エスビットと片岡義男のエッセイ
エスビットを知ったのは、20代の頃。それは片岡義男のエッセイか何かだったと思う。そこには生活の中の自由が描かれていた。車で走っていて気が向いた時に、ポケットに収まる小さなストーブでシェラカップ一杯の湯を沸かし、コーヒーを入れる。青く燃える固形燃料が揺らめいて豊かな時間が過ぎていく。そんなふうに記憶に刻まれた。
欲しい。早速探しにいった。そして、今も手元にあるパッケージの箱には当時の値札が貼られていて、かろうじて文字が読める。きっかり1000円。当時はまだ消費税が導入される前だったので、支払ったのも1000円だったはずである。たぶん神保町の好日山荘で見つけたのだと思う。
昔は山に行っていた。主に丹沢の低山をよく歩いた。シェラカップもその頃買った。本物のシェラカップはあまり売っていなかったのか、あるいは高かったのか、その時はモリタ製のシェラカップを買った。そのカップとエスビットはいつもセットで持ち歩いていた。
その当時、エスビットの固形燃料は手に入りにくく、セットになっている固形燃料がなくなると、別なメーカーのものを買った。その後、EPIのガスコンロを使うようになり、エスビットの出番は減った。だから、いまもそのときの固形燃料が残っている。
あるとき、山に行ってお湯を沸かそうとしてエスビットを取り出すと、固形燃料を忘れていることに気がついた。このとき、辺りに落ちている小枝を拾い集めてエスピットで湯を沸かしたことを思い出す。
だからエスビットは大事な宝物である。エスビットは自由とこころの豊かさを教えてくれ、その象徴として今もある。
自転車日本一周をするとき、昔のアウトドアグッズを整理していて再びエスビットと対面した。取り出してみるといい感じで使い古されている。再びエスビットとともに丹沢の低山を歩きたいと思う。
エスビットの大きさをを測ってみた。100mmX75mmX20mm だった。そしてMade in W. Germany と刻印されている。レアものなのじゃないか。
ともかく何にも増して今もアウトドアショップで売っていることが嬉しい。
ところで、エスビットのことを書いた片岡義男のエッセイが、ひょっとしてネットに乗っていないかと思って調べてみると、これがどんぴしゃり。見つけて嬉しくなる。読み返してみると、ほぼ記憶どおり。ただ、コーヒーを淹れることしか頭になかったところがちょっと違った。片岡氏が書いたのはどちらかというと紅茶の方で、コーヒーはおまけみたいな感じだった。(注)エッセイはこの後非公開になりました。
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片岡義男と南佳孝
片岡義男といえば当時とても人気のあった作家だ。『スローなブギにしてくれ』は映画にもなり、南佳孝が歌う同名の主題歌もヒットした。だから、片岡義男と南佳孝の『スローなブギにしてくれ』はもう同じと言っていいくらい結びついている。
1939年東京生まれ。小説家、エッセイスト、写真家、翻訳家、評論家……最近では詩人活動も。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。近著に『ジャックはここで飲んでいる』(文藝春秋)、『万年筆インク紙』(晶文社)、『珈琲が呼ぶ』(光文社)、『くわえ煙草とカレーライス』(河出書房新社)、『窓の外を見てください』(講談社)などがある。
映画の方は、残念ながら当時は観ていなかったので、最近、アマゾンプライムで観てみた。
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映画についてはウキペディアから引用すると
1981年3月7日公開。東映と角川春樹事務所による製作で、東映洋画が配給した。浅野温子の初主演作で、その小悪魔的な演技が話題となった。脚本は「スローなブギにしてくれ」をベースに、「ひどい雨が降ってきた」「俺を起こして、さよならと言った」の2作品(いずれも片岡の小説)を織り交ぜ、さらにオリジナルエピソードや後日譚を付け加えたものとなっている。出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ここで言っているように、ともかく浅野温子の演技が小悪魔的。そして役柄と猫の演技が実にマッチしている。じゃれついたり爪を立てたり。そうして男どもが振り回されるところが猫そのもの。
実は小説も読んでいなくて、当時読んだのは『彼のオートバイ、彼女の島』。こちらも映画となり、1986年に公開された。監督は大林宣彦、主演は原田貴和子(原田知世の姉)と竹内力。こちらの映画は観に行ったがストーリーは忘れてしまった。
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スローなブギにしてくれ | 片岡義男 | 小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
彼のオートバイ、彼女の島 | 片岡義男 | 小説・文芸 | Kindleストア | Amazon
最後に
最後までお読みいただきありがとうございます。
ひとには何かしら思い出に残る物があります。
その物が扉を開くと思い出があふれ出します。
あなたにもそんな大切なものがありますか。
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