7月31日、玉川温泉をチェックアウトし、乳頭温泉に向かう。
玉川温泉と同じく、乳頭温泉でも5泊の予定だ。
どうも玉川温泉より素朴な宿らしい。
今回の場所選定は家内任せなので、逆に予備知識が少ない分だけワクワクする。
果たしてどんなところだろうか?
田沢湖畔を散策
途中、田沢湖畔で下車し、バス停近くのコインロッカーに荷物をぎゅうぎゅう押し込んで、湖畔を散策する。水の色が綺麗な湖である。水深は日本一らしい。残念ながらコロナのこのご時世(感染対策のみならず経営上の問題もあるらしく)遊覧船は運行していなかった。
左手奥ではカヌーの団体が練習しており、正面は観光客たちがスワンボートに乗っている。その中にSUP(サーフボードのような板の上に立って漕ぎながら進む)に小学生くらいの子供2人を載せたお父さんらしき人が右に行ったり左に行ったりしていた。
右手にずっと歩いていくと、浮ロープで区切られた中を海水浴ならぬ湖水浴している家族連れがたくさん泳いでいる。近づいていくと砂浜に日除けテントがたくさん立てられていた。近くに停められた車のナンバーは「秋田」ばかりだったので、地元の人たちがやって来ているようだ。海に出るよりは遥かに近くで泳げるので集まってくるのだろう。
昼食のため近くのホテル兼食堂に入る。客は家族連れが1組いるのだが、係の人が見当たらない。家内が何度も声をかけてようやくゆっくりと現れた。メニューも大したものはなく、味も残念であった。
これから向かうのは、乳頭温泉郷の黒湯という茅葺き屋根の建物がある温泉宿だ。そこでも自炊棟に泊まるので、宿からは食材を持ってくるように言われていた。そこで、食料調達のため田沢湖駅まで出ることにした。
バスの時間が迫っていた。つぎの田沢湖行きのバスを逃すと14時過ぎまで1時間半ほど待たなければならないので、食後ゆっくりすることなくバス乗り場まで急いだ。
田沢湖駅では家内が食料の調達に行き、僕はベンチで荷物番をする。家内が戻って、次のバスの時間までにまだ1時間ほどあった。とくに待合室があるわけでもなく、青空の下、ただベンチでぼけっと座っていた。
ぼおーっと駅の建物を眺めていると、一見大きく立派な建物に見えるが、実は骨組みにガラスを嵌め込んだもので、その中に建物が建てられているものであることがわかった。
そして、その外側にはオリンピックカヌー代表佐藤綾乃選手の横断幕が掲げられていた。秋田県出身のようである。
黒湯温泉
田沢湖駅から路線バスに乗る。バスは山に向かって高度を上げていく。
バスに乗る前頃からそれまでの青空が曇り空に変わり、風も冷たくなってきた。走り始めて少しすると、案の定、雨が降り始める。それも強い降り方である。ところが、30分もすると雨は上がってしまった。夕立だ。
そして、バスに乗って約1時間、終点の乳頭温泉蟹湯前で降りる。そこに迎えにきてくれた黒湯の送迎車に乗り換え、少し道を戻ってから脇道をさらに登っていき黒湯駐車場に到着。そこから谷に向かって急な細道を下ると黒湯温泉がある。
案内されて建物の脇を抜けると中庭のようになった広場があり、そこに登山者らしい人たちが5、6人、ベンチに座っていた。
管理棟に入ると右手に多くの写真が貼ってある。それぞれ佐久間良子、中野良子、平泉成、柴田恭兵などと宿のスタッフたちとの写真だった。ここで撮影が行われたのであろうか。
管理棟で受付を済ませると、別の宿の人(大女将?)が案内してくれる。それほど大きくはない建物がいくつか建っている。しかし、いまひとつ建物の配置が飲み込めない。
管理棟には、喫茶と売店が併設されていた。残念ながら食材は置いていない。飲み物と土産物だ。もちろんアルコール類も置いてある。
管理棟の裏には混浴の上の湯があるらしい。
茅葺ではない2階建ての自炊棟(かなり古そうだ)に案内され、トイレの位置や電気のスイッチ、ガスの使い方などの説明を受けたが、なかなか全てを覚えるのは難しい。
炊事場は1階のみで、大型の冷蔵庫が2つ置かれていた。つやつやした木の階段を登った2階には小ぶりの冷蔵庫がひとつ置いてある。
