Hakuto-日記

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囚人のジレンマと社会的ジレンマ 〜エントツ女王の町の運命は?

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劇団、電動夏子安置システムの『エントツ女王と煙たい町』を先日観てきてその感想を書きました。

 

その後、「それって囚人のジレンマみたいだなあ」と思い、関係する本をみてみたら、あれは社会的ジレンマの話なのであったと思い至りました。

 

では、囚人のジレンマ、社会的ジレンマとはどういうものでしょうか。

 

今回は、このことについて解説します。

 

【目次】

 

 

エントツ女王と煙たい町

 

先日書いた観劇の感想はこちらです。

challe.info

もう一度、あらすじを引用します。

貧しかった町に

工業団地を誘致して

発展させた町長は

8期にわたり君臨し

いつしか揶揄を込められて

「エントツ女王」と呼ばれます

 

女王が次に望むのは

神様が棲むあの山を

世界遺産にしてみたい

だけどもかつて自らが

誘致してきた工場の

白い煙が邪魔をします


景観すてて産業か

産業すてて景観か

エントツ女王の難題に
情熱と知恵で向き合わず

エゴだけ振りまく人たちの

群像喜劇でございます

 

少し整理すると、町の発展のために工場を誘致した結果、人々はその工場に勤めたり工場の出す産業廃棄物の処理など、工場によって生活の糧を得る人たちがいます。

 

けれど時代は変わり、工場も経営が難しくなっているところが現れ、このままでは町は衰退していく一方です。

 

そこで、神様が棲むといわれる山を世界遺産にすれば、観光で町が潤うと考えます。

 

当然、町としてそれを目指すには議会での承認が必要です。ところがその議員にも生活があり、工場による恩恵を受けています。

 

つまり、個人としての利益を追求すれば反対。町の発展を考えれば賛成した方が良いという状況です。

 

 

囚人のジレンマ

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この町の状況を考える前に少し考えていただきたいことがあります。

 

あなたは「囚人のジレンマ」というものをご存知でしょうか。聞いたことはあるけど・・・ といった感じでしょうか。

 

こんな話です。

 

ある町の刑事が、重要な事件に関係していると思われる容疑者を二人、別件で逮捕しました。刑事はその重要な事件の犯人がその二人であることを確信していますが、自白が得られていません。

 

そこで、二人が共謀しないように別な部屋で取り調べを行い、こう話を持ちかけました。

 

「もし、お前が自白し相手が黙秘したら1年の刑、その代わり相手は15年だ。相手も自白したら二人とも10年の刑だ。もし、お前が黙秘し相手が自白したらお前は15年の刑、相手は1年だ。このままお互い黙っていても二人とも3年の刑だぞ」

 

これを図にすると次のようになります。

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囚人Aが黙秘(相手に協力)すれば3年か15年。自白(相手に非協力)したら1年か10年。これは囚人Bも同様。

 

もし、囚人Aが黙秘(相手に協力)したのに囚人Bが自白(こちらに非協力)すると、囚人Aは15年の刑になってしまいます。

 

逆に、囚人Aが自白(相手に非協力)すれば刑が1年で済む可能性があり、黙秘(相手に協力)しても最短は3年。

 

その結果は、囚人Aは15年の刑を避けるため自白することを選びます。当然囚人Bも同じことを考えるため、お互いに自白することになりどちらも10年の刑となる、ということが知られています。

 

当然二人とも黙秘していることが二人にとって最大の利益があることになります。お互いにコミュニケーションが取れる状況にあり、さらに二人に信頼関係があるなら当然そうしていたでしょう。

 

 

 

社会的ジレンマ 

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こうした囚人のジレンマは二人の関係において生じますが、複数の人が集まった場合はどうでしょうか。

 

たとえば、ある町に羊を飼っている人が住んでいます。羊をたくさん飼えば儲けが大きくなります。けれど、羊飼いは大勢おり、一人ひとりがたくさんの羊を飼うと牧草がなくなってしまいます。

 

これが、「社会的ジレンマ」です。

 

 

 

さて、エントツ女王の町は、衰退する工場に見切りをつけて観光で生きる方が町のためになると考えられます。

 

けれど、工場と共に生活している人たちは反対します。個人の利益を失ってしまうからです。

 

さて、一体どうしたら良いでしょうか。

 

これを解決する方法は2つ考えられます。

 

一つは、信頼関係によるコミュニケーションの力です。この信頼関係とは、自分一人が協力しているのではなく、他のみんなも同じようにそれを望んでいるということを信じられるということです。

 

羊の例で言えば、抜け駆けをして羊を増やさないことを全員が守ること、そしてそれがお互いに信じられることですね。

 

もう一つは、制度による解決です。たとえば裁判で解決を図るということです。水産資源の漁獲量の制限もこれにあたりますね。

 

こうした「社会的ジレンマ」って、この世の中にたくさんありますね。人々の知恵で良い解決を望みたいです。

 

エントツ女王の町もしっかり議論を重ね、どうすることが一番町のためになるかを考えることがよさそうです。

 

 

(参考文献:『よくわかる社会心理学』山田和成・北村英哉・結城雅樹 編著、ミネルヴァ書房)

 

 

 

 

まとめ

 

最後までお読みいただきありがとうございます。

 

本当にこの社会というのは「社会的ジレンマ」だらけですね。人は放っておけば自分自身や家族の利益を優先する。それが動物としての本能なんですね。

 

小さなことはそれで問題ないけれど、今回の新型コロナウイルスのような、感染予防と私たちの生活の経済問題とは両立しないことばかりで大変な問題です。

 

こうした問題には制度による解決がたのみになると思います。おそらく関係者はそうとうご苦労されていることと思います。その苦労が無駄にならないように願うだけです。

 

ちなみに、このようなジレンマを解決できるのは人間だけが持っている能力です。お互いが信頼できる世の中が社会的ジレンマを解決に導いてくれると信じていたいです。とくに中国政府にはこうした考えを持って欲しいなあと思います。

 

では、このへんで

 

 

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