に入る。少し戻るようにして坂道を登っていく。途中に鐘ヶ嶽へ向かう細い道が右に並んで続く。
道なりに進んでいくと広沢寺に続く七沢川沿いの道に出た。そこを右に曲がってさらに登っていくと、多くの登山者(ご老人ばかり)が下ってきていてすれ違う。
ようやく駐車場まで戻ってきた。そこから路地に入っていくと目の前に玉翠楼が見える。ちょうど神奈中バスが玄関前の広場に止まっていた。ここは折り返し地点になっている。
玄関を入るとそこにはたくさんの登山靴が脱いであった。
靴の紐を解いていると旅館の人が現れた。
「お風呂に入りたいんですが」
「はい、どうぞ。千円になります」
すると、領収書代わりに次回の入浴割引券をくれた。
日帰り入浴は露天風呂だけである。露天風呂には中庭に降りて下駄に履き替えていく。
中庭には池があり、赤い橋がかけてある。
露天風呂の男湯にはこの赤い橋を渡ってもよいし、池の淵を通っていってもよい。
暖簾をくぐり扉を開けて中に入ると6、7人が中にいた。それほど広いわけでもないのでこれでもう満杯という感じだ。
女湯の方はみたことがないのでわからないが、男湯の方の洗い場は3つ。ほんとうに露天風呂だけで内湯はない。脱衣場から湯船までもほんの一歩ほどである。
ひさびさに歩いたし、アスファルトの上をかなり歩いたので足の裏がひりひりした。
七沢の温泉と同じで広沢寺の湯もぬるぬるしている。顔も体もごしごし洗ったのにお肌はすべすべだ。
これで気持ちがすっきりした。心機一転新天地で頑張れるような気がした。
湯上がりにノンアルコールビールを飲もうと自販機に500円玉を入れたが受け付けてくれない。おそらく新500円のせいだろう。何も買わずに外へ出た。
すると逆にぞろぞろと登山者が旅館に向かって歩いてきた。
最後に
広沢寺温泉の隣には七沢温泉がある。
そしてここ七沢の地には「盛升(さかります)」という厚木地元の造り酒屋がある。
以前からそのことは知っていたが、これまで飲んだことがなかった。
伊勢原方面から向かっていくと、右手に小金井酒造というその蔵元があり、少し先に小金井酒店がやはり右手にある。
この小金井というなまえの関連に遅ればせながらようやく気づいた。
「よし、ここで盛升を買って帰ろう」
店内に入ると様々な種類の盛升が置いてある。
選んだのは純米辛口の四合瓶。
清川の道の駅で買ったのらぼーのおひたしを肴に味見をする。
一口飲んでの感想は、濃い。
ん、そしてなんだか強いぞ。
ラベルを見てみるとアルコール度は15度。
やっぱりちょっと強い。
そしてほんとうに辛口でそれもかなり辛口。
正直言ってちょっと酒飲み向けかな。
こんどはもう少し軽めのやつを選ぶこととしよう。
なお、予約をすれば蔵元の見学もできるとお店の方が言っていたので、興味のある方はぜひ行ってみてください。
では、このへんで
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