ソロキャンプがブームになっていますね。
ところが最近クマ出没のニュースを良く聞きます。キャンパーが被害にあったというニュースもありました。
では、いったいどのくらい出没しているのでしょうか。
また、どの県に多く現れているのでしょうか。
もう冬眠しているから安心? いや、ちょっと待って。
今回はキャンプだけでなく、登山にも影響のある熊の実態について迫りたいと思います。
【目次】
熊の出没情報
環境省のホームページに「熊類の出没情報について(速報値)」が出ていてPDFで見ることができます。
この表には今年(R2年)の9月までの情報が載っています。この表の1年は4月から3月までなので、4月から9月までの出没情報を件数の多い順に並べ替え、合計が200件以上の中からさらに9月と12月の件数を抜き出してみました。なお、私の住んでいる神奈川県もそこに加えてみました。
この表の注意書きよれば、熊情報を公表してない北海道と、熊が生息していない九州と沖縄は除外していること。
そして出没数は、都道府県ごとにそれぞれ違った方法により取りまとめているとのことです。
情報の集め方が同じではないので、あまり順位をつけても意味はないのかもしれませんが、とりあえず、熊が良く出没するのはどの辺りなのかがわかります。
都道府県名に色がついているのは、東北と中部地方をグレーっぽい緑と薄い緑色で表しています。岩手と長野はダントツです。
明らかにこの地方に熊の出没情報の数が多いです。それだけ多くの熊が生息しているのだと思われます。
西の方も島根、京都、広島、兵庫、山口が多いですね。関東では群馬です。
12月はもう冬眠しているはずなのに、数は少ないとはいえ、新潟(41)、京都(39)、福井(30)、岐阜(28)などではまだ多くの出没情報があります(R1年データ)。冬眠しない熊がいるか、冬眠を一時中断したものと思われます。
最新データの今年9月では、前年と比べて増えているのは、新潟(126)、長野(102)、石川(71)、福井(58)、岩手(53)などです。今年はどんぐりが不作なのでしょうか。
昨年と一昨年の12月では、新潟(34)、岐阜(26)、福井(23)、富山(23)と増えていました。今年も食べ物を探して里に降りてくるのでしょうか。
ちなみに私の住んでいる神奈川は、昨年に多くの目撃情報があったようです。
なお、上記の表にはありませんが、5月から11月までが特に多く出没していました。熊の活動時期と重なっています。
また、熊の出没情報が過去3年0件なのは、茨城、千葉、そして四国の4県です。九州では絶滅したと考えられ、四国も絶滅寸前とのことです。
(注)動物は以前よりカタカナで表記されることとされていましたが、「熊」が常用漢字になったことで漢字も使われるようになったようです。
クマによる被害
ツキノワグマを研究している東京農工大学大学院准教授の小池伸介氏によれば、山奥に住んでいるクマが人里やキャンプ場に現れるのは、食べものや生ゴミを放置した人間に原因があるというです。
また、クマは1年の8割くらいのエネルギーを秋に蓄えるので、この時期にはブナやミズナラの実などのドングリを食べまくります。ところが、不作だと別の食べものを求めて出てくる可能性も高くなるということです。
クマによる被害はどのような場所で起こるのかをみると、
バーベキュをしているときの河原、キャンプ場、農作業中、登山道、キノコ狩り、道路を歩いている時、自転車に乗っている時など様々でした。
米田一彦氏(NPO法人『日本ツキノワグマ研究所』理事長)によれば、特に重要なのは「1人は危険なので、2人以上で行く」ということだそうです。
1人が襲われても、もう1人が助けを呼びに行けるので、死亡事故に至る可能性が低くなるということです。
つまり、ソロキャンプはとても危険ということです。弱りましたね。ひとりで出かける際は、熊の出没情報を確認し、ちゃんと行き先を告げて行った方が良さそうです。
そして、生ゴミなどの食べ物を放置するのはクマを呼んでいるようなもの。特に注意しましょう。
クマの生態
そもそも日本の森に住んでいる最大の野生動物はクマなのですが、その生態はあまり知られていません。
環境省のホームページから少し拾ってみます。
(1)ツキノワグマの特徴
- 本州以南に分布している。
- 大きさ:体長 110~150cm、(オス)体重 70~150kg、(メス)50〜100kg
- 感覚器官:耳と鼻は非常に優れているが目はあまりよくない。
- 食性:植物中心。ハチミツも好物。動物食の割合は高くて年間をならして 10%程度。魚や昆虫、動物の死体なども食べるほかに、罠にかかったイノシシを食べることもある。
- オスの行動範囲;通常は 30 平方キロから 50 平方キロ程度、まれに 100 平方キロをこえる。広い行動圏をもつ個体もいる。
- メスの行動範囲;通常は 10 平方キロから 30 平方キロ程度、まれに 50 平方キロ程度
