このトラブル編、前回は自転車トラブルについてでした。
第2回目は、事故を未然に防ぐために気をつけることをお伝えします。
さらに、もしも怪我をしたときにどう対処したら良いかについてもまとめています。
【目次】
事故を避けるために
前回お話ししてきたように、自転車のトラブル対策をとることで、自転車が原因による事故はかなり防ぐことができると思います。
ですから、メカが苦手な方も最低限、ネジ緩みの点検や消耗品の減り具合について、時々チェックして対策をとるようにしておきましょう。
そして万一事故にあったときのためにヘルメットは必ずかぶりましょう。
旅をしていて感じたのは、日本人の特に若い人がヘルメットを被っていないことが多いことです。出会った外国人はみなヘルメットを被っていました。
スピードが出ていなくても、頭をぶつければ命に関わります。
車による事故
では、どんな事故が起こり得るでしょうか。
まず、車の事故から考えてみましょう。
後ろから追突される。交差点で左折車に巻き込まれる。幅寄せされて驚いて転倒、ガードレールや縁石にぶつかって転倒、走り去るトラックに吸い込まれて転倒。そして、運が悪ければ後続車に轢かれる。車に轢かれるのは御免ですね。
さて、自転車は軽車両に属します。原則車道の左側を走ることになっています(本当は自転車道を走ることに定められていますが、自転車道なんてほとんどない)。
「1970年(昭和45年)道交法において、本来自転車は、自転車道を走ることになっており、自転車道がない場合には車道の左側を走ることとされている。また、自転車が条件付きで歩道を走って良いこととされたのもこのときである。
そもそも自転車が車道を走るという法律は、大正時代の自動車が走っていない時代に作られたもので、自動車がたくさん走るようになって、自転車道が整備されないまま、自転車は車道の左端に追いやられた。」
※上記のカギ括弧の部分は次のサイトの記事に基づき、筆者がまとめたものです。
自転車の車道走行推進政策の欠陥(1)道路交通法ルールの成立背景 : サイクルプラス「あしたのプラットホーム」
道路交通法の欠陥:「車両である自転車は車道走行が原則」(2)原則の設定経緯と妥当性 : サイクルプラス「あしたのプラットホーム」
道路交通法の欠陥:「車両である自転車は車道走行が原則」(3)自転車道の規定と総括 : サイクルプラス「あしたのプラットホーム」
けれど、現在の日本の道路は基本的に車のための道路になっています。歩道はおまけのようなもので、用水路の蓋でできたところとか、とにかくでこぼこだらけのところがほとんどです(歩道はパンクのリスクも高いです)。
さらに自転車にとっては最悪で、車道を走っても車にとって邪魔者で、歩道を走っても歩行者にとって邪魔者です。
道路の左端を走っていたら左に分かれて、自動車専用道路に入ってしまうこともあり、気をつけて進まないと車に巻き込まれてしまいます。
同じように危ないのは、交差点の左折レーンから直進する時です。自転車は直進する場合でも左折レーンがあればその左端から直進することになっています。
けれど、車だけに乗っている人はそんなことは知りません。当然左折するものと思っています。
だから、右後方に車がいないかを確認して直進しないと危険です。
右折する場合は二段階で右折する必要があります。停止する場合は後方の車に気をつけましょう。
特に気をつけたいのが、直進道路から右に入るT字路です。信号機がないところも多く横断歩道がないところは歩道もないことが多いので、停止するときは路面がデコボコしていない場所に止めるなど気をつける必要があります。
もし、トラックなどが頻繁に通るなど、その場に止まっているのが危険だと判断したら、先へ進んで安全なところで横断し、戻ってくるのが賢明だと思います。
また、Y字路で右側に進もうとするときが厄介です。交通量が少なければそのまま右側のレーンに移ればいいのですが、車がビュンビュン走っているところで右側のレーンに行くのはかなり危険です。
この場合もどれが(道交法上の)正解なのかはよくわかりません。
私だけでなくほとんどの人が分からないようです。
しかし、もし分かっていてもそれを守る人がいなければ意味がありません。
だからそんなときは、横断歩道があれば迷わずそこを渡って右側のレーンに行きます。横断歩道もないときは、(ぶつぶつ文句を言いながら)そのまま左側のレーンを進み、右側のレーンに入れる道を探します。とにかく、安全第一を心がけます。
そのほか、車専用の交差点や自転車専用の横断帯があったりして非常にわかりづらいです。横断歩道も押しボタン式とそうでないところが分かりづらく、ボタンを押さずにずっと待っていたことが何度もありました。もっと分かりやすくしてほしいものです。
最近、自転車ナビマークという青い矢印の書いてある道が増えてきたと思います。あれがあるとなんとなく安心します。
