(プリントをデジカメで複写)
あなたは富士山に登ったことがありますか?
中には何百回と登った方がいらっしゃいます。
驚くことに、1万回という桁外れの方もいるとか。
もう人間とは思われません。
まあ、そこまですることもないと思いますが、まだ一度も登ったことがない方は、できれば一度くらい登ってみてはどうでしょうか。
今回は、初めて登った富士山の思い出です。でも2回めはありません。
破れたズック靴
昔の話になるが、「富士山に登ってきたぞ」という職場の先輩がいた。
違う部署の先輩だったが、それを聞いたその部署の部下の女の子が「私も登ってみたーい」とつぶやいた。
またまたそれを聞いていた同僚が、山登りが好きな人に「富士登山に行きませんかー」と声をかけて回る。
そうして集まったのが6人。男性4人に女性2人。もちろんその中に僕もいる。
登ってきた先輩の話を聞けば、「おむすびくらいの岩がゴロゴロしていて、歩くと靴が砂に埋もれちゃってなかなか前に進まない。買ったばかりのズック靴は降りてきたときには穴が空いちゃってた」と言うことだった。
我々6人が富士登山に挑戦することにしたのは85年8月17日。5合目から頂上を目指す。
メンバーで一番の年長者はこの僕。山登りをしたことがないのが2人いて、一人は先輩から話を聞いた女の子。もうひとりは入社したばかりの男の子で、こちらはその女の子の後輩で半ば強制的に連れてこられた。けれど、学生時代にサッカーをやっていたとかで体はがっしりしている。
その他のメンバーは同じワンゲル部で、数年前に一緒に尾瀬の至仏山に登った仲だ。
この日は土曜日だったが、当時は休みではなく半ドン(半日勤務)だった。だから仕事の後、東京からバスで向かうことになった。ただ、その頃僕は相模原に住んでおり、どうせ帰りは一緒になれないので、はじめから別行動することにして休暇を取った。
富士山までバイクで走る
富士山までどうやって行くことにしたのかというと、オートバイに乗ってだ。
前年に免許を取って北海道をツーリングし、バイクが楽しくて仕方がない時期だった。
相模原から国道246号線を通り、籠坂峠を超えて山中湖に出る。そこから富士吉田市に行き、富士浅間神社の横を入っていくと富士五合目まで行ける林道がある。
林道を登っていくと道幅は狭くなり、ヘアピンカーブの連続だ。ところが高度が上がるに連れてどうも力が出ない。吹き上がりが悪く息継ぎをするような感じだ。覚えていないがエンストもあったかもしれない。
途中、見通しのいい場所で休憩して下を眺めるたび、だんだん富士吉田の街が小さくなってくる。そうしている時に1台のオフ車とすれ違う。
かなり急なところもあったが、どうにか5合目までたどり着く。駐車場にバイクを止めて荷物を下ろし、エンジンの調子を見てみる。するとアイドリングが異常に低い。
「そうか、気圧が低いせいなんだ」と、ようやくエンジンの調子が悪い原因がわかった。つまみを回してアイドリンが高くなるように調整する。
そこからスバルライン5合目駐車場まで歩き、他の仲間がやって来るのを待つ。それまでにはまだたっぷり時間があったので、写真を撮ったり休憩所で休んだりしてバスが到着するのを待っていた。
高山病か
スバルライン五合目からのコースは吉田ルートを登る。頂上でご来光を仰ぎたいので、それから逆算して夜中に出発することにしていた。
確か午後7時過ぎにバスが到着したと思う。ここで夕食を食べ、8時半頃ヘッドライトを点けてぞろぞろ歩き出す。
はじめはほぼ平坦な道を行き、登り始めるところで装備の確認をした。
靴紐を締め直していると、一番若い男の子が酸素缶を持ってきているというので、皆で笑った。一番若くてスポーツマンだからあまりの用心深さを笑ったのだ。
しばらくは順調に登っていたが、七合目にある山小屋が見え始めた頃、その若手が調子が悪いと言い出した。酸欠のようだ。先程はみんなで笑ったけれど、彼の持ってきた酸素缶の出番が来た。それを吸うと幾分楽になったという。けれど、しばらくここで休んでから出発した。
歩きだしてみても、ひどくはならず大丈夫だというので一緒に登る。けれどゆっくりと行くことにする。
うるさいと怒られる
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八合目の山小屋を過ぎたあたりから足取りが重くなってくる。登り始めてから続く行列に結構気を使い、そのうえずっと単調な登りで結構辛かった。いつもは単独行をしているのでそれもあるかもしれない。
そこで、気分転換にラジオをつけた。すると、道端で休んでいる人もいるのだからやめなさいと、近くを歩いていた登山者にたしなめられた。実は他にもラジオをつけている人がいたのでその真似をしただけだったのだが、思いが足りないことを反省し、しばらく恐縮しながら歩くことになった。
夜明けが近づいていたが頂上まではまだ遠かった。それに眠くて仕方がない。耐えきれなくなって休憩し、道端に座り込んで目を瞑る。すると、後ろから来た登山者から「そんなところで寝てると凍死するぞ」と注意された。
脅かされて立ち上がり、再び歩き始める。そうして本八合目付近で夜が明け始めた。河口湖の周りにあった明かりが薄くなり、湖面が見える。
幸い天気もよく風もない絶好の条件。しばらくドラマチックな空の色の移り変わりを楽しむ。しかし気温は0度まで下がっていたので、じっとしていると寒い。
あとから頂上にいる他の登山者から聞いたところでは、頂上まで登ると曇っていることが多く、そのためご来光が見えないことがあるということだった。ただ遅れてただけだけど、八合目で迎えた夜明けが正解だったかもと思う。
全員登頂す
こうして全員無事に吉田・須走口の山頂に到達した。ただ、時間が遅くなったことや酸素を吸っているものがいることからお鉢巡りはしないで下山することにする。
下りは上りとは違う道がついており、そのとおりに降りていった。こちらは上りとは逆に踏んだところが沈み込むのでちょっとずつ余計に下ることができる。ズック靴に穴が開くとしたらここだな、と思った。
下りは楽な上に景色を眺めながら(もちろん下を見ないとならないが)下ることができる。しかし、ずっと同じ景色なので、単調さに耐えなければならないのが欠点だ。
こうして下りは順調に降りてきた。富士登山の成功を祝い、五合目のレストランで祝杯を上げた。
バイクで林道を下る
ここで皆と別れてバイクで帰るのだが、これが大変だった。
登るときは山の上だけ見ていればいいが、下りの場合は道の下にずっと続く山裾が見え、街が見える。なんだかそのまま下まで落ちていきそうな気がしてくる。その恐怖に耐えながら、体をぐっと後ろに引いてヘアピンカーブを曲がっていくのである。これは堪えた。下まで無事に降りてきたときにはホッとすると同時にもうクタクタだった。
そのあと相模原まで帰らなくてはならず、何度も休憩しながらやっとの思いで家までたどり着いた。バイクを降りたとき、一瞬膝の力が抜けた。
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まとめ
バイクで五合目まで行けるの?
どうも現在は林道では行けないみたいです。
でもスバルラインを使えば行くことができます。
なお、昔は頂上までバイクで行った人がいるそうです。
富士登山を終えて抱いた感想は、富士は遠くから眺めるほうがいいというものでした。
富士を何百回も登る人は修験道を極める修験者のような気がしてなりません。
忍耐強さに敬服します。
では、このへんで
乗って行ったオフロードバイクについてはこちら。
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