炊事場には流しが3箇所あり、水道の水は流しっぱなしにしておくのだそうだ。真ん中の流しにはお湯が出ていて、こちらも出しっぱなしになっている。
ガズコンロは、現代風の2口のやつが1台で、そのほかに昔の鋳物の丸いガスコンロが3台置いてある。火力は、現代風のガスコンロが一番強かった。
我々の部屋は2階の8畳で、玉川温泉の6畳に比べると広いが、玉川温泉にあったような棚や押入れがない。そのため、布団はテーブルの上に載せられていて、そのほかにもう1台テーブルがあった。
畳の部屋の前には廊下がついており、ふすまで仕切られている。廊下の窓からは向いに茅葺の屋根が見えた。しかし、窓はサッシでリフォームされている。
その左手に茅葺き屋根の自炊棟がある。ここは昔ながらの味わいのある建物で、部屋には囲炉裏があった。しかし、窓を開けていると下の湯に行く人たちから丸見えである。
茅葺の自炊棟の脇を下っていくと、硫黄の煙が立ち上る源泉の池があり、ここは立ち入り禁止だ。その前に風雨に耐えられるようながっしりとした木製のテーブルとチェアが置かれている。
黒湯下の湯
その左側に黒屋根の下の湯があり、手前が女湯、奥が男湯である。
男湯の暖簾をくぐり、サッシのドアを開けると細長い土間のたたきがある。上がると板の間の脱衣場で、左右にかごが6つずつ置かれた棚がある。右側にはトイレもあり、洋式の綺麗なトイレであった。
現在は新型コロナウイルスの感染対策のため、カゴが一杯の場合は空くまで待つようにとのこと。なお、カゴを置く棚にはあと3つずつは置けるスペースがあった。つまり、18人は入れるということだが、いまは12人までということなのだろう。
脱衣場には左右にゴザが敷かれ、内湯の出入り口も左右に付けられている。真ん中には木製のスツールが2脚置いてあり、壁には時計が掛かっていた。
左右どちらからでも入れるが、右側の扉から内湯に入ると、すぐ左に3方と手前の一方の両端が少し仕切られ、ちょうど1辺の半分ほどが開いた洗い場がある。ここにしつらえた箱型の桶にお湯が流れ込んでいて、そのお湯をすくって体を洗うことができる。腰掛けも置いてあり、シャワーはないが、頭や体を流すにはお湯をすくうだけなので、意外と快適である。もちろん、洗面器と手桶も設置されている(腰掛けも含めプラスチックではあるが)。
さて、いよいよ入湯である。泉質は単純硫黄泉。青みがかった白濁の半透明のお湯である。浴槽は2メートル掛ける4メートルくらい。体感では40〜41度くらいだと思う。
そして、右のドアから外に出ると、囲いの上から緑の山々が見渡せる露天で、内湯より少し小ぶりな浴槽がある。こちらはすこしぬるくて、おそらく38度くらいだろう。2日目は小糠雨が降る1日だったが、そんな静かな中で、沢音と、時々聞こえるカラスの声を聞きながら、汗が出てくるまでゆっくりとお湯に浸かっていた。
なお、後日にちょうど係りの人がお湯の温度を測りにきて、内湯は41度、露天は41.5度ということだった。
上の湯
3日目の晴れた日に混浴の上の湯に入ってみた。
入り口を入るとすぐ左手に男の脱衣場がある。女性はその向こう側だ。
脱衣場を出て正面が内湯の入り口である。男性は右側から女性は左側から入る。ただし浴槽は一つだ。大きさは下の湯より一回り小さい。その向こう側に囲われた一人分の洗い場、その先に打たせ湯がある。
入り口をまっすぐ行った突き当たりから出るとそこが露天風呂である。
露天風呂は、ポスターなどに写真が載ったりしていて、山の斜面に囲まれていて塀などは一切ない野趣溢れる温泉である。浴槽は内湯と同じくらいの大きさだった。
入ったのは真昼間だったのだが、夕まぐれに入ると最高だろうなと思った。
なお、乳頭温泉には7つの湯があり、湯めぐりができる。この湯めぐりについてはまた次回に。
では、このへんで
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