けれど、法令によって作られているのではなく、単に自転車が車道の左端を走るものだということを周知させるためのものだというのです。
法令により設置されているのは自転車専用通行帯だけのようです。けれど、いくらこちらが道交法にしたがってこの通行帯を走っていても、平気で車やバイクが侵入してきたりします。
つまり、怪我をしたらバカバカしいので、自分の身は自分で守るしか方法はありません。
トンネルの通過
おそらく誰でもトンネルを通過するのは怖いと感じると思います。
広い歩道があればそちらを行くのが賢明でしょう。
けれど、そのような所はわずかです。ずっと広い歩道があってもトンネルに来たら急に歩道がなくなっている、そんな所も多いです。
トンネル通過で気をつけることは、まず、テールライトや反射板、反射ベストなどで車の運転者に気づいてもらうことです。
次に、走り方も考える必要があります。
左に寄りすぎてはダメです。それは、左の縁石などにぶつかる恐れがあることや砂利などで滑りやすい場合があることです。大きな石が転がっていることもあります。それともう一つ、逃げ場がなくなるということです。
これはトンネルの中だけではないのですが、車は、対向車がいる場合には自転車のかなり近くを走っていきます。そんなとき、左に寄れないと危険です。左ギリギリを走ると、道幅が狭くても後ろの車は横をすり抜けていきます。そのあとバランスを崩すことが考えられます。
だから、狭い道路では後ろの車に対向車がいなくなるのを待ってもらうことも必要です。対向車がいなければ、ほとんどの車は自転車からかなり離れて追い越してくれます。
つまり、トンネル内では対向車が来るかどうかに気をつけていることが大切です。このことは、トンネル以外でも同様なので、片側1車線の道路では気をつけるべきことです。
私が一番怖かったトンネルは、北陸の親不知です。6%の上りとカーブが連続しています。前日に泊まった宿のオーナーに聞くと、そこを「車で走っていて急に自転車が現れて驚いた」と言ったお客さんがいたそうです。
後ろから追突されないために、反射板等の早く気づいてもらえる工夫と左に寄りすぎない位置取りを考えて走った方が良さそうですね。
車によらない事故
次に、車に関わらない事故について考えて見ましょう。
はじめに歩行者との接触事故。これは、とくに人の多い場所では気をつけましょう。どんな場合でも歩行者優先です。
ベルを鳴らして人をどかすことはやめましょう。歩道で歩行者を追い越す時は、「自転車通りまーす」などと声をかけましょう。そうすると、「日本一周がんばって」などと声をかけてくれる方もいます。
歩道ではスピードを出さず、街中では徐行しましょう(というか荷物があるとスピードを出すのは難しい)。
続いて単独事故です。
考えられる事故は、サイドに取り付けたバックがガードレールや車止めなどと接触して転倒。これは私が体験しました。秋田で車止めにバックが接触し、自転車から投げ出されて左肘を骨折していまいました。
長崎では坂道を登るのにフラフラして左のガードレールに接触。そのまま右側の車道の真ん中に倒れてしまいました。このときは後ろの車が避けてくれたので事故にはなりませんでした。
雨水を流れやすくするために、道路の両端にコンクリートの板を埋め込んだところがあり、アスファルトとの境が溝になっているところ、道路自体が縦に溝が切られているところもありました。
縦溝に車輪がハマれば転倒しかねません。私もヒヤッとしたことが何度かありました。踏切でも斜め横断の場合は転倒の恐れがあります。
このほか、ボーッとしていて道を外れて道路下に落っこちる。これは特に北海道では気をつけましょう。北海道の道はたいてい1メートルくらい高くなっています。幸い私は落ちませんでしたが、落ちそうななったことがあります。おそらく落ちたら這い上がるのが大変でしょう。怪我でもしたらもっと大変です。側溝はもっと怖いですね。
疲れてくると頭がボーッとしたりして注意力が散漫になります。その時が危険です。私の経験では、平坦な直進路が特に危険だと思います。
そういえば、広い歩道があるトンネルを走っていた時に、歩道から非常駐車帯に落ちたことがありました。直前で気付いたので転倒はしませんでしたが、びっくりしました。油断していました。
このほか、風による転倒も考えられます。荷物で重い分、どっしりとしてはいるのですが、風に当たる面積も大きいので、倒れなくとも進む方向がずれてしまうことがあります。
左が崖ということもあります。もちろん右に行けば車と接触する恐れがあります。
北海道の根室半島では風が強すぎて自転車に乗ることを諦め、十数キロも歩いたことがあります。
自転車保険に加入しよう
以上の事故はいくら気をつけていても起こる場合があります。だから、自転車保険などの傷害保険には必ず入っておきましょう。