- 冬眠:冬季(12 月~4 月ごろ)は樹洞、土穴などで越冬。雪解け頃から活動する。
- 繁殖(交尾):初夏。冬眠中 2 月ごろに 1 頭あるいは 2 頭の子を出産する。子グマは生後1年半ほど母グマと行動を共にする。
- 活動:木登り、穴掘りなどのための力が強く、爪も発達している。人より速く走る。水泳も得意。明け方、夕方が活発といわれるが、日中も活動している。
(2)ヒグマの特徴
- 北海道に分布している。
- 大きさ:体長 200~230cm、(オス)体重 150~300kg(メス)100〜200kg
- 感覚器官:ツキノワグマと同じく耳と鼻が非常に優れている。目はあまり良くない。
- 食性:ツキノワグマと同じく植物中心。知床半島などでは、秋にサケ類を多く捕食するヒグマもいる。エゾシカ生息数の増加に伴い、北海道東部地域ではエゾシカの採食割合が高まっている。
- オスの行動範囲:通常は 50 平方キロから 100 平方キロほど。知床半島では 400 平方キロをこえる移動が記録されている。
- メスの行動範囲;知床半島での調査では 10 頭の平均で約 15 平方キロ。
- 冬眠:ツキノワグマと同様、冬季に冬眠する。冬眠には土穴をよく使う。
- 繁殖:ツキノワグマと同様。子グマは生後1年半〜2年半ほど母グマと行動を共にする。
- 活動:ツキノワグマと同様。
クマと出会わないために
環境省の「クマと共存するために」から、クマと出会わないためにどうすれば良いのかを以下に示します。
- 自分の存在をクマ鈴やラジオなどで知らせる。
- 見通しの悪い場所や、沢沿いなど音が聞き取りにくいところでは、声を出したり手を叩いて存在を知らせる。
- 熊の生態や行動をよく理解する。
- 熊の新しい痕跡(糞、食痕、爪痕など)を見つけたら十分気をつける。
- 春と秋は特に注意する。
そして、もし出会ってしまったら
- 距離が離れて(熊が気づいていない)いたら静かにゆっくりと立ち去る。
- 距離が近い場合(50m程度)、両腕を振りこちらの存在を知らせ、熊から目を離さずにゆっくりと後ろに下がる。万一の突進に備え、障害物があれば、熊との間にくるようにする。
- もっと距離が近い場合(20m程度)、熊がパニックになり、突発的な攻撃をする可能性がある。刺激しないように、熊から目を離さずにゆっくりと静かに後ろに下がる。
- 熊が突進してきたら、威嚇の場合は途中で止まり、後退することが多い。慌てずに熊との間に障害物がくるようにゆっくりと後ろに下がる。
- 熊が攻撃してきたら、熊スプレーを目や鼻をめがけて噴射する。熊スプレーがないときは、防御姿勢をとる。
上記の小池伸介氏および米田一彦氏によれば、そのほかに以下のことに気をつけるようにいっています。
- 1人は危険。2人以上で喋りながら歩くこと
- クマスプレーは必ず所持していつでも使えるように
- 台風などの悪天候予報日の2~3日前は危険
- できるだけ左右に動かずまっすぐ下がって逃げる
- 近くに木があれば後ろに身を潜めて動かない
- 襲われそうになったらうずくまって首を隠す
- テントの外やBBQ後に生ゴミを放置しない
- ブナやミズナラが凶作の地域にはなるべく行かない
クマ撃退スプレーはどこで買えるのか
クマ撃退スプレーとは唐辛子の成分であるカプサイシンを発射するスプレーとのこと。
クマの目や鼻、のど粘膜を刺激することで撃退効果を期待するものでクマ撃退用品として実績と効果が認められているそうです。
有効射程距離は一般に短い(5m 程度)。出会い頭の遭遇といった条件では対応困難。過信は禁物。
風向きによっては一時的ですが発射した本人への影響もあるので注意が必要とのことです。
なお、航空機への持ち込みはできないそうです。
環境省のホームページで紹介されている製品はこちらです。アマゾン等でも買えるようです。
クマ避けスプレー、熊撃退スプレー、クマ、ヒグマ、ツキノワグマ、カウンターアソールト
まとめ
熊の行動範囲が広いことは、植物にとってはよいことで、体の大きい熊はたくさんの種子を食べ、時間が経ってから排泄されることにより、種子は遠くまで運ばれます。
不作の年は熊がさらに遠くまで移動するため、植物の種子も同様に遠くまで運ばれて植生が広がることになり、植物の生活範囲を広げることになります。これが種の保存や森を育てることになっています。
だから、クマについての正しい知識を持ち、不運なクマとの遭遇を減らすことは被害を減らすことにもつながり、森を守ることにもなります。
クマの住処にこちらが入っていることを忘れずに、安全なキャンプや登山を心がけたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
では、このへんで
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