Hakuto-日記

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「老い」について 〜映画『0.5ミリ』を観る

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50代の方にお聞きします。

 

最近、「物忘れが多くなったなあ」とか「体力が落ちたなあ」とか感じていませんか。老眼で小さい文字が見えづらくなったりしてますよね。

 

わたしはもう60代になりましたが、これらのことは50代の頃から感じていたことです。

 

はじめは認めたくはないけれど、だんだんと認めざるを得なくなる。そんな流れをおそらく多くの方がたどっていくことになると思います。

 

また、ひょっとしたら自分でも大変なのに親の介護で毎日くたくたになっているという方もいることでしょう。

 

たまには映画でも見て、そうした現実から逃避したい、何もかも忘れたいと思うこともあるでしょう。

 

ところが、こうした現実をつきつけてくる『0.5ミリ』(2014年11月全国公開)という映画を見てしまいました。

 

今日は、その『0.5ミリ』について紹介し、感想を書きたいと思います。

 

 

 

【目次】

 

  

映画紹介

 

監督・脚本は安藤桃子。主演は安藤サクラ。フードスタイリストとして母親の安藤和津。エクゼクティブプロデューサーは父親の奥田瑛二。つまり安藤家(奥田家)がこの映画に関わっています。

 

ツイッターでも述べていますが、さらに柄本明、角替和枝という安藤サクラの義理の両親も出演しています。

 

原作は監督の同名の小説で、監督の介護体験から着想を得て書いたものだということです。

 

そしてなんと3時間越えの長〜い作品です。

 

受賞歴 

受賞歴もすごくて、ウィキペディアによれば、

 

  • 第39回報知映画賞 作品賞、助演男優賞(津川雅彦)
  • 第88回キネマ旬報ベスト・テン 主演女優賞(安藤サクラ、『百円の恋』と合わせての受賞)、新人男優賞(東出昌大、『アオハライド』『寄生獣』、『クローズEXPLODE』と合わせての受賞)
  • 第38回日本アカデミー賞 優秀主演女優賞(安藤サクラ)
  • 第69回毎日映画コンクール 女優主演賞(安藤サクラ)、脚本賞(安藤桃子)
  • 第57回ブルーリボン賞 主演女優賞(安藤サクラ、『百円の恋』と合わせて受賞)
  • 第10回おおさかシネマフェスティバル 2014年度ベストテン・第3位(日本映画の部)、助演男優賞(坂田利夫)
  • 第29回高崎映画祭 主演女優賞(安藤サクラ、『百円の恋』と合わせての受賞)、新進監督グランプリ(安藤桃子)
  • 第24回日本映画批評家大賞 作品賞、主演女優賞(安藤サクラ、『百円の恋』と合わせての受賞)
  • 第18回上海国際映画祭 アジアン・ニュータレントアワード部門、最優秀監督賞(安藤桃子)優秀作品賞、優秀脚本賞(安藤桃子)

 

 

あらすじ

主人公の山岸サワ(安藤サクラ)は職業は有能なヘルパー。派遣先で事件に巻き込まれ職と住まいを失ってしまう。あてもなくさまよっているうちに問題行動をする老人に取り入って”おしかけヘルパー”をするようになる。

 

はじめはうとましく思っていた老人が、サワの素直で飾らない性格にいつの間にか心を開いていく物語。老人の日常と心の変化を淡々と描いていくのだが、そのなかにセクシャリティーの問題を抱える若者の生き辛さなども同時に描きだしている。

 

 

 

2つの視点

明日は我が身として

近い将来の自分にも起こり得るということについて、まず、映画に描かれている現実を受け入れることに対する抵抗がありました。

 

自分の意思に関わらず、体が弱り認知症を発症し、介護を受けなくては自活できなくなる可能性は十分にあることを受け入れなくてはなりませんでした。

 

そしてその次に、しもの世話までしてもらわなければならなくたったときに、自尊心を失わずにいられるのか心配になります。それとこれとは切り離して考えるべきであると頭では分かりますが、それだけの強い気持ちを持ち続けられるのかが心配になりました。


だからこそ、それまでにいま自分ができることをやることがとても大切であると感じました。ようするに、自尊心を持ち続ける生き方をすることが大切であるということです。


映画では、サワが老人に対してリスペクトしていることが見ているものの気持ちを暖かくさせてくれます。


うどん屋のシーンでサワがつぶやきます。

 

「死にそうなじいさん相手にしてるとさ、時々思うの。わたしの知らない歴史を生きてきた人が、おんなじ世界に生きているだなって。戦争とかあたし知らないし。今日生まれる子も明日死ぬじいさんもみんないっしょに生きてんだよ。お互いにちょっとだけ、目に見えない距離を歩み寄ってさ・・・こころで理解できることってあるんだね」

 

介護する側から

この映画は、介護する側の立場からも見ることができます。介護の大変さがわかります。本当は耐えられないような匂いがあったりもすると思いますが、さすがに映画ではそこまでは伝えられませんね。

 

先にも書きましたが、主人公の老人をリスペクトした対応に好感が持てます。

 

そうしてちゃんと一人の人間として相手をしてあげると、介護を受けた老人は元気が出てきます。

 

介護するときは一人で頑張らないで、周りにいる人に手伝ってもらうことも介護をする側だけでなく、受ける側にとっても楽なのだいうこともわかりました。

 

また、映画の中でよく登場する食事の場面。人間、食べものにはいつまでも関心があるので、行動を起こさせる原動力になるのだなあと思いました。あらためて食の大切さを感じます。

 

 

 

映画の出演者


この映画が、様々な賞を取ったことのひとつには、往年の名優や喜劇の大御所が体当たりで演技していることが大きいと思います。

 

これまで華やかな舞台で活躍してきた俳優が、年老いた姿をさらけ出すこと、そうした演出に応えることには勇気が必要だったと思います。そうした役者たちの勇気を讃えたいと思います。

 

もちろん主役の安藤サクラの演技は演技らしさを感じさせない自然さががあり、動きの中にどこかコミカルなところがあって、おしかけヘルパーというヘンテコな設定にも違和感を与えないところが素晴らしかったと思います。

 

彼女の演技が重たいテーマを明るくしています。もう一つの主演映画『100円の恋』も観ましたが、こちらも彼女の魅力がたっぷり味わえて、いつの間にか引き込まれてしまいました。

 

 

 

残照のように

 

ラストシーンで流れる寺尾紗穂の「残照」という曲が心にしみ入ります。


そもそもこの映画を見ようと思ったのは、寺尾紗穂が主題歌を歌っていたからなのです。


大林宣彦監督の「転校生-さよなら あなた-」で使われた劇中歌を作ったのが寺尾紗穂で、ラストに流れる自身の歌「さよならの歌」を聴いてファンになりました。


そんなことから、この『0.5ミリ』という映画を知りました。

 

そして、こちらの映画でも彼女の歌声が心にしみます。

 

最後は残照のように静かに輝いて惜しまれながら逝きたいと思いました。

 

www.youtube.com

 

 

最後に

 

最後までお読みいただきありがとうございます。


いま、介護に悩んでいる方、年老いた将来に不安を感じている方にぜひ見ていただきた映画です。

 

では、このへんで

 

 

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