私が加入した自転車保険は、自分が怪我をした場合に払われる入院・通院および治療費用等にかかる「傷害補償」、そして他人を怪我させた場合の「個人損害賠償責任補償」とが組み合わされているものでした。たいていは同じような仕組みのはずです。
自転車での事故については、次の交通事故弁護士相談広場に詳しいです。
ここで簡単にまとめると、
1 事故が起きた時は、必ず警察へ人身事故として届け出る
2 その場での示談は避ける
3 痛みがなくても病院に行く
以上のことを守ることだそうです。
私の起こした単独事故は、警察には届けませんでしたが、すぐに整骨院にかかったので記録が残りました。治療費はほぼ保険で賄うことができました。
旅に出る時は、加入した保険が分かるものをコピーして持って行きましょう。
もちろん、健康保険証は必ず持っていきましょう。
怪我をしたときに
怪我をしようと思って怪我をする人はいません。
それは突然やってきます。
そんなとき、どう対処したらよいのでしょうか。
当然、落ち着いて行動すべきです。けれど、事故直後はアドレナリンが出て興奮状態になっています。
それでも、ある程度の知識があれば、割と冷静に行動することができると思います。
重傷の時
意識がなければ他の人のお世話になるしかありません。
意識があって、動けないようなときはすぐに救急車を呼んだ方がいいでしょう。
打撲、骨折、擦過傷
これらが転倒した場合に起こりやすい怪我だと思います。
これらの怪我をした場合は、病院に行った方が良いでしょう。
自分で転倒した場合では、病院に行くにもどうやって行くかを考えなければなりません。
その間に、まず救急処置を行いましょう。
救急処置
打撲・骨折については、「RICE」という処置を行うのだそうです。
RはRESTで安静に(患部を固定)すること。(気持ちを鎮めることも大切だと思います。冷静になって次の行動を考えましょう)
IはICENGで患部を冷やすこと。
CはCOMPRESSIONで患部を圧迫すること。
EはELEVATIONで患部を高くすること。
擦過傷については、患部を水で洗って清潔にすることが大切だそうです。
以上については、こちらの記事を参照しました。
転倒しないために
車に巻き込まれるなど他からの要因で起こる事故でなく、自分で転倒するというのは、注意力が散漫になっているとか、状況を軽くみていることが原因の場合が多いと思います。
私の場合も「疲れた」「お尻が痛い」「信号が変わりそうだ」「早く休憩したい」などと考えて注意力が散漫になっていたこと。そして車止めの間をすり抜けられると状況を軽くみたこと、これらが重なって転倒し骨折してしまったわけです。
逆に言えば、精神的に落ち着いた状態であればこうした判断ミスを避けられた可能性があります。
したがって、睡眠時間などの体調管理には気を使うべきです。そして、注意力が散漫になっているときに、自身でそのことに気づいて、慎重な行動をとるようにすればおそらく、転倒するかもしれないという危険予測ができて、事故はかなり防げると考えます。
転倒の仕方
そして、気をつけていたのだけれど「転倒」という時、多くの人は手を出してしまうと思います。けれどこれが手首の骨折の原因になるそうです。私のように肘を出すのもだめですね。
では、どうするのかといえば、できるだけ体を丸めてそのまま倒れるのだそうです。ハンドルから手を離さないほうが被害が小さくさるようです。
私も骨折後、旅を再開した時に芝のあるところで倒れる練習をしてみましたが、これが怖くてなかなかできませんでした。
少し傾斜のあるとろでやっと倒れ込むことができました。これは練習をしておかないととっさの時にやるのは難しいと思います。
なお、ビンディングを使用しておらず、足がすぐにペダルから外せる場合についてはどうしたらよいのでしょう。じつは私も分かりません。
けれど、スピードが出ていないときは、おそらく自然に足が出ていると思います。ただ、ハンドルからは手を離さない方が良いような気がします。
まとめ
これまでの話をまとめると、次のようになります。
1 道路交通法を理解することは大切。けれど自転車に関しては複雑なので、ほとんどの人は知らない前提で、自分の身を守ることを心がける。
2 一般道路でも、トンネル内でも左に寄りすぎることは危険。
3 自転車保険に加入しコピーを持参する。
4 歩道は歩行者優先。
5 自損事故は気の緩みと状況の軽視から。
6 怪我をしたらRICE。傷は水で洗う。
7 転倒の練習をしよう。
以上です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
いかがだったでしょうか。
事故も転倒もない方がいいですよね。
けれど、そのときのことも考えておけば慌てずに行動できます。
なにより死んだらなんにもなりません。
事故のない旅を願っています。
次回は、病気など体に関するトラブルについてお話しします。
では、このへんで。