新車を買えば、故障からは逃れられる。
そう思っていた。
ところが、あこがれの車を選んだばかりにその後も故障とお付き合いする羽目になる。
だた、それでもその車を選んでよかったと思う。
ほんとうに運転したくなる楽しい車だった。
あこがれの新車購入
ランサーEXのタイミングベルトを交換してからというもの、アイドリング中のエンジンの振動が激しくなり、窓ガラスがガタガタ鳴って、それがストレスになっていた。
それでも1年以上乗り、そろそろ替え時かな、と考えていた頃、昔に気になっていた車が100万円以上、安くなっていることが分かった。
その車というのは、フランスのシトロエンBXという車で、しかも、最初の頃はボンネットがFRP製だったが、今はスチール板に変わっているという。
FRPは軽くていいのだが、経年劣化で塗装がボロボロになるという噂があった。
スチール製でも重量は日本車に比べて軽いほうだった。
シトロエンという車を知ったのは、深田祐介氏の『新西洋事情』のなかで取り上げられていて、褒めているんだかけなしているんだかわからない評価で、とにかく個性的(あるいは合理的?)な車を作ることにこだわっていることが書かれていたように思う。
再読していないので間違っているかもしれないが、シトロエンCXというヒキガエルを潰したような車を運転していたある人が事故にあった。その時、車の後部を軸にしてくるくる回転し、後部座席に乗っていた子供だけが無傷だったというようなことが書かれていたと記憶している。
ともかく、ずっとそのように思ってきた。
どうも、天邪鬼なところがある僕には、そんなシトロエンが素晴らしい車に思えたのだ。
そうしてシトロエンに関心を抱くと、シトロエンの他の車種も少しずつ分かってくる。その頃、すでに販売はされていなかったが、「DS」という車が未来的なデザインですっかり気に入った。
「CX」は「DS」の後継車なのだが、デザインでは断然「DS」がお気に入りである。
「BX」はシトロエンの専売特許であるハイドロニューマティックが採用され、1本スポークのハンドルも特徴的だった。
その代わり、ボビン式のメーターはアナログ式のメータに変更され、スタイルも、シトロエンらしさ(洗練されてないところ)と大衆向けのデザインとが融合したデザイン(マルチェロ・ガンディーニのデザイン)で、シトロエンの中ではとても売れた車である。
それに、「CX」は大型車で3ナンバー、「BX」は小型車で5ナンバーなので、値段も安かった。
「BX」は、ガソリン車では1600と1900とがあり、ディーゼルもあった。それにセダンというのがハッチバック式になっていて、このほかにブレークというバンタイプのものもあった。
前置きが長くなったが、そろそろ買い換えようと思い、一応シトロエンも調べてみると、100万円も安くなっていたこと、それに、その頃販売していた西武自動車には全国で残り5台、マツダのユーノスでは既に在庫なしという状態だった。
今を逃すともう乗れないかもしれない。
そう思うと無性に欲しくなる。妻は車には全く関心がなく、おかげで反対されることはなかった。
こうして清水の舞台から飛び降りるつもりで新車、それも外車を購入したのである。
残り5台の中から選んだのは、BX最終型のTRIというセダン。色は赤(エンジに近い)、排気量は1900(正確には1905CC)、左ハンドル、1本ワイパーというもの。さらにサンルーフがついていた。
最終型なのに不具合が
そのほか、普通の車と違うのは、ハイドロニューマティックというもので、サスペンションのバネがなく、代わりにオイルとガスで衝撃を吸収する。このオイルでパワーステアリングのオイルも兼ねており、合理的な考え方? になっている。
昔はブレーキオイルも兼ねていたと聞いたことがあるが、全て一緒だと、それはそれで問題がある。
というのは、どこか1箇所不具合が出ると、他にも影響が及んでしまうからだ。
電車で各線の乗り入れが流行っているが、どこかで遅延が生じるとそれが全線に及んでしまうのと同じである。
そればかりではなく、前々から様々な故障が起こることが多い車だった。それでも、最終型となれば、不具合も改善されているだろうと思った。
しかし、これまでのランサーEX同様、さまざまな不具合と修理代がかさむ車になっていく。
もちろん、最初の数年間は何事もなかった。
あれは、乗り始めて3年目か4年目くらいだったろうか。
夏の暑い時期、突然エアコンが効かなくなったのだ。
ランサーの前に乗っていたミニカにはエアコンもクーラーもついておらず、背中にタオルを敷いて汗だくで乗っていた。しかし、いまの日本でエアコンなしはちょっときつい。
それに、あの故障だらけのランサーだって、エアコンは壊れなかった。
ボンネットを開けてみると、エアコンは三菱製だった。また三菱、というわけではなく、西武自動車の整備工場の話では、構造上、パイプがつまり安いとのことだった。
こうして、最初の洗礼をうけ、約10万円の出費となったのである。
最後に
シトロエンBXに乗って、何が一番良かったかというと、それはシートである。
たまたま、最終型はスポーツタイプのTZIのシートを流用したこともあり、すっぽりと体を包み込み、膝下までシートが支えてくれたので、長時間運転しても疲れなかった。
柔らかすぎず硬すぎず、絶妙なバランスなのは特筆すべきで、やはり、座る文化が長いフランスは違うなーと思ったものである。
シトロエンを運転する前の儀式として、エンジンを始動すると、フロントがむくむくと浮き上がってくる。さらに少し遅れて後部も浮き上がって、「さあ、走るぞ」と、走る体勢が整ったことを教えてくれるのだ。
これを毎回味わえることが楽しくて、そのために車で出かけたようなところもあった。
また、回を改めてとんでもない不具合を紹介するが、そんな修理にかかる費用が次の新車を買えるくらいにさえならなければ、まだまだ乗り続けたかった。
では、このへんで
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スピードがわからない 【車のこと その6】 - Hakuto-日記