久しぶりに心理学について。
頻度は減りましたが定期的に研修は受けていて、その研修で話された内容をまとめました。
テーマは、TA(交流分析)による手法で研究された「発達障害の子を持つ母親の研究」です。
それは、研究結果としてだけではなく、当事者の葛藤や苦悩が感じられるものでした。
発達障害とはなにか
ここでは発達障害とはどういったものなのかを簡単にまとめます(厚生労働省「発達障害の理解」より)。
なお、診断には世界基準があり、診断は医師が行います。
また、それぞれの障害は重なり合うものも多く複雑です。
そしてこれらは、通常低年齢で発現する脳機能障害です。
1.広汎性発達障害(PDD) 自閉症、アスペルガー症候群等
特性は、①社会性の難しさ、②コミュニケーションの難しさ、③興味・関心の狭さ、偏り(イマジネーションの難しさ)など。
2.注意欠陥・多動性障害(ADHD)
特性は、①忘れっぽく集中できない(不注意)、②じっとしていられない(多動性)、③考える前に行動してしまう(衝動性)など。
3.学習障害(LD)
知的な遅れはないのに、頑張っても学習の効果が上がらず、学習の得手・不得手に大きなばらつきがみられる。
4.発達性強調運動障害
本人はそうするつもりがないのに行ってしまう(不随意運動)。
5.知的障害
発達機に明らかな遅れ(IQ70以下)がある。
TAの予備知識
TAとは、Transactional Analysis を略したもので、日本語では交流分析といいます。
それは、つぎの理論や分析で構成されています。
1.心の成り立ちとその機能が理解できる「自我状態」
2.よりよい人間関係をつくる「やりとり分析」
3.人を元気にすることができる「ストローク」
4.自分自身の生き方、ものの見方を示す「人生の立場」
5.何度も繰り返されるいやなやりとり「心理ゲーム」
6.自分の時間の使い方を知る「時間の構造化」
7.自分の生き方のシナリオである「人生脚本」
「発達障害の子をもつ母親の研究」では、主にTAの「人生の立場」の変化と「ストローク」分析を行っています。
人生の立場とは
人は生まれてきた時はOKーOKの関係です。OKであるとは、受け入れられていて、肯定的で心地よいと感じている状態です。
OKーOKとは、私にとって私もあなたもOKという意味です。
ところが、成長するに従って、私が周囲に受け入れられないと感じる場面も出てきます。
また、「他人を信用することができない」と感じてしまうような経験が重なると、「他人はOKでない」というような姿勢を身につけるなど、生まれてきた時の基本的な信頼が揺らいでいきます。
このように、自分と他人との関係を表すと、以下のように4つに区分できます。
この立場の変化についてみていきます。
ストロークとは
ストロークとは、相手の存在を認めて行うすべての行為をいいます。
たとえば、あいさつ、握手、うなずき、微笑み、ほめる、励ます、頭をなでる、抱きしめるなどです。
ストロークには、こうした肯定的なものばかりではなく、つねる、なぐる、にらむ、叱る、舌打ちをするなど否定的なものもあります。
ひとは、ストロークが不足すると、肯定的なものばかりではなく、否定的なものであっても受け取ろうとします。
つまり、最悪なのは無視されることです。それは自分の存在を否定されることになるからです。
研究結果
この研究は講師が行ったもので、さまざまな発達障害を持つ子どもの母親にアンケート調査を行いました。
最初の難関は、アンケートに答えてもらうということだったそうです。
アンケート調査は500名に対して行われました。そのうち解答があったのは2割ちょっと。そのほとんどが講師と直接関わりのあった人たちだったそうです。
つまり、信頼関係が築けていないとなかなか回答してもらえないということです。
回答しない理由は、「もうあの時のことは思い出したくない」ということだったようです。
研究方法は、子供が発達障害だと分かった時の心理状態(人生の立場)はどうだったのか。そして現在どう変わったのか。
心理状態が変わったのであれば、それはどのようなストロークが影響しているのか、ということでした。
結果は、始め第4の立場(私もあなたもOKでない)だったものが第1の立場(私もあなたもOK)に変化した方が8〜9割だったそうです。
そして子育てが前向きになれたストロークは、わが子への直接的な働きかけや褒め言葉、母親の子育てへの評価、母親の気持ちの傾聴だったということです。
なお、実際は自我状態についても調査しており、障害の程度に関わらず、親の自我状態のうちCPよりもNPのほうが高かったとのことです。
CPとは支配的な親で、責任感や正義感が高い親の自我状態です。
NPとは療育的な親で、思いやりがあり世話好きな親の自我状です。
この結果は、NPが優位でないと発達障害の子育ては難しいということなのではないかと私は考えました。
自我状態についてはこちらをどうぞ。
変化に至る過程
第4の立場から第1の立場に変化した人たちは、一様に次の経過を辿ったそうです。
まず、子供が発達障害であると知った時の「驚き」。
そんなはずはないと「否定」する。
つづいてどうして我が子が? という「嘆き」と「怒り」。
そして「諦め」、なるようにしかならないと受け入れる「適応」。
そこから、今から力を伸ばしていこうと取り組みを開始する「再構成」が始まる。
やがて、我が子と自分を肯定的に受け止め、我が子に感謝し、他者にも感謝する。将来の希望に向かっていく「受容」。
こうした長い道のりを経て、前向きな子育てや生き方になっていったのです。
最後に
自分の子供が障害を持っていることを知った時の心の状態(人生態度第4の立場)から立ち直るまで、怒りや諦めなどを多くの時間をかけて体験したことを思うと、アンケートに答えてくれた方々はその過程を振り返ることになり、苦しい作業であったことが想像できます。
こうした体験を通してほとんどの方が第1の立場になっていったのです。
そして、その過程で周りの方々のストロークが支えになっていました。
認めて褒めてあげるという肯定的なストロークの大切さがとてもよくわかります。
支援者は、気持ちを聴いてあげたり、アドバイスをするなど関わり続けることがとても大切だということがわかります。
では、このへんで
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