Hakuto-日記

定年後を楽しく、生きたい人生を生きる!

思わず感謝の念が湧き起こる山 【男体山】その1

いざ、男体山へ

奥白根山登山の後、ゲリラ豪雨の中を日光中禅寺湖に移動した。

菖蒲ヶ浜のキャンプ場では週末のキャンプを楽しむ人たちがタープの下で思い思いに過ごしている。

湯川の河口は茶色く濁っていたが、その霞んだ向こうに男体山が静かに横たわっていた。

明日はあの山に登らせていただく。

どうか雨が上がってほしいと祈るばかりだった。

 

雨上がる

周りでは大勢のキャンパーが夜を楽しんでいる

菖蒲ヶ浜についてテントを張る場所を探していると、一瞬雨が止んだ。

この間にテントを張るんだ。

そう思って急いで水捌けの良い場所でさらにトイレや炊事場の近い場所を探す。

やっといい場所を見つけてテントを張ろうとした時には再び雨が激しく降り出していた。

モンベルムーンライトⅡ。自転車日本一周で使っていたテントである。

久しぶりではあるが、昨日も使ったので短時間で張り終えた。

ところが雨に濡れて乾かないまま畳んできたせいか、あるいは雨の中で張ったせいなのか、テントの中に水が溜まっていた。

水を排出しようと雑巾を探すが、いつも入れてあるザック外側のネットの中に入っていない。どうやら忘れてきたらしい。

仕方がないので汗拭き用の手拭いで水を吸わせて排出した。

また、テント全体が濡れていたので頭や体が本体に触れないように気をつけた。触れるとそこから水が侵入してしまう。

早々に夕食を食べ終え、歯磨きとトイレに外へ出た頃には雨は止んでいた。

周りの楽しそうなキャンプを満喫している人々の声を聞きながらシュラフにくるまる。

 

 

いざ、男体山へ

 

夜中にも雨は降らなかったようだ。

ほとんどの人がまだ寝ている早朝に起きて、薄暗い中でテントを畳む。

その後炊事場で朝食。昨夜の残りご飯を食べる。

6時10分頃に荷物をまとめ湯川の橋を渡ってバイクのもとへ。

濡れたシートを拭き、登山に不要なものを入れたバックを荷台に括り付ける。

ザックを背負い、男体山登山口の二荒山神社中宮祠へ向かう。

6時30分、駐車場の隅にバイクを停め、石段を登って門をくぐる。

上の駐車場脇にあるトイレに行き、軽く体をほぐす。

すでに登山者は多数集まっていて、前の人に続いて再び石段を登り、脇の門から中に入る。

入るとすぐに登山届けを記入する場所がある。記入した登山時刻は6時40分。社務所に届け出て入山料千円を支払う。

すると「どうぞひとつお受け取りください」と言われて、箱の中からお守りをひとつ受け取った。

 

 

そこから再び鳥居をくぐって霊峰男体山に足を踏み入れる。

こうした儀式のようなかたちで入ってくると、まさにこれから登る山が御神体であると理屈抜きに感じ取ることができる。

こうして鳥居をくぐるとしばらく石段が奥に続いている。右手には靴清め所があり、下山時に靴を洗わせてもらった。

やがて石段が終わり、一合目に到着する。ここからが本格的な登山だ。

 

一合目

滑りやすい急な斜面を真っ直ぐに登っていく。

なんとなく調子がよくてぐんぐん登っていった。だが、きつい坂をいつまでも調子良く登ることはできない。やがて失速。この後はいままでの調子の良さはどうしたのか、苦しい登りが続いた。

ようやく林道に出る。ここが三合目である。左に少し登っていくと中禅寺湖が木々の間から見えた。林道で呼吸を整え、マイペースで歩いていくと、後ろから抜いていく人がいたり、逆にこちらが抜いていく人もいる。

しばらく舗装された林道をいくと多くの人が休憩している場所があった。そこが四合目の鳥居だ。ここまで1時間。だがもうすでにバテていた。

 

四合目

四合目の鳥居をくぐり、短い石段を登ってから急な斜面をジグザクに登っていく。もう先ほどの元気はなく、できるだけ体力を温存しながら登る。エネルギー補給のためフルグラをポリポリ食べたりしながら進むと、さきほど追い抜いた男性に追い抜かれた。

少し進むとさっき追い抜かれた人が休んでいる。

「きつい登りですね」と声をかけると

「休み休みでないと登れないです」と言われたので「ほんとうに。私も同じです」と答えた。本当にきつくて内心今回は途中リタイアとなるかもと思っていた。

こうして抜きつ抜かれつしてその度に一言二言ことばを交わす。その方は見たところ70を過ぎたくらいの方。

このあと、下の急登で追い抜いていった人たちに次々に抜かれていく。五合目の避難小屋を過ぎるとときどき中禅寺湖が目に入った。それを見るたびに元気がでる。

ともかくここまでは苦行だった。しかしこれに耐えて登るのが修行だと思いながら、けれど何度も休みながら一歩一歩登っていく。水もいつもよりたくさん飲んでいた。

五合目の先からがれ場が現れはじめ、それが六合目まで続く。

 

六合目

六合目から少し緩やかになった樹林帯の中を進む。ここで少し元気が戻る。

再びがれ場が現れ始め、慎重に登っていくと何人かの人たちが下ってきていた。

その中の二人連れに「もう下山ですか、ずいぶん早ですね」と声をかけると

「途中で下山です。家内が転んで背中を打ちましてね」と後ろを指差す。

「それは辛い下山になりますね、お気をつけて」

なるほど、確かに急で危険ながれ場である。ただ、背中を打った? ザックは背負っていなかったのだろうかという疑問が浮かんだ。

ともかく自分も怪我をしないように慎重に登らなくてはと、今一度心を引き締める。

 

再び避難小屋が現れ、そこが7合目。多くの人が休んでいる。

その中に十数人の大集団がいた。失敗したなと思ったのは、その大集団の出発した後についていってしまったことである。

その集団が微妙に遅い。みたところみんな高齢者である。話を聞いているといろいろな山に登っているようだ。

しばらく後ろについて登っていたが、さすがに遅すぎる。その後道幅が広くなったがれ場で一気に追い越した。

無理をするとその後がきつい。けれどもその後追い越されることはなかった。

がれ場は八合目まで続いている。鳥居をくぐりその先の祠のあるところが八合目だ。ここの滝尾神社にお参りしてから横の平な石に腰掛けて休憩する。

 

八合目

すると、先ほどから何度も抜きつ抜かれつの男性が登ってきた。ここで、「きついですね」以外の会話をする。

「昨日はすごい雨でしたね。こちらでは1時半頃から雨が降りだしたそうですよ。今日も午後から降るかもしれませんね」と菖蒲が浜キャンプ場で仕入れた情報を話す。

「昨日はどこかに登られたのですか」

「奥白根に登りました」

「わたしと同じですね」

そうしてその方はロープウェイで帰ろうとしたら雨でしばらく運休になったことを教えてくれた。

ぼくのほうは菅沼にキャンプをしてそこから登ったことやバイクで来ていることなどを話す。

「バイクで日本百名山を回っているのですか」と訊かれたので

「いちおう近いところはバイクで回っています。けど、スーパーカブで高速が乗れないので遠くはちょっと」

「いま、どのくらい登られたのですか」
「今回で21です」
「そちらは?」
「65です。北海道、東北は全て登りました」

などという会話をした。

八合目のあともすこしがれ場が続き、そのあと樹林帯に入る。

 

つづく

 

